IAN-Gの無謀旅日記〜ドバイ編〜

期間 2016年12月29日〜2017年1月2日
(行ってきた人、文、写真=IAN-G 同行者=かみさん)

↑ドバイといえばやはり林立する高層ビル。あまりの大きさに遠近感が狂ってきます。


12月29日(木)
 今回は珍しく自宅から話は始まる。年末最後の仕事を終え、忘年会でいい気分になって家に帰って、荷造りの最終確認をしてからおもむろにPCの電源を入れる。21世紀も16年過ぎると飛行機のチェックインも自宅で行えてすっかり便利になったものだ。ついでにしばらく日本からいなくなるからとメールをチェックすると今回利用するエミレーツ航空からメールが来ていた。開いてみるとそこには非情なる通知が。

「飛行機が2時間遅れます」

ここまで堂々と豪快に遅れるなんて今まで10年ほど旅に出ているが初めてだ。慌ただしい準備の中で出発時間が遅れるのはある意味助かるが、そんな悠長なことは言っていられない。到着後すぐに今回泊まる宿にてスパトリートメントを予約しているので間に合わない以上これをキャンセルしないといけない。そうそうにホテルにキャンセルのお願いメールを送りなんとか受理されたことを確認して家を出る。
 昨年同様まるで夜逃げをするような時間の出発で、眠い目をこすりなから羽田に到着。出国は早々に済ませて深夜2時まで長い長い待ち時間を夜食を食べたり、両替をしたりして過ごす。搭乗時間が近くなってゲートに行ってみると機長以下クルーまで機内には入れないらしく手持ち無沙汰で過ごしている。周りの人たちの表情に疲れの限界が見えて来たギリギリのところでようやく搭乗開始。旧仕様のB777-300ではあるがディスプレイも大きいし不自由は特にない。離陸直前の緊張も疲れにかき消され一路西に向かって行った。
12月30日(金)
  飛行機でろくに寝られない自分ではあるが、エミレーツのエンターテイメントシステムの幅の広さに若干助けられた。速やかに眠りに入れるようにヒーリング音楽をYoutubeで流しながら寝ることを最近は取り入れているのだが。音楽プログラムの中にはこの手の音楽も結構入っていて、カミさんが持って来てくれた「蒸気のアイマスク」との相乗効果で結構眠ることができた。目がさえた合間はテレビプログラム。インド、パキスタンからの乗客が多いからかスポーツプログラムの中にしっかりと大好きなクリケット関係はあるし、モータースポーツ関係も入っていてこれを見ていれば飽きることもない。
 12時間近いフライトは比較的早く過ぎてくれてドバイ国際空港に着陸。ヨーロッパ、アラブ、アフリカ、アジアなど世界各地を結びつけるハブ空港として設計されているだけあって滑走路とエプロンの距離が近くすぐに降りられたが、その代わりイミグレーションは大混雑。通り抜けてラゲッジクレイムに行くと荷物はすでに出ていて、早々に回収し晴れてドバイに上陸。

↑乗り継ぎカウンターも広々、そして真っ赤。エミレーツのネットワークは半端ないですからねぇ。

 宿まではドバイメトロで向かう。頻繁に使うことを想定してチャージ式のノル・カードのシルバーを購入。レッドラインでフィナンシャルセンターまで向かい、今回の宿であるシャングリラ・ドバイに到着。チェックインはできたが部屋がまだ用意できていないということでしばしロビーにて待機。ついでにスパに赴き改めて予約をする。最終日の2日の朝イチで取ることができ、そのあと1時間ほどしたら部屋に入ることができた。今回は年末の花火を優雅に部屋でみようとブルジュ・ハリファが見える部屋を予約したのだ。通された部屋は38階。物の見事にブルジュ・ハリファが鎮座している。

