期間 2006年12月31日〜2007年1月6日
(行ってきた人、文、写真=IAN-G 同行者=いません)
↑滞在中これくらいの量のエールは飲んだのではないかと(写真はイメージです)
12月31日(日)
朝の5時半に目が覚める。二日酔いはほとんどなし。確か結構いろんな酒を飲みまくっていたはずなんだけど・・・ま、とりあえず調子は悪くないようなので、さっさと着替えて家を出ることにする。
外は・・・もちろんまだ暗い。車だってほとんど通らないありさまだったが、何とかタクシーを捕まえて東京駅へ向かう。さすが日本最大の鉄道駅、まだ夜が明けていないというのにすでに人でごった返していた、荷物を見る限りその半分はこれから有明で聖戦、という感じの連中ばっかりだったがそんなことは意に介せず成田エクスプレスに乗り、電車が地上に出るころには日も出てきた。大きなトラブルもなく約一時間で成田に到着。
成田に着いた時点ですでにこれから乗ることになるブリティッシュエアウェイズのカウンターには長蛇の列が出来上がっていた。とはいえチェックイン開始まではまだ30分以上あるから、と先に買い物を済ませてからその開始時間に再びカウンターに戻ってくるとその列はさらに長くなり、まあ仕方がないな、と最後尾に並んでしばらくすると、警備員のおっさんが来てこう言うではないか
「ファーストクラスとビジネスクラスにご搭乗のお客様は列の前方へお願いします」
今回は飛行機に金をかけることに決め大枚はたいてビジネスクラスに乗ることにしたのだが、早くもエコノミーとの違いをまざまざと見せ付けてくれた。列からはずれ一気に先頭まで案内されるとそのまますぐにチェックインを受けて、ともすれば一時間近くかかるかもしれないところがたったの3分で終了。浮いた時間で朝飯を食べ(しかも朝からうなぎ)、両替、保険を済ませ一杯引っ掛けてから搭乗口へと向かった。ビジネスクラスの扱いのよさはこの後も事あるごとに出てきて驚かせてくれた。
↑これが成田のBAラウンジ。ここなら好きなだけ飲んだくれることができます。
まず搭乗前に利用できるラウンジはゆったりしたソファでくつろぐことができ、軽食、ドリンクはセルフサービスで好きなものを選ぶことができ、国際電話、インターネットなども無料で利用可能。当然酒も飲み放題。そしてラスト・コールの時間になると登場口まで案内され、エコノミークラスの順番待ちをまるであざ笑うかのように先頭で搭乗。あとからやってきて先に乗り込むというのは非常に申し訳ない気持ちに駆られるが、それこそがファースト、ビジネスクラスとエコノミーの差だということを痛感。普段は羨望のまなざしで見ていたビジネスクラス用の通路から機内に入り、案内された席はなんとB747-400のアッパーデッキ!通路を挟んで片側2席ずつのシートはそれぞれ間仕切りを隔てて向かい合わせになっていて基本的に隣の人は見えない。そして足の短い日本人がいくらふんぞり返ってもまだ余るほど足元が広く、とりあえず荷物を上にしまって座ると今度はウェルカムシャンパンが出てきた。しかもプラスチックのコップではなく正真正銘のワイングラスだ。あまりの格の違いを見せつけられてすっかり舞い上がったところで飛行機は定刻どおりに離陸。水平飛行に入ってすぐに昼食になったがやはりエコノミーとは比べ物にならない豪華さ。まず出される器は全部陶器。そしてナイフ・フォークの類もちゃんと金属製だった。そして前菜、メインと2皿出てきてさらにデザートまでそれぞれ2〜3種類の中から選べた。一緒に飲んだワインもおいしく、食べ終わるころにはすっかり出来上がってしまい食器が片付けられるとシートを倒してそのまま寝てしまった。
もちろんその「シートを倒す」というのもエコノミーのときのように後ろに人に気を使いながら申し訳程度に後ろに傾けるなんてヌルいもんじゃない。なんとブリティッシュエアウェイズのビジネスクラスのシートは見事180度まで倒れるのだ。この「横になれる」ベッドとここまでに飲んだ大量の酒のおかげで全行程の半分近い6時間眠れた。普段ならよく眠れて1時間半程度だったからやはりこの水平になるシートの効果は絶大だった。
