IAN-Gの無謀旅日記~香港編、その5~

期間 2016年5月3日~2016年5月5日
(行ってきた人、文、写真=IAN-G 同行者=かみさん)


↑九龍城埠頭でゴミ拾いをするオジサン。彼らのおかげで今日も百万ドルの夜景は保たれています。
5月3日(火)
 連休三日目。ようやく出発となった。朝の5時半に起きて6時には家を出る。3度目の香港ということもあり自分もカミさんも荷物の取捨選択ができているので非常に身軽な羽田までの道のりである。まずはチェックイン。今回は予約が遅く座席指定ができず空港でカウンターのお姉さんのさじ加減でやってもらうことに。窓際中央問わず3アブレストのB777の中ではベターな窓際通路側二席を手に入れることができた。出国もゲートは大混雑でチェックインカウンターの反対側の端っこにあるサブの出国ゲートへ歩き何とかスムーズに通れた。あとは搭乗時間までコーヒーを飲みながらの優雅なひと時である。いい流れはここでも現れ、座った座席の窓際席は空席で3席をふたりで使えるという幸運にも恵まれた。そうして、いざ離陸。日本上空は曇り空で必ずしも快適な飛行ではなかったがビールを飲んで機内食を食べたらいい気分になりウトウト。半ば夢心地のまま4時間のフライトは終了し、香港に到着した。
 機場快線で香港駅まではいつもと同じだが、ここからゼン湾線で九龍に戻る。前回生カキとともに夢のような時間を過ごしたシェラトンホテルが今回の宿だ。高級ホテルに固執するつもりはないのだが宿代が予想を超えて安かったのでつい決めてしまった。部屋は14階のハーバービュー。すぐ真下が工事中なのと目の前のインターコンチネンタルホテルが若干邪魔だがそれでもなかなかの絶景である。
 しばし休憩して早速行動開始。まずはすっかり恒例となったアフタヌーンティーと洒落込むわけだが、カミさんの第一希望は何と言ってもペニンシュラ。シェラトンからは道路を隔ててすぐ隣。これは千載一遇のチャンスだったが、行ってみるとすでに行列が。これでは空くのを待つだけでも時間がかかってしまってしまうので第2希望へ。

↑着いて早速スターフェリーに乗船。広がるのは高層ビルと分厚い雲。

そのまま歩いてフェリー埠頭まで行き、ヴィクトリアハーバーをスターフェリーで渡り向かったのはフォーシーズンズホテル。ペニンシュラに比べて席数も多いし入れると踏んだのだが、こちらもあいにく満席。しかし係りのオネーサンが「アフタヌーンティーならバーでもいただけますよ」と言ってくれたのでアドバイス通りバーの方へ。5時までという時間制限付きだが座ることができ、早速注文。バーの雰囲気に三段トレイがあまりにも場違いだが気にしてはいけない。向こうがいいって言ったのだからこちらも堂々と食べさせていただこう。

↑このテーブルだけだとラウンジにも見えますが、周りはみなさんビールやワインを飲んでいました。

 甘いデザートやスコーンには苦戦したがどれもうまい。甘いものだけでなく塩味のものもあるのがアフタヌーンティーのいいところ。食べ終わる頃には照明は暗めに落とされ、テーブルにあったフラワーアレンジメントはキャンドルにとって変わられ、あっという間に酒を飲む場所に。ここでタイミングよくホテルを出て中環の方へ。
 ショッピングモールの中をソーホーに向かっていこうとしたらこの時期の香港旅行で最も恐るべきもの、そう、雨が降ってきた。しかもいきなりスコールのような土砂降りである。幸い建物の中で雨に濡れることはなかったがショッピングモールで足止めをくらってしまう。ひとくされ見て回ってもやむ気配は一向になく。仕方なしに中環を離れ旺角へ。