↑宿の窓からの風景。この日は一日中ブルジュハリファに霧がかかりっぱなしでした。

 荷物を置いて、昼飯にする。イスラム教では安息日は金曜日。ドバイではそんな金曜日に遅めの食事を提供するフライデーブランチという独特の文化がある。宿のはす向かい、と言っても1キロほど歩かされるリッツカールトンホテルのダイニング"Cafe Belge"にてフライデーブランチをいただくことに。すでにネットで予約しておいたのでスムーズに席に通され着席。珍しいベルギー料理のレストランだが、ここのブランチの目玉はムール貝や生カキなど海産物がこれでもかと盛られたシーフードプラッター。これに前菜とメインとデザートが複数あって、ああ、これはこの中からどれかひとつ選ぶのだろうな、と確認のためにギャルソンのオニーサンに「前菜とメインはこの中から選ぶのですか?」と聞くと、

「いいえ、全部出てきますよ」

とアッサリ言われる。
 予想外の答えにうろたえたままシーフードプラッターが運ばれてくる。大好きな貝はカミさんに譲り、カミさんの食えないエビとカニを食い進む。ここまでは至って順調。続いて前菜が来る。マグロのタルタル、キッシュにワッフル、玉子料理にスモークサーモン、サラダ、さらに牛のタルタルステーキまで来てここまででも結構な量が来たのだがここまではなんとか攻略。

↑なんとも豪華なシーフードプラッターとこれでもまだ前菜の品々。キッシュなんて日本ならこれで一人前(以上)ですよね。


 しかしこれはあくまで前菜。そこからさらに来たメインはなんと7品、ムール貝1kg(しかもメインなので当然イモ付き)に牛リブの煮込み、スモークターキー、サーモングリルにスズキのソテー、バターナットスクワッシュのローストにさらにもう一度サラダ。どれも日本の単品一人前サイズ。とてもじゃないが二人で食べられる量ではない。アラブ世界の食事のおもてなしはとにかくだくさん出すことだそうだし、はなから全部食べるものではないと言われればそれまでだが、それにしても気前が良すぎる。前菜の時もギャルソンに「おかわりいるかい?」と聞かれるほど。さらにここまでの疲れも出て来て睡魔が襲ってくる。眠い、食事の量が多い、さらにまだくる、と苦行スイッチをオンにしなくては耐えきれない波状攻撃で、食べることに関しては貪欲な自分もさすがにグロッキー。どれも一口二口であきらめ、デザートはほぼカミさんに任せて幸せなのか苦行なのかわからない初めてのフライデーブランチは終了。


↑さらにこの量が怒涛のようにやってきます。デザートだけは普通サイズでしたがこれにさらにパンケーキがありました。
しかも「一枚にする?それとも二枚にする?」と聞いてくれます。


よくよく周りを見てみるとどのテーブルも皆適度に残している。出されたものは残してはいけないという教育を受けて来た日本人には中々厳しい文化だろうと思った。
 宿に戻ってシャワーを浴びてしばし休憩。1時間ほど水平に寝て、カミさんに消化を助けるツボを押してもらい再び出かける。目的地はデイラ。ドバイで外せないスーク巡りだ。グリーンラインのアル・ラス駅で降りてまず最初に遭遇したのはゴールドスーク。文化的に金で財産を持つイスラム圏やインド系の買い物客と我々を含む観光客でかなりの人出。夜になっても金を輝かせるために照明が多くここだけは特別明るい。ここまでの金に囲まれるのも中々できない経験だ。

↑輝きを求めるならゴールドスークは夜がおすすめ。客引きは多くなりますが、笑顔で無視しましょう。

 続いて着いたのはスパイススーク。ゴールドスークと比べては酷だが少々暗めの通りは金曜日で休みのところも多いのか開いていないところもちらほら。しかし、客引きがゴールドスークと比べ物にならないくらいうるさい。金はおいそれと買えないものだからそこまで強引な客引きもないのだがここはさすがに「ウザい」という言葉を使いたくなるほど。ややゲンナリして、まだまだ時間があるのでアブラ船に乗って対岸のテキスタイルスークに行く。このアブラが趣があって、開放的で中々楽しいのだ。今日イチの楽しい体験となった。