そして順調に進んでいって飛行機は定刻どおりにロンドン・ヒースロー空港に到着。やはり高緯度の国。まだ午後の2時だというのに夕方のような空をしている。ここでも先に飛行機から降りることができ、イミグレーションもまだすいているうちに通過。世界一厳しいといわれるヒースローのイミグレーションだが、別段トラブルもなく終了。預けた荷物を取りに行くとここでもビジネスクラスの荷物は先に出てくる。快適な空の旅は終始快適なまま終了し、一路ロンドン市内に向かう。
市内と空港をつなぐ「ヒースロー・エクスプレス」に乗り15分ほどでパディントン駅に到着し今回滞在するホテルまではここから地下鉄で一駅。しかし、ここからはロンドンから手荒い歓迎を受けることになる。まず地下鉄の切符を買おうと思って券売機に向かうとそれは見事な行列ができていて、切符を買うのに10分以上かかった。初めてイギリスに来た観光客が右も左もわからないまま悪戦苦闘しているので切符を買うだけでもかなり時間がかかる。そんなに難しくないはずなんだが・・・自分はといえばこれまでもいろんな国で電車に乗ってきた経験を生かして券売機の前でまごつくことなく切符を購入。ホームに向かい電車が来るのを待つのだが・・・これが待てど暮らせどやってこない。どうやらよくあることのようで地元の人たちはあせったりせずみな涼しい顔をしていた。そうしてホームに人があふれかえりそうになったところでようやく電車が到着。とりあえず乗って次の駅であるBayswaterで降り、地上に出ると今度は雨が降ってきた。とりあえず小降りになるのを待って歩き出し、ひとくされ道に迷ってから目的地の宿に到着。
部屋の番号を告げられカードキーを渡され部屋に行くのだが、すぐにドアの前で立ち尽くすことになった。カードキーを差し込む場所がどこにもないのだ。レセプションに戻り「どうやって扉開けるの?」と聞くと向こうもキョトンとした顔をしていた。同僚の人に「あそこは鍵が違う」と言われたらしく改めて鍵をもらったのだが、それが山が三つだけの簡素な代物で少し不安になるが、これで問題ないのならこちらが気をもむ必要はない。部屋自体ははきれいで狭くもないし、何より窓があるので去年よりだいぶましだ。とりあえず荷物を解きシャワーを浴びてから再び駅前に行く。さすがに疲れたし、雨も降ったりやんだりなので中心部に行くのは明日にして今夜のところは近所のパブでエールを飲むだけにしておく。
で、そのエールがとにかくウマい!こんなうまい酒を毎日飲めるイギリス人はなんて幸せモンなんだ!と思ってしまったくらいウマい。電気式のサーバーにはギネス、カールスバーグ、ステラ・アロトワ、フォスターズなどおなじみのビールばっかりだったが憧れのハンドポンプから出てくるエールはどれも見たことも聞いたこともない銘柄ばかり。ホップの新鮮な香りが飲むたびに口の中に広がり、ついついおかわりしてしまう。だいぶ酒が入ったところでまたしても雨が強くなったので今日はこれで終了。宿に戻り一眠りしておきたら見事に11時50分。テレビでカウントダウンを見つつ日記を書く。さ、明日から本格的に市内観光だ。
1月1日(月)
朝の7時半ごろに目が覚める。それにもかかわらず夜はまだ明けたばかり。とりあえず宿の地下にある食堂にてトーストとシリアル、ゆで卵とチーズという簡単な朝ごはんを食べてから着替えて外に出る。