↑ただでさえ暑い香港。雨なんぞ降られたら湿度もMAXに。早くも真夏の予行演習。

 本来なら今夜の晩飯は深水歩のオープンエアの席がある店にしようと思っていたが当然雨だと外で食べるのは無理。雨が降った時の代替案として佐敦の飯屋を計画していたのでその中間地点で、ランガムプレイスのような商業施設のある旺角で様子を見ようというわけだ。スーパーで色々物色した後最終確認をしたが、雨は弱くはなっているもののやむ気配はないので佐敦の飯屋に行くことに決定。
 地図を頼りに行くとどこか見覚えのある風景だ。どうやら廟街の外れの大牌檔の近くのようだ。席も空いていてすぐに座れたのだがメニューを見てびっくり。中国語だけなのだ。それもガイドブックで書かれている多少は理解できるような生易しい中国語ではない。どんな風に調理したかヒントすらつかめないのだ。しかも写真もない。ひたすらに漢字だけのメニューだ。しかし、ひるんではいけない。わかる単語だけを頼りに、蝦、蟹の言葉に気をつけて後はどうにでもなれ、とこれはと思ったものを3品注文。スムーズに注文できたのはブルーガールだけである。

ドキドキしながら料理が来るのを待っていると一品目が運ばれてきた。


・・・まさかの酢豚だった。

 メニューを見た限り酢豚を匂わせる単語なんてどこにもなかったはずなのだが、まあこれはこれでいいか。まさか日本じゃあるまいし、パイナップルなんて入っているわけ…

入っている!!

これ以上食べるのをためらうと店の人に怪しまれるので食ってみると…

うまい。
 
 日本じゃこんなうまい酢豚食ったことない。肉も一緒に炒めたパプリカも、そう、パイナップルまでうまい。これは嬉しい誤算だ。これなら次のメニューも期待が持てる。二品目に来たのはガチョウの水かきの醤油煮。鵞と掌の文字がわかったのでこれは少し予想がついた。水かきということは鳥で言うところのモミジ、ならばプルプルコラーゲン系でこれは望むところ。 一緒に煮込んであるどんこに揚げかまぼこに干し貝も味がしみていてご飯によく会う。3品目は白魚の唐揚げ。花椒塩がかかっていてこれは酒のつまみにいい。海鮮料理が名物とレストランガイドにはあったが結局魚介類はこれだけ。

しかし、いやいやどうしてどれもうまかった。ビールも二本飲んでいい気分になったし大変満足したのだが…
 隣に「地球の歩き方」片手の日本人カップルが座って言葉も通じないと見るや店のおっさんが写真付きのメニューを持って行った。

おい(怒)!

 あるんだったら出してくれよと思ったが、いやこれは自分が日本人にも、観光客にも見られなかったからだと考えると逆に嬉しくなってしまった。地元の人に混じってその土地の日常に溶け込むことが自分の旅のスタイルの原点。それを思い出させてくれた。それに何が来るかわかっていたら酢豚なんて頼まないしね。ここでうまい酢豚に出会えたのも何かの縁ということでいいじゃないですか。あ、あとお店の名誉のために入っておきますが、サービス自体はとてもいいところでしたよ。

↑メニューは難しいですが味もサービスもいい店でした。佐敦の「金山海鮮酒家」。

 宿に帰る前にカミさんを佐敦駅すぐの裕華国貨へ連れて行く。閉店間際で人はまばらだから冷やかしにはちょうどいい。雑貨は買うつもりはないが、地下の食品売り場で腐竹を発見し購入。しかも台湾や広州産が多い中、純然たる香港上環製だ。最後にいい買い物して宿に帰ってベッドに大の字になる。明日も早いからこの辺にしておこう。
5月4日(水)
 目覚ましのアラームとともに朝の7時に起床する。二泊三日の旅では1日まるまる動けるのはこの日だけなのでそこそこに気合を入れて行動開始。まずは朝飯を食べに上環へ。カミさんと香港に行くようになって恒例となったのが蓮香楼での朝飲茶。前回は二日酔いでろくに食べられなかったが、今回は体調も万全。席もすぐに見つかり鼻息も荒く点心を物色する。

↑さすがに平日の朝なのでそこまで混雑はしていませんでしたが活気はすでに最高潮。茶器が出すカチャカチャという音がなんとも心地よいです。

毎度のエビとカニが入っていないか見極めながらの点心選び、今回は結構干しエビが入っているものが多く難儀したが、カミさんも中華ちまきに腸粉などを楽しむことができた。朝から二人で腹一杯食べても一人100ドルチョイ。毎度のことながらこれは安い。