(左)スパイススークにはこういうのがたくさんあるのだと思っていましたが、意外と少なかったです。
(右)テキスタイルスーク。個人的にイスラムの男性が来ているあの白い服が気になっていましたがほぼオーダーメイドということであきらめました。


 テキスタイルスークではカミさんが刺繍入りのショールをお買い上げ。定価もない市場では交渉が楽しいが自分の買い物ではないのでここではアドバイスに止める。と三つのスークをはしごしてからブールドバイ地区を通り抜けメトロの駅に向かう。生来の人懐っこさに加えて観光客慣れしているデイラの人々に比べてブールドバイの人たちはどちらかといえば観光客には見向きもせずそれぞれ自分の人生を送っている。自分はこっちの方が好きだなぁ。 結局腹は全く減らず宿のバーにて軽いつまみとビールをいただき今日は終了。
12月31日(土)
 長旅&苦行の連続で昨日は疲れ切っていたからそれはもうよく眠れた。もっと寝ていたいところだが6時には起きて支度をする。今日はデザートサファリツアーに参加するのだ。
 7時にはお迎えが来て、白のランドローバーでいざ出発。朝もやの中車は快調に進み、実際はタイヤがパンクして少々足止めを食らったが幹線道路から側道に入り、さらに未舗装路に入ってデザートサファリのスタート。

↑今回参加したのは”Platinum Heritage”のツアー。ガイドはこう見えてポルトガル出身のTiagoさん。
 
今回はカミさんの希望で野生動物と触れ合うことのできるツアーで、まずはアラビアのベドウィンの伝統でもある鷹狩りを軽く体験。最初に手慣らしと同じ猛禽類のフクロウを手に乗せる。トレーナーのオネーサンが指示するとフクロウは手から手へとスーッと飛んで来る。腕にはずっしりと鳥の重みが伝わって来る。そして次はいよいよファルコンを手に乗せてみる。フクロウとは一味違うスピード感と止まっているときの爪の食い込み方が野生を感じさせてくれる。それでもむやみに人間をつつきまわしたりすることはしない。実に従順なのだ。

↑猛禽類をこんな間近で見たのは生まれて初めて。なんせ都会っ子ですから。

 鷹匠体験を終え、朝食を挟んで次はラクダに乗せてもらう。立ち上がって、歩き始めると意外なほどに背が高く、遠くも見渡せて気持ちがいい。ちょいとその辺をグルグル回っただけだが気分はすっかりベドウィンの民。

↑おとなしく待機するラクダたち。中東に来たという実感を一番感じさせてもらいました。

 さらにそのあとはドバイ首長の御料地である自然保護地区でアラビアオリックスとアラビアガゼルに遭遇。砂漠ドライブも十分に楽しんで午前中にツアーは終了。こういうオプショナルツアーなんて参加することはほぼなかったが、このツアーは大当たり。

↑アラビアオリックスの群れ。この自然保護地区に入れるツアーは今回参加した会社だけなんだそうですよ。

 午後はドバイモールへ。言わずと知れた世界最大のショッピングセンター。とにかく桁外れに広い。メトロの駅からモールまでこれでもかと歩かされるが、モールの中でも嫌というほど歩かされる。まずは腹ごしらえとレバノン料理屋で昼飯。屋外のテラス席からはブルジュハリファが青空によく映えた姿で見える。キッベナイエとラムケバブ、カミさんはラムとチキンのケバブ盛り合わせを注文。本来なら昨日のうちにアラビア料理を堪能したかったが、フライデーブランチにやられてしまい今日にずれ込んでしまった。どれもスパイスの香りが効いていて食欲が湧いて来る。ペロリと平らげいざモールの中を探検。主に回りたかった店はウェイトローズとエミレーツ航空のオフィシャルショップ。カミさんも道すがらのチョコレート屋やコーヒー屋を物色。紀伊国屋書店もあってこちらもいろいろ眺めたが、なにぶん洋書というものは体裁が立派なのが多く、荷物になるので目星をつけて、あとはAmazonにお願い。歩き疲れるし、人混みもすごいのでのんびり買い物は難しいが、物欲を刺激されるのはやはり心地いい。