朝のロンドンは思ったほど寒くなく気分よく歩いて地下鉄の駅まで向かう。Queensway駅のやる気のない係員からオイスターカードを買い、どこまで続くかわからない螺旋階段を下りて向かうはロンドンの中心地。まずはビックベンのある国会議事堂に向かう。この日は12時からここをスタートとしてトラファルガー広場までパレードがあるのでとにかくかなりの数の観光客がこのロンドンを代表する建物を見に来ていた。こっちが一人なのをいいことに世界中の観光客が「シャッター押してくれませんか」と頼みに来る。おかげで世界中のデジタルカメラの扱いに慣れてしまった。自分のカメラには自分が映った写真は一枚もないのにね。しばらく寒空の中パレードを見守ったあとパブが開くや否や冷えた体を暖めるためにぬるいエールを一気に流し込む。
少しいい気分になったところで昼食を適当に済ませ再び地下鉄に乗り込み今度はもう一つのロンドン名物タワー・ブリッジに向かった。この橋自体は普通に渡れるが、その勇姿を隣のロンドンブリッジから見ようとするとかなり遠くなってしまい、手持ちのショボいデジカメでは撮れずじまい。そのまま橋を渡ってテムズ川の南岸に渡り、英国最古のパブ「George
inn」にてゆっくりと酒を飲み、そのまま川沿いを歩き続け、行き着いたテート・モダン美術館に入りひとくされ見て周り(ここも入館料はタダ!)、4時半ごろ外に出るともう日がどっぷり暮れていて、しかも雨。これ以上歩き回っても風邪をひくだけなのでステーキ屋にて晩飯を食べ、パブで酒を飲み、電車で宿のある駅まで戻り、パブで酒を飲み、何とか宿に着いたのが9時ごろ。さすがに歩き疲れと、飲みすぎと、寒さでくたくたになったので日記を簡単にまとめて寝ることにする。
↑ロンドン最古のパブ(らしい)”George inn”。観光客も笑顔で迎えてくれるいいパブでした。
今日一日市内観光をして手に入れた教訓は一つ
「冬のロンドンは観光に向かない」
明日も夜が明けると同時に行動を開始するとしましょう。
1月2日(火)
今日も日の出とともに宿を出る。とはいっても朝の7時をゆうに越えているので驚くほど早いというわけでもない。とりあえず隣駅であるパディントンまで行き、長距離列車に関する情報収集を行う。ロンドンに居っぱなしでもアレなので比較的短時間(片道2時間くらいまで)で行ける地方都市にも行ってみようかな、なんて考えて時刻表を手に入れチケットオフィスや改札口の位置などを確認してから地下鉄に乗り込む。今日の目的地はただ一つ。大英博物館だ。最寄のHolborne駅の構内は展示物をモチーフとしたアートが描かれていてすでに雰囲気は満点。地上に出て目的地をまったく逆方向に向かってしまったもののそれでも何とか開館時間ちょうどに到着し、片っ端から見て歩く。
荘厳な外観とは打って変わって館内中央(元中庭部分)はモダンなつくりでしかも天井は高く、屋根はガラス張りで太陽の光を存分に取り込み(とはいっても冬のロンドンなのでたかが知れているが)、白で統一された空間はそこにいるだけで頭の中まで真っ白にさせてくれる。その分ここを巡ったあとはここのあらゆるお宝の情報でぎっしり詰めることができそうだ。
この中庭部分だけでもとにかくすごいのだが、展示室に入るとその圧倒的な量と質の高さに目を奪われる。大きいものではパルテノン宮殿の外壁に施されていた彫刻やイースター島のモアイ像が、小さいものになると拡大画像を一緒に見せないと何なのかわからないくらい小さい印鑑やアクセサリーまで。古いものでは石器時代のハンドアックスから新しいものではユーロ紙幣や日本のマンガまで・・・確かに人類の歴史をほぼ網羅している。
ここにおける最大の目玉であるエジプトのミイラなんかは展示室に1体、鎮座しているなんて生易しいものではなく、棺だけでも20体以上はあろうかという数でそのうち10体近くは遺体がほぼ完全な形のまま発見されたもので、確かに今にも動き出しそうな感じだ。ミイラになった方もまさか2〜3000年後に自分の遺体がこれだけの衆人の目にさらされるとは思っていなかっただろうに。