↑今回食べた点心たち(一部)。お気に入りは左下の牛モツの醤油煮。酒が欲しくなります。

 満腹になったあとは腹ごなしを兼ねてキャットストリートまで歩く。まだ店はどこも開いておらずただ歩くだけとなってしまい、そのまま上環の駅から地下鉄でひとまず尖沙咀に戻る。
 ここからバスに乗って今回のカミさんのリクエストである九龍城へ。広いネイザンロードを行く二階建てバスの最前列に陣取ってカメラ片手の道中である。リーガルオリエンタルホテルの前で降りて最初に向かったのは九龍寨城公園。あの九龍城砦がなくなってはや23年。すっかりここがかつて悪の巣窟だったとは思えない落ち着きぶりである。南門の入り口から入りボランティアでガイドをしているおっさんの話を聞いてから公園内を歩く。緑あり高低差あり水辺もありでこれはなかなかに本格的な中国庭園である。一巡りするのに1時間以上かかってしまった。

↑九龍寨城公園をゆっくりと歩く。都会の喧騒を忘れるならここ。散歩の後はうまいものが待っています。

 公園を出たあとは街市を冷やかしてから昼飯。最初に九龍城に来た時から気になっていたイスラム料理屋「清真牛肉館」に入る。ハラルフードには興味もあるし、何より肉料理がメインだからカミさんのアレルギーの心配がない。この店の名物である牛肉餅にラムカレー麺、カミさんは牛肉細切り麺をチョイス。カレーと麺が別々に来たのには驚いたが味はどれも秀逸。麺はかんすいを使わない白い手延ばし麺でカレーはスパイスが効いたインドスタイルに近いもの。そしてスパイスで煮込まれた牛肉あんのぎっしり入った牛肉餅は一度かんだら肉汁がジュワッと溢れ出るほどのジューシーさ。ここまでどれも大当たりだと実に気分がいい。上機嫌で九龍城をバスであとにする。しかし、来た道を戻るのではなく九龍城のフェリーターミナルまで行きそこから北角へ渡ろうというわけだ。

↑香港にだって地味なウォーターフロントぐらいありますよ。

あいにく到着2分前にフェリーは出発してしまっていて次のフェリーまで30分待つことに。バス通りには商店が連なっていたがフェリー埠頭に来ると周りは高層マンションばかり。この周辺は昔高い建物はNGだったからどこも比較的新しく建設ラッシュはまだまだ続いている。バスターミナルにフェリー埠頭が近く交通の便は悪くはなさそうだ。軽く見て回るとフェリーが到着して乗船する。それにしても尖沙咀と中環という観光地を行くスターフェリーに比べてこちらのなんと地味なこと。乗客も観光客は自分たちぐらいなもんであとはほとんどが地元の人だ。百万ドルにはならないタイプのビクトリアハーバーをゆっくり進み北角に到着。フェリーふ頭近く、かの有名な「東寶小館」がある査華道街市も冷やかしたが熟食中心は絶賛床掃除中で皆まかないを食べている真っ最中。ここが夜になると大勢の人で賑わうのか。

↑北角はお気に入りのトラム撮影スポット。今回は動画でも撮っちゃいました。

 春映街で迫り来るトラムを楽しみつつ表通りに。カミさんはここのスリッパ屋が大いに気に入ったようで今回もスリッパショッピングである。じっくりと品定めしている間手持ち無沙汰な自分はトラムを延々撮っているばかり。この店女性用のスリッパは充実しているが男性用は申し訳程度なのだ。カミさんが気に入ったのを3足ほど買ってトラムで湾仔へ。
 お茶屋で龍井茶とジャスミン茶を買ったり、ウェルカムでお土産探しをしたりしたが、ここに来た目的はこんなことではない。なんとカミさんのリクエストでマッサージを受けることになっている。鍼灸師であるカミさんはマッサージもやるので勉強ついでに体験したいということなのだ。受けるのは伝統的な中国式マッサージで約1時間されるがままに揉みほぐされる。

↑マッサージの予約はかみさんがしてくれました。ちゃんと「マッサージを受けるのは初めてです」、と言っておいてくれていたそうです。

ちなみ自分は人にやってもらう全身マッサージは生まれて初めて。やられている間は気持ちよく時間があっという間に過ぎたが、これで体に効果が如実に現れたかどうかは悲しいかなよくわからない。まあ、わからないくらいだからまだまだマッサージのいらない体だということなのだろう。ただし、確実なのは腹だけは減ったということ。カミさんによると背中を押すマッサージは胃も圧迫するので腹が減るものらしい。これで晩飯の準備は整った。