(左)ドバイモール。ここはメトロの連絡通路の近くでまだまだ氷山の一角。
(右)ウェイトローズをはじめ外資系のスーパーではムスリムの人に配慮し、豚肉売り場は独立しているのです。


 満足してドバイモールを後にして次の目的地へ、とメトロの駅に戻ると新年の花火を見ようという人々で大混雑。歩けば20分近くかかるモールへと続く通路が人でみちみちになり、通行規制をしていて駅舎に入るだけでも大変なのに、メトロに乗るにはさらに大行列に並ばなければいけない。これではいつ乗れるかわからないので駅から離れて徒歩で宿に一旦帰ることにする。ある程度は覚悟していたが、まさかこれほどまでとは。
 普通なら電車一駅歩くなんて大したことないのだが、ここはドバイ。巨大な幹線道路が通りを分断していて横断歩道なんてもちろんない。それでも横断できそうなところを探しながら進むと、緊急時の避難場所としてなのか、本当に申し訳程度に歩道があったのでそれを伝い、少々危ない橋を渡りながらなんとか宿に戻ることができた。すでに他のメトロの駅も大混雑なのか逆にこれから歩いてドバイモールへと向かう人も多く、自分たちが向こう側から歩いてきたのを見て渡り方を聞いてくる人もたくさんいた。
 これ以降の移動はもうメトロでは無理と判断して、タクシーにて当初予定していたドバイマリーナへ向かう。パームジュメイラが近く、ここもきらびやかなイメージを期待していたが、普通の住居も多いからか、意外と暗い。

↑左の写真はドバイマリーナでもまだ明るいほう。ほとんどは右の写真くらい落ち着いています。

カミさんが希望していたウズベキスタン料理屋があるのがここだったのだが、残念ながら今日は予約のみ。もちろん事前に予約のリクエストをはしたのだが、ときすでに遅く予約できなかったので飛び込みで行ってみたのだがこれでは仕方がない。マリーナの賑やかな目抜き通りを飯屋を探しつつ歩き、昼間に続きアラビア料理を食べることにする。アラビア料理といえば肉料理と野菜の前菜というイメージだが、ここはシーフードも扱っているということで迷わずエビのティッカを。カミさんは白身魚のグリルを注文。若干サービスに難ありだったが、料理は美味しく量も申し分なかった。
 満足して宿に帰ろうとしたのだが、まずタクシーが捕まらない。ようやく捕まえてもメーターは使わないと言い出す始末。こういうのを取り締まる警察がご自慢のスーパーカーパトカーと一緒に記念撮影で忙しいので、仕方なく近くのホテルのドアマンにタクシーを呼んでもらおうとしたら「もう今日はタクシー捕まえるのは難しいですよ」とあっさり。しかし「ホテルタクシーがありますけど使いますか」というご提案。ドバイのホテルはゲストの急なリクエストにも対応できるようにホテルタクシーと呼ばれる自前のショーファーカーを持っているのだ。料金は固定でさっきの流しのタクシーが行って来たよりもはるかに高かったがもう背に腹はかえられない。お願いして宿まで行ってもらう。大通りに出てからは快調に飛ばしていたがまたしても大きな落とし穴。片側6車線と広すぎるドバイのシェイク・ザーイドロードでは横付けしてもらわないと着いたことにはならない。何しろ通りには横断歩道もなければ歩道橋もメトロの駅以外ないのだ。残念ながらドバイマリーナから宿に向かうと宿は進行方向反対側、Uターンして宿に近づくと交通規制のせいで大渋滞に。メインのレーンから横付けするための側道まで入るのにも一苦労で何度もぐるぐる回ってようやく宿まで帰り着いた。これはある意味メーター使わない方が良心的だったかも。普通のタクシーの運転手ならs**tやらf**kやら延々毒づくところだがさすがはホテルタクシーの運転手。不平ひとつ漏らさず自らの仕事を遂行してくれた。
 部屋に着いたらもう11時前。シャワーを浴びてさっぱりしてから窓に向かって椅子を用意して準備は完了。このためにわざわざブルジュ・ハリファが見える部屋を予約したのだ。闇の中からカウントダウンとともに徐々に花火が咲き始める。そして新年を迎えると一気に満開。ブルジュハリファだけでなくドバイクリークの方向で打ち上げられた花火も見ることができた。2年連続でラグジュアリーな新年を迎えてこれで2017年も元気に、楽しく過ごせそうだ。