もう一つここに来たからには見ないといけないのがロゼッタ・ストーンで、こちらは展示室入り口すぐのところにあって常に人だかりができていた。思ったよりも大きく、その割には文字は小さく、遠目からだとただの石である。しかしこれこそが古代人類の生活を読み解く重要な存在だったと言われると思わずその場にひれ伏してしまいそうだ。
ほかにも古代ギリシャの彫刻や、インド、チベットの仏像。中国の歴史を網羅する品物は殷周時代の青銅の鼎や玉壁に始まり、清代の青磁や漆器まで質の点ならば故宮博物院にも劣らない品物ばかり。日本に関するものはといえば、埴輪、土偶から始まり、戦国時代の鎧兜に日本刀、平安時代の絵巻物から、浮世絵、マンガと日本を代表するものばかり。展示スペース自体はそんなに広くなかったが、展示物が多い国はイコールかつての大英帝国の傘下だったところばっかりであり、日本に関して言えば多くの宝物はいまだ日本にあるということ。これはこれでまたよしか。
そんなこんなで館内をせわしなく見て周り、一通り見終わったのは2時半。実に4時間半いたことになる。これでもまだ見たりないくらいだが、腹も減ったし、昨日寝すぎたためか体がだるいのでこの辺で見切りをつけ、館内のレストランで昼飯を食べる。美術館、博物館に併設されているレストランが中々にうまいものを出してくれるというのは万国共通だが、この飯がまずい国イギリスも例外ではなかった。
瓶入りのエールとともに、久しぶりにまともな昼食を食べてから博物館をあとにする。これだけ見て回って楽しんでも入館料はなんとタダ(!!)その代わり寄付を募っているのだが、なるほどこれだけのものを見せられたら下手に入館料を定価で集めるよりもそれ以上の額を寄付してくれる人もいるだろうに。かく言う私もしっかりと寄付金を入れてきました。館内中央リーディングルーム入り口向かって左側に1000円札があったらそれは私が寄付したものです。
そこから先は日もそろそろ暮れ始めるし歩き疲れたので町を歩きながらパブを見つけてはエールを飲みまくるいつものパターンに。道すがら本屋も多かったので冷やかしつつ歩き回るとあっという間にもう日没。ただし、今日は雨が降らなかったこともあり人出はどこも多く、まるで東京にいるのと同じような都会の喧騒の中を行き、晩飯を食べてから再びパブめぐりをして昨日と同じ、9時ごろ部屋に戻る。疲れと酔いでもうクタクタ、シャワーを浴びてこの日記を書いて風邪予防のために近所のスーパーで買ったレッドブルを2本飲んでからさっさと寝ることにする。明日も早いことだし。
1月3日(水)
今日も朝の5時ごろ起きて、朝食ののち日の出とともに宿を出る。向かうはパディントンの駅。ここは西に向かう長距離列車の発着駅である。今日は何を思ったか電車で遠出をしてみることにする。時刻表をしばし眺めて片道2時間チョイで行けそうな所を探した結果、カーディフに行くことにする。
早速チケットを買おうとチケットオフィスに向かうが当然のごとく窓口は行列。しかし、ふと横を見ると自動券売機があり、ここで目的地と切符の種類(片道か往復か、周遊券)を指定するとあっという間に終了。値段が高いのはまあしょうがない。(スタンダードクラス往復で£144.00。東京〜名古屋間をグリーン車で往復できやすぜ。できるだ安く済ませたい人にはお勧めできませんが・・・)切符を手に入れたのが8時11分、カーディフ行きの電車が出るのは8時15分。ホームを確認して急いで飛び乗り、空いている席を見つけ座ると電車は動き始めた。
ロンドンを出て10分もしないうちにだだっ広い田園風景が飛び込んできた。牧草の緑がイギリス特有の曇天の下でも実によく映える。そしてその草を牛、馬、羊たちが実にマイペースに食べている。テレビでよく見るイギリスの田舎が延々と続き目立った遅れもなく電車はカーディフに到着した。