 一旦宿に戻って荷物を置き深水歩へ。晩飯を蛇にするというわけではない。今日は雨も降らなかったことだし昨日行けなかった店に行くことにする。深水歩の駅から歩いて10分ほど。繁華街から離れた閑散とした通りにその店があった。レストランガイドでは大牌檔にカテゴライズされていたが、実際行ってみると外のテーブルはわずかでメインは店内である。なんだ、これなら昨日でも大丈夫だったな。席に通されてメニューを見ると写真付き英語付きさらに一部日本語付きという親切さ。これならなんの心配もなく好物をホイホイと注文していく。ちなみに飲食店の競争が激しい香港ではメディアなどで紹介されると前面に押し出す感があるが、ここも例外ではなくメニューの真ん中に香港で有名なグルメおじさん蔡瀾と、前回カミさんに「蛭子さんにそっくり」と認定されたスターシェフ梁文韜による紹介文が挟んであった。

↑どれくらい閑散としているかというとこれくらい。

 まずやってきたのはつまみに頼んだ生サルボ貝のしょうゆ漬け。これがまたビールによく合うのだ。生ゆえに開けづらい貝を無心で開け貪り食う。貝好き冥利につきる瞬間である。その他頼んだのはローストポークに揚げスペアリブ、カエルの土鍋炊きに青菜炒めとシンプルなチャーハン。ここもハズレなしのうまさで大満足して重い体を引きずり宿まで帰る。

↑この店、日本の食器を多用していました。このサルボ貝の醤油漬けはうな重とかに使う重箱に入ってきました。

 部屋に戻ってシャワーを浴びる前にもう一杯と最上階のバーで百万ドルの夜景をつまみにウイスキーを傾けてから部屋に戻って本日の行動は終了。今日は実に充実した1日だった。

↑今回もこの夜景を堪能してしまいました。しかも酔ってもベッドまでは下の階に降りるだけ。
5月5日(木)
 昨日と同じ朝の7時に目を覚まして今日も朝飯を求めて外へ。昨日が飲茶だから今日は当然お粥、でも今回の宿は九龍。中環の羅富記までは遠いので事前に尖沙咀から佐敦の間でお粥屋を探しておいた。よくよく見返してみると目的の店はまたしても廟街の近く、一昨日もここに来ているのに気づかないとは注意力散漫だなぁ。入るとすでに結構な人たちがお粥をすすっている。ここの家の子だろう、制服姿の子供もいてしばらくすると学校に向かっていった。なんともローカル感の強い店なのだ。

↑香港の場合、宿を決めたら近くのお粥屋をリサーチしておくと朝飯に困りません。

 ここにはカエル粥もあったがカエルなら昨日食べたのでここはオーソドックスに皮蛋痩肉粥に。レタスも盛られヘルシーなお粥は具沢山でどれだけ食べ進んでも具がなくなることがないくらい。大変満足して外に出る。宿のチェックアウトまではまだ時間があるがあまりに遠くまで行くほどではないのでカントンロードまで出て尖沙咀まで帰り、さらにそのまま九龍公園を散策する。都心の真ん中の公園としては広い方で敷地内には鳥園もあれば香港漫画のキャラクターのオブジェも設置されていた。

↑九龍公園の一角にある”Avenue of Comic Stars”香港マンガのキャラクターたちの立像が並んでいます。スタイルは、まあいろいろ。

 そして香港の公園といえば思い浮かぶ太極拳をするじいさんばあさんも集団でこそいなかったが公園中にまばらに点在していた。涼しい空気が最初は気持ちよかったが、歩いているうちに陽も出てきてかなり暑い。この旅行中で最も天気のいい日だ。さすがに汗ビッショリになった所で宿に戻りシャワーを浴びて荷造りをして宿をチェックアウト。そのまま空港へ向かった。

↑都会のオアシス、九龍公園。忙しいはずの香港もここは時間がゆっくりと過ぎていきます。

 早々にチェックインを済ませ出国してから香港で最後の食事。今回は潮州料理も食べたかったが、ここでおあつらえ向きに潮州料理の店がありここで潮州十大菜の一つガチョウの醤油煮とサテ牛肉河粉を食べる。今回は食事に関しては大変充実したものとなった。ほどなくして搭乗時間になり席を確認すると普通のエコノミークラスよりも明らかに席が豪華だ。どうやらプレミアムエコノミーの席のようだが座っていいというのであれば文句は言わない。少々快適なフライトが期待できそうだ。
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