↑裏からですがブルジュハリファの花火を部屋からパチリ。去年火事があったからか今年は少しおとなしめでした。

1月1日(日)
  ブルジュハリファの花火で華々しく幕を開けた2017年。昨日は慌ただしい朝だったが、今日は少しゆったりと。起きたのは6時半だが今日はしっかりと朝飯も食べることにする。ドバイの飯屋は朝からやっているところが多いが、外に出ると移動だけで時間がかかるので一番移動のない宿の部屋でルームサービスを頼んだ。朝食は今回は含まれていない料金だったので、夜部屋に戻ると朝食サービスの案内が入っていたのだ。メニューはコンチネンタルありフルブレックファーストありアラビアンスタイルありで至れり尽くせりである。今回はフルブレックファースト、さすがはイスラム教国でフルブレックファーストの命であるベーコンとソーセージは牛肉や七面鳥で代用している。しかもこれがなかなかいける。代用品とはとても思えない。食べている途中には部屋の窓から初日の出も見えて来てなんともめでたい朝となった。

↑38階の宿の部屋から見えた初日の出。いいことありますように。

 さて今日は遠出をする。向かったのはアル・グバイバのバスターミナル。ここから一路アブダビまで向かうのだ。チケットはノルカードがそのまま使えるのでチャージだけしてバスに向かうとすでにかなりの行列。それも男性だけの列と、カップルや家族連れ、女性だけの列の二つに分かれている。バスへの搭乗も先に女性と家族連れを先に前方に乗せてその後に男性客を乗せるという気の配りよう。

↑アル・グバイバのバスターミナル。係りのおっさんに「写真は撮るな!」と怒られてしまいました。

 それなりに待ったが、バスが出発し、幹線道路のシェイク・ザイードロードに出ると信号機もないから時速120キロでノンストップで進んでいく。きらびやかな高層ビルががそれほど高くないオフィスビルにとって変わられ、ドバイメトロの線路が途切れると周りには何もない一本道になり、そのまま2時間近く進むと再び建物が増えて来て、アブダビのバスターミナルに到着。
 そこからはタクシーに乗り込みヤス島に向かってもらう。アブダビGPが行われるヤスマリーナサーキットをぐるりと回りながらさらに進むと赤い大屋根が見えて来た。今回の目的地、フェラーリワールド・アブダビに到着した。

↑F1ファン、フェラーリファンの「夢の国」。ここではぜひ真っ赤な服装で存分に楽しみましょう。

 別にそこまでフェラーリひいきではないがF1を見始めて早25年以上。そのアイコンであるフェラーリのテーマパークとくればやはりこれはいくしかないのだ。入り口を過ぎれば後は赤一色の世界。いたるところにF1マシンとスポーツカーがディスプレイされている。まずこれだけでも雰囲気は満点。アトラクションも凝ったものが多く、一番人気はカートチャレンジ。これはすでに本日分の予約が終了してしまい乗れなかったが、次に楽しみにしていた実際に使われているシミュレータを使用したドライブゲームは早々に乗ることに成功。実際のF1と同じようなドライビングポジションと視界で運転できるのだが、これがアトラクションのくせに結構過酷なのだ。こんな環境であれだけの走りができる今のF1ドライバーのすごさを改めて痛感した。