カーディフはウェールズの首都であり、ファンタジー好きにとってはケルト文化が色濃く残っているところとして知られ、クルマ好きにとってはラリーGBが行われる場所として有名である。公共の案内はすべて英語とウェールズ語が併記され、どこへ行ってもウェールズの国旗がたなびいている。スコットランドや北アイルランドは「イギリスの中の外国」と例えられるが、ウェールズも十分外国である。一つの国にいながらいくつもの国を楽しめるのはイギリスならではの楽しみといえる。
早速目覚めたばかりの街を歩いてみる。街の中心部にカーディフ城が鎮座しさながら城下町の様相を呈している町のつくりである。まだ店も開いていないところが多く朝早くからやっているマーケットにとりあえず入る。2階建ての建物で2階は外周のみ店で真ん中は吹き抜けになっている。教会のすぐ隣という立地からして実にトラディショナルなマーケットだ。売っているものも肉、魚、野菜はもちろん惣菜、お菓子、衣類、電化製品、おもちゃ、アナログレコード(CDもあったが)などの店も軒を連ね、さらに床屋にペットショップまである。もちろんカフェ(というよりも飯屋という表現のほうが似合う)もあり、地元のジイサンバアサンたちが楽しそうにおしゃべりしながら遅い朝食をとっていた。
少し小腹も減ったので惣菜屋でチキンを買ってかぶりいてから今度は人が集まるモールのほうへ向かう。さすがは国一番の大都市、ブランドショップも結構な数が並び、HMVもヴァージンメガストアもある。本屋などを適当に冷やかしてから一旦駅に戻りそこからバスに乗ってカーディフ・ベイへ向かう。この時点ではまだパブは開いてすらいない。
↑カーディフのマーケットにて。いろんなものがあって見ているだけで楽しくなりますな。
↑カーディフ・ベイにて。日本海を連想させる鉛色の海、夏はもう少しいい景色なんでしょうね。
カーディフ・ベイは再開発を経てカーディフの新たな観光スポットなった場所で港町らしい雰囲気に新たに作られた総合エンターテイメント施設ミレニアムホールとレストランが並ぶマーメイド・キーがうまくマッチしている。しかし、もう正月があけたからか人出はまばら。まあ、この寒さならしょうがないか。紹介ビデオは夏の一番ベストな時期に撮っているからきれいに映っているが、何せ今は真冬だ。分厚い雲に覆われて海はまさに鉛色をしている。とりあえず昼飯を食べ、エールを一杯飲んでから市内に戻る。
そこからは待ってましたとばかりにパブをはしごする事にする。ビールの種類はロンドンとほぼ変わらないが、エールに関しては「BRAINS」という地元メーカーが幅を利かせていて、どこのパブに行ってもハンドポンプにはBRAINSのロゴが踊っていた。カスクエールだけで4〜5種類、さらにギネスのようなクリーミーな泡をした”SMOOTH”、やいわゆる普通の生ビールである”45”などもあった。地元の人たちはみんなパブでBRAINSを飲みながらウェールズ代表のラグビーチームを応援しているんだろうな。パブのうちから外から大騒ぎしている姿は容易に想像できる。
そんなこんなで古いパブから新しくできたスタイリッシュなパブまで7〜8件回ったところで気分もよくなり、ついでに日も沈んできたのでここらでロンドンに戻ることにする。カーディフ・セントラルの駅に戻り時間を確認すると、まだ時間があったのでもう1軒パブに寄って時間をつぶし、再び駅に戻ると「電車が遅れています」の文字が。やっぱりここもイギリスである。
定刻より10分遅れで電車が到着し席に座ると一日の疲れが込み上げ、そのまま少し眠ってしまった。日本では「電車で寝る」のは半ば当たり前になっているが、海外では身の安全の問題もあって夜行列車でない限りまずありえない行為である。
その後も電車が遅れに遅れ、6時25分到着のところパディントン駅に電車が着いたのは7時を回ってからだった。弱かったが雨も降っていたので駅の近くで晩飯を食べて(マッシュルームフライがシンプルでうまい!)パブでもう一杯だけ飲んで宿に戻った。
カーディフも実に心地よい都市だった。願わくば夏に行きたかったなぁ・・・そして次行くチャンスはあるのだろうか?