↑F1マシンのシミュレーター。かなり豪快に動きます。それほどマシンにかかる力がすごいということですね。

 全体の雰囲気を楽しんでから昼飯。食事は当然イタリアン。フェラーリのホスピタリティブースの味を再現したり、マラネロのスタッフ御用達の店の味を再現したり、となかなかのこだわりよう。タリアテッレのボロネーゼを頼んだが、海外で食べたパスタの中でも上位にランクインするうまさ。
 食事の後は体験型アトラクションをはしご。イタリア各地を空を飛ぶように巡る"Viaggio in Italia"、ベッテルのドライビングを体感できる"Driving with Champion"、フェラーリのロードカーができるまでがわかる"Made in Maranello"タイヤ交換が実際に体験できる"Pit stop challenge"などなど、絶叫マシンは苦手でも存分に楽しめるとだけは言っておきたい。シルバーチケットで人気アトラクションにはプライオリティレーンにも並べて行列もスイスイ。

↑タイヤ交換チャレンジは手軽に挑戦できるアトラクション。これを3秒で行うピットクルーはやっぱりすごい。

 少々辛口な意見を言わせてもらうと、時代の流れだからしょうがないけれどスポンサーロゴをほぼ全部今の仕様にしてしまっているところはコアなF1ファンとしてはいただけない。あとこれも仕方のないことだがF1にせよスポーツカーにせよクラシックカーが少ないのもちょっとマイナス。これは博物館に任せろ、ということでしょうかね。フロントエンジン時代は無理としても126C2とかあったらよかったのに。現行ドライバーのベッテルとライコネンは別として歴代のドライバーも名前が出てくるのはチャンピオンを獲得した9人のみ(このうち一人はライコネンなので実質8人)。好きなフェラーリドライバー第1位がミケーレ・アルボレートの自分にとってはこれも少し寂しい。フェラーリドライバーはたくさん勝てなかったドライバーにこそ魅力があるというのに。

↑見つけましたよ。クラシック・フェラーリ。シャークノーズのティーポ156。1961年、フィル・ヒルのチャンピオンマシンです。

 グッズショップでチームシャツにモデルカーなど散々散財して夕方ごろにパークを後にしてタクシーでアブダビ市内へ。一番の目抜き通りにあるワールドトレードセンターの中にあるアラブ料理屋で今日の晩飯としゃれこむ。メインは当然ケバブとして今回の前菜はこれも中東では外せないファラフェル。これがカリサクフワで大当たり。メインの肉もスパイスが食欲を掻き立てあっという間に完食してしまった。ついでにこのモールの中を少し回るとなかなかいいいものが売っていて、カミさんはデーツシロップ、自分はサフランを見つけて購入。ドバイのスークと違って店員さんが適度に距離感を保ってくれていて買い物がしやすい。

↑タクシー移動ばっかりでアブダビ市内の写真はこれくらいしか撮れませんでした。

 外に出るとすっかり暗くなっていたのでバスターミナルに戻り一路ドバイへと帰る。整然と並んでいた朝のドバイに比べ実に野放図な並び方をしていて、かなりの人数が平気で割り込んで来たり列を分岐させたりする。それでもなんとかバスに乗り込み、動き出したら帰りも順調に進む。座席のリクライニングが壊れていて、倒れた状態で起き上がってくれないのでこれ幸いとそのまま眠ってドバイまで過ごせた。
 アル・グバイバに着いたのは10時。メトロに乗って帰るのだがブルジュマンの駅で乗り換えると、タイミングがギリギリになったところで女性専用車両に大量の男どもが我先に飛び込んでいった。どうやらこの国では夜になるとイスラム教の教義とかは意外とフランクに破られるらしい。なんとか無事に宿に帰り着き、バーで一杯やりながら日記を書く。今日も実に充実した1日を過ごした。
1月2日(月)
  最終日。帰りの飛行機は深夜の3時発なので今日も実質1日過ごすことができる。まずはその長丁場を乗り切るためには腹が減ってはいけない。今朝は宿の朝食ビュッフェでがっつり食べることにする。さすが中東にある香港系のホテル、品数がとても豊富だ。卵をその場でお好みで焼いてくれるのはもちろん、フムスやムタバルなどの中東のメッゼもあり、一緒に食べるチャパティはその場で焼きたてをくれ、玉子麺と米粉の麺から選べるヌードルバーまである。
 しっかり食べた後は着いた初日に予約し直したスパに臨む。去年の春に香港で初めて人にやってもらうマッサージを体験してみたが、今回待っていたのはその時のいかにも按摩師という感じのおっさんではなくスタイリッシュなセラピストのオネーサン。いい匂いのする部屋で花びらの浮かんだ水で足を洗ってもらうところから始まり、ベッドにうつ伏せになると本格的なマッサージ開始。全身くまなく揉みほぐしてもらう。香港の時のように骨がビキビキいう感じではなく優しく、でも力はちゃんと入っていて身体中からどんどん力が抜けていく。脳にダイレクトで響く感じのヒーリング音楽も相まって身体から意識が離れていく感じになる。あのマッサージ用の顔の部分が穴の空いたベッドいうのが実は苦手なのだが、そこにいることすらも忘れさせてくれる気持ち良さ。
 最後にフェイスマッサージもしてもらい1時間半のコースはあっという間に終了。まだまだマッサージなんて必要ないと思っているが、プロの手はちゃんと分かっているようで「全体的に筋肉が凝ってますよ」と言われる。「奥さんセラピストなんだったらたまにはやってもらいなさい」とも。
 年末の忙しい時期を含めたここまでの凝縮した疲れも適度に抜け、12時になったところで宿をチェックアウト。荷物を預け身軽に街に出る。今日の昼間はバスタキヤ地区に行くことにしたのだが、カミさんがアブラ船を大いに気に入ってしまって今日もこれに乗って移動する。最初に乗った時は夜だったのであたりの雰囲気はよく分からなかったが、昼間の明るいうちに乗ると格別の開放感がある。テキスタイルスークについてそのままバスタキヤへ。

↑柵も何もない開放的なアブラ船は写真撮影も楽しい。ドバイクリークの風もさわやか

 新しいピカピカのものばっかり注目されるドバイもこういう歴史的な観光地があるのだ。昔の人の知恵が詰まったまちづくりは絵になるが、エアコンの室外機が多くやはり現代文明の方が上だったかと。しかし、無料で入れるコーヒーミュージアムにコインミュージアムを始めアートで溢れる場所で高層ビルと渋滞をしばし忘れる。

↑ウインドタワーが特徴的なバスタキヤの伝統建築。風が狭い路地を涼しくし、部屋の中は保温性良し。先人たちの知恵ですな。

 と、ここでようやく腹が減ってきたのでここで遅めの昼飯に。当然こういう所はアラブ料理屋が似合うがここには珍しいラクダ肉を出す飯屋があり、迷わずここにする。初めて食べるラクダ肉はクセもなく、かみごたえがある大変好みのものだったが、残念ながらここの店、給仕の体制が全くと言っていいほどなっていなくて、出来上がった料理を持ったままどの席だったが迷っている始末。自分の席から調理場が見えるのだが、この段階でもう料理片手に右往左往している。勘定もカードなんかで払おうものなら延々待たされているところもあった。(それを見ていたのでさっさと現金で払った)ガイドブックにも頻繁に乗るところだがら事前に調べたが、レビューサイトで点数が低かったのはこういうことだったかと納得。ただし、店の名誉のために行っておきますが、料理は美味しかったですよ。カミさんがアラビックコーヒーを頼んだけど、コーヒーも、一緒に出てきたデーツもこれまでで一番と言っていましたから。

 まあ、なんとかプラマイゼロにしてバスタキヤを後にする。帰りはメトロの駅まで又してもアブラに乗って戻る。何回乗っても楽しいし、何より運賃がたったの1ディルハム。小銭の処分にも役に立つ。バニヤススクエアの駅から乗るのだが、この周辺はいわゆる普通サイズの建物で普通に店の立ち並ぶ普通の街で、ドバイにもこういう感じの場所がちゃんとあるのだと知ってホッとする。何たって宿の方はとにかくなんでもデカすぎるから。海外資本ではない地元のスーパーもあってここで少し買い物。やはりここにきたからにはスパイスが欲しい。当然ケバブを始め様々な料理に活用するから一袋が大きい。あまりたくさん買っても使いきれないと勿体無いので一番汎用性のあるオリジナルブレンドのカレー粉とカシミールチリパウダーを購入した。これで日本に帰って存分にカレーが作れるというものだ。