1月4日(木)
昨日のウェールズまでの小旅行に気をよくして、今日も懲りずに地方都市に行くことにする。朝起きてから(5時くらい。もちろん夜明け前)ガイドブックをパラパラとめくりつつ、どこに行こうか迷う。それなりに見て回れる場所があり、今回は電車で1時間くらいの所、一応昨日海は見たから今日は内陸のほうへ・・・
結局出た結論は「オックスフォード」
世界に名高い学問の都である。そして古い町並みが今でも残っているということならば、当然古いパブもあるはず、ということで再び始発駅であるパディントンへ向かう。
もはやチケットを買うにも何の苦もなく速攻で終了。オックスフォードどまりの鈍行列車もあるのだが、遠距離列車に乗ってしまえばたったの3駅。スタンダードクラスで席を探すのも結構骨が折れる作業なのでファーストクラスのチケットを手に入れる。値段はといえばスタンダードの£10.00増しくらい。今回は近い場所なのでたいした出費とはならなかった。
さてチケットは手に入れたし、準備万端。あとは電車に乗り込むだけ、という段になり案内板を眺めていると目的の電車がいまだついていないらしい。出発10分前になって”on time”の表示が"delayed"に変わった。もはや驚くことはないのだがなんとなく気勢をそがれた気分。それでも20分後に電車が到着しようやく出発。昨日見た田園風景をもう一度眺める。途中のディドコット(昔のウイリアムズのファクトリーがあったところですね)のデカい煙突付近のポイントを右方向に行くと程なくして電車はオックスフォードに到着。駅舎は結構モダンなつくりをしていた。ここから市の中心部までは歩いて10分ほど。街歩きを楽しみつつそちらへと向かう。
中心部に入るとすぐに石造りの古い建物が目に飛び込んできた。これらはみなカレッジとして現役で使われている建物で中の教室なんかはいたって普通のつくりのところもある。しかし、大講堂なんていったら相当年季の入ったものなのは間違いなさそう。少し歩くたびに写真を撮り、建物がでかいから写真を撮るたびに道路を横断する。そんなことばっかり繰り返しながら街の概観をつかんでいく。
ふと裏道に入ったら、行った先でマーケットがこの寒空の中やっていた。売っているものはガラクタから食器類、レコード、古本に古着まで多岐にわたっていた。家のガレージの隅で眠っていたガラクタを集めて出店しているような雰囲気でこういったところに結構なものが潜んでいるので注意深く眺めてみたものの心動かされたものはなく、一通り周ってから再び街歩きに戻る。
それ以外にもオックスフォードは学問の町ということで本屋も多い。目玉はやはりオックスフォード大学出版の本であり、直売店も市内にはある。おなじみの英語の辞書(日本風にいうと英英辞典)にいたってはポケット版から20巻セットのものまでラインナップされていて書棚にてものすごいにらみを利かせていた。さすがは英語の権威、オックスフォードである。
↑風光明媚なオックスフォードの街を行く。どこを切り取っても絵になりますなぁ
と、こんな感じで街を見て回っているうちに腹も減ってきたのでそろそろパブめぐりを始めることにする。どこのパブも年季の入った建物であり、壁を見渡すと、卒業生の写真やら訪れた学者さんの写真やらがかけられていていかにも「学生街のパブ」という雰囲気をかもし出していた。エールの種類はロンドン中心部と同じ銘柄のものもあれば、見慣れない地元の銘柄もそろっていて飲み飽きない。日本でもボトル入りで売っている”Hobgoblin”も発見した。3軒目くらいで腹も減ってきたのでついでに昼飯も食べる。頼んだのはフィッシュ&チップス。思えばイギリスに来てからというものこれを食べるのは初めてだ。なぜかというと、オーストラリアにいたときにろくなものに出会ってなかったので頼むのに二の足を踏んでいたのでした。しかし、今回出てきたのはまさに”当たり”。エールで醗酵させた衣は実にサクッとしていて、魚もしっかりと味があって下手するとソースがいらないくらい。基本に忠実にモルトビネガーをかけて食べるとサッパリして油っこさが気にならない!!これで少しはこのメニューへの偏見も減ることでしょう。ただし、小さめとはいえタラ半身とマクドナルドに換算するとMサイズ二つ分のチップスは食べるのに苦労した。
腹もいっぱいになったので午後も町を色々と練り歩く。途中、市営の博物館(もちろんタダ)に入りこの街に関してお勉強。とにかく歴史ある街というのは文化的遺産も相当な数がある。ミニのブランドであった”Morris”もオックスフォードが発祥である。確かに初期のモーリス・ミニのエンブレムはオックスフォードの市の紋章に似ている。博物館にもおなじみの直列4気筒エンジンの複製が飾られていた。
その後も街を歩き、パブで酒を飲み、本屋で本を物色する、を繰り返し、日も暮れ始めた3時半頃オックスフォードをあとにした。やはり電車は遅れていたらしく、ホームに来ていた列車は本来30分前に来ているはずのものだった。これでは次の列車がいつくるのかわからないので急いで飛び乗る。パディントンに戻ったのは5時ごろ。日はすっかり落ちていた。
そこからしばらくエールをすすりながらあてどなく街をさまよう。目的はもちろん晩飯だ。しかし、市内はどの店を見ても一杯で、せめてパブでもと、のぞいて見るとやはりテーブルは埋まっている。ひとくされ歩いてからあきらめて帰る道すがらのパブが少し席が空いていたのでここで飯を食べて、一杯飲んでから、宿に戻った。今日も疲れました。
1月5日(金)
毎度のように朝の5時に起きてウダウダして、夜明けを待ってから外に出る。ハイドパークを散歩しながらロンドン中心部に向かったのだが、今日の予定は簡単至極。
「お土産を買うこと。」
さすがは世界の観光地ロンドン、お土産屋は街中にいっぱいあるのだが、毎回海外に行くたびにこの手の店で買うとどうしてもワンパターンになってしまうのでその前にまず週末のマーケットが有名なカムデンタウンに向かう。
↑カムデンタウン。パンクをはじめとするイギリスのポップカルチャーの中心地でもあります。この街にはモヒカンとゴスロリが似合う!!