↑オールド・ドバイの方はコンパクトな街並み。拠点がこちらだと旅のスタイルもだいぶ変わってくるのかと。

 夕方になり陽も徐々に傾いてくる中ドバイモールへ行く。直前にノルカードを無くすという失態を犯してしまい、レッドチケットでの移動だ。大晦日は花火のおかげで通行規制があって行けなかったスークアルバハールからドバイファウンテンを見ようという算段だ。さすがにここの目玉だけあって湖の周りは人でいっぱい。それでもギュウギュウになることはなく携帯やカメラを構えるのには全く問題ない。しかも噴水ショーは30分に一回行われるのでちょっとぐらい見逃しても大丈夫。演出も毎回変わるので何度見ても飽きないと実に観光客に優しい。

↑ドバイファウンテンのショータイム!!きらびやかなモールに高層ビル。これぞ、ドバイ。

 夕闇が覆い始める6時の回をカメラに収めてからドバイでの最後の晩飯。スークアルバハール内のエミラティ料理にする。ここでもラクダ肉を見つけてしまったのだ。当然迷わず注文。こちらはテンダーロインの部分をマリネせずシンプルなステーキにしたもの。昼間のものに比べ幾分柔らかく、肉の旨みが十分に感じられる。こうしてまた新たな肉を制覇した。
 結局噴水ショーは3回も見てしまった。
 時計は10時近くになったのでモール眺めつつメトロの駅へ向かう。途中ヴァージンメガストアでアラブミュージックのコンピレーションCDをジャケ買い。新世界にはこういう楽しみもある。
 宿へついて荷物を受け取る頃にはもうヘトヘトになっていたので空港まではタクシーで行く。ドバイ国際空港は眠らないハブ空港だが、広さも十分でチェックインの行列もない。出国したらまずは免税店で最後のお土産調達。それを終えて、事前に予約しておいたマルハバラウンジでくつろぐ。長時間の乗り継ぎもあるドバイ空港にはエコノミークラスの人も使える有料ラウンジサービスがあるのだ。1日前にドバイ乗り継ぎでこのラウンジを利用したカミさんのお姉さんの情報では次々人がやってきて大混雑だったようで、席を探すのも一苦労かと思ったら事前予約の人は席も用意してくれるという嬉しいサービスが。ソファに落ち着き、ようやくここで今日の初ビール。普通のラウンジと違いムスリムの人が間違って飲んでしまわないように酒類はカウンターで注文して受け取るシステムだ。いい気分だがさすがに眠さはピークに達し船を漕ぎながら搭乗時間まで過ごす。
 そしていざ搭乗。ここで今回の旅最後のサプライズが。搭乗券を見せて通ろうとすると係りのおっさんが何やら搭乗券を発行し直している。ああ、これはチェックインの時にパスポートを間違ってスキャンしたからだろうなと思っていたらオッサンが一言

「お前らビジネスクラスな。」

は?

 ゲートを通り抜けて改めて搭乗券を見るとそこにはいつの間にか”business”の文字が。これはよく聞くオーバーブッキングなどで無償でアップグレードしてくれるというアレだな。一度ロンドンから帰る時にこれに遭遇したがまさか人生で2度もこんなことがあるなんて。しかも今回はエミレーツで。疲れ切った体にこれはまさに地獄に仏。シートは古いタイプのライフラットシートだが快適さはエコノミーの比較にもならない。ウエルカムシャンパンを受け取り、離陸後は早速シートを倒してひと眠り。旅の疲れはかなり抜けて無事に日本に帰ってきた。
 成田着だったので成田エキスプレスで東京まで。日本の狭さがなんだがやっぱりいいなぁ。
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