カラフルなテラスハウスに派手な看板、各国料理の屋台など、なるほどここは若者文化の中心のようだ。ここのメインは衣類のようでセンスあるTシャツがそこかしこで売られていた。ほかにもパンクファッションの発信地らしく、革ジャンやシルバーアクセサリー、白黒縞のシャツやハイソックスなどなど、お好きな人にはたまらないファッションアイテムがズラリ並べられていた。とはいえ、目的のガラクタは見当たらず。町並みだけを楽しんでから市内中心部に戻る。
ここからは本格的なお土産探し、今回は「普通のお土産屋」、「本屋&ニュースエージェンシー」、「スーパーマーケット」の3箇所で買い物をした。まずお土産屋ではおなじみのユニオンジャック柄や地下鉄のロゴをあしらったグッズを中心に買い込み、続いて本屋でサッカーやロックの専門誌を見繕って購入。そして近所のスーパーでティーバッグやお菓子などを手に入れあっという間に買い物は終了。昼食はパブでソースのかかりすぎたシーザーサラダをエールで流し込む。
一度荷物を置きに宿に戻るとまだ午後の2時半。日が暮れるのももう少し先なので少し足を伸ばしてドックランズの再開発地区を見て回る。まるでロンドンに似つかわしくない機械的な建物は実にきれいなのだが、なんというかこれなら東京にいても同じじゃん!と思ってしまったのでそそくさと後にする。この地区を走るライトレイルは地下鉄よりも本数が多く、値段が安いのが魅力。逆にそうでもないと観光客は行かない場所である感は否めなかった。
再び中心街に戻り、晩飯を食べて、パブで三杯ほど飲んでから最後の夜を楽しむべくミュージカルを見ることにする。見るのはもちろん”We will rock you”。昼間のうちにチケットを手に入れておいて開演の7時半より少し前に会場であるドミニオン・シアターへ到着。すでにほぼ満席の状態の中、自分の席を探すと見事に列の真ん真ん中!すでに座っている人たちにスマヌスマヌとあやまりながら何とか席に座ると程なく開演。
恥ずかしながらミュージカルを見るなんて生まれてこの方初めてかもしれないし、ライブで何かものを見るのだって一年前のWWEの横浜公演以来なんですが、やはり生の迫力というのは何物にも代え難いもんですなあ。セリフがたまに聞き取れなくても気にしない気にしない。聴き慣れた曲が流れるたびに場内は盛り上がり、特にカーテンコールのあとのオールキャストによるBohemian
Rapsodyはまさに感涙もの!!最初から最後まで興奮しっぱなしの観劇デビューでした。
劇場から出たのが夜の10時半。すぐ目の前にあるTottenam Court Road駅から地下鉄に乗り、途中で(おそらく最後になるであろう)エールをすすって宿に戻りましたとさ。そこからは明日の出発に備え荷物のパッキング。着替えとおみやげといっぱいの思い出を何とか全部二つのかばんに押し込み準備完了。明日の今頃は・・・もう東京だ!!
なんだかなし崩し的に決まって無計画のまま進めてしまった旅でしたが実に充実した5日間(と少し)となりました。本場のパブで本場のエールを飲んだこと、電車に2時間揺られてカーディフまで行ったこと、同じく電車でオックスフォードまで行ったこと、大英博物館に4時間半もいたこと。日本にいたのではまず見ることのなかったミュージカルを見られたこと。そしてオーストラリアで断片的にしか感じられなかった本当の「イギリス文化」を体験できたこと。次にくるのがいつなのかは見当もつきませんが、シドニーやパースに続いて「何度でも訪れたい都市」がまた一つできてしまいました。