IAN-Gの無謀旅日記 〜ロンドンの年越し編〜

期間 2012年12月31日〜2013年1月4日
(行ってきた人、文、写真=IAN-G 同行者=いません)

↑ロンドンのクリスマスイルミネーションは松が明けるころまで続くそうです。どこもキレイ。

12月31日(月)
 身支度をする。時間は・・・まだ3時、午前のですよ。タクシーもまだ割増料金だ。ええ、別にコミケに行くわけではありません。日本国外への旅に出るのです。この時間から成田に行くとなればただの苦行だが幸い今回の旅のスタートは羽田空港。6時25分発のブリティッシュエアウェイズ8便でロンドンに向かうのだ。すでに出発が一時間遅れるというお知らせがきていたが、どちらにせよ箱崎を4時45分に出るリムジンバスに乗らないと間に合わない。朝も早よから、いやまだ夜中だというのに結構な数の人が待っている。高速道路も混んでいるわけもなく順調に進み羽田に到着。まず人の多さに驚かされた。どうせロンドン行きだけがぽつんとこの時間に出発するのだろうと思っていたらそれ以外にもソウルやシンガポールに行く便も同じ時間帯に出ているらしい。24時間やっている店もあって一年前の閑散とした早朝の成田とはえらい違いだ。さすがにこの時間だから出国も混雑なく進み、ビールを飲みながら搭乗を待つ。空はどんどん明るくなっていき、すっかり夜が明けた頃にようやく飛行機に乗り込む。羽田ほどの空港で、しかもB777が沖止めでタラップだ。乗って席に落ち着いたらいつ離陸したのかわからないほどに眠りこけてしまった。おかげで12時間は比較的早く過ぎてくれてロンドンに到着。

 相変わらず厳しい入国審査を経て、荷物を受け取り、いざ市内に向かうという時に問題が発生。何の気なしにヒースローエキスプレスのチケットを買うべくクレジットカードを券売機に差し込んだらICチップを読み取ってくれない。おい!このキャッシュレス社会のUKでクレジットカードが使えないのは致命的だ。まあ、あとで確認したらATMでキャッシングはできたので磁気部分は生きているようだから使えなくはないが、ほとんどの店はICチップの読み取る方式でしか使えない場合が多いし、オイスターカードの入金、列車の切符、そして自転車が使えない。特にこの「自転車が使えない」のがかなり痛い。しかし外は雨。この調子ならそれほど自転車にはお世話になることもないからいいかと無理やりに納得して地下鉄にて宿に向かう。

↑やっぱりロンドンといえば外せないのが地下鉄。2013年はなんと開業150周年(!)となります。

 予約したのはいつものTuneHotelだが、この数年でキングスクロスやパディントンなどロンドンのあちこちに新しくできていて、今回はその中からリバプールストリートを選んだ。駅から歩いて5〜6分、地理的に言えばむしろショアディッチやスピタルフィールズに近いくらいで、自分の好きなイーストエンドにどっぷりと浸かれるロケーションだ。駅についたのは1時半。チェックインの開始は3時。荷物をレフトラゲッジに預けるのもアレなので雨の中荷物を引きずりながらブリックレーン近くのパブでお楽しみのリアルエールを飲みつつ時間を潰してから宿に入った。ロンドナーを気取り傘もささずに町を歩き、雨ですっかり濡れてしまったのでシャワーを浴び、一眠りしてから再び街へ。

 冬のロンドンは4時を過ぎればもう外は真っ暗。闇夜を照らすクリスマスのイルミネーションがまだまだ眩しいオックスフォードストリートに始まり、ピカデリー、チャイナタウン、ソーホーあたりを歩き回る。ただでさえ人通りの多いエリアだが、このあとの花火のおかげでさらに人が多い。晩飯を食べようとしてもレストランは満席か、空いていても予約でいっぱいのところばかり。実際自分が行こうと目星をつけていた店も予約なしでは入れなかった。

↑残念ながらこちらもスミスフィールドの方も入れませんでした。まあ、今回は縁がなかったということで。

中でも一番の行列だったのがステーキ屋で、この大都市ロンドンの心臓部に何軒もあるのにもかかわらず、そのどれもが店の外まで行列が出来上がっている。みんな年越し蕎麦感覚で食べるのだろうか。まあしかしこんなに行儀良く行列を作れる国民だなんて聞いてなかったぞ。さて、これでいつもの晩飯難民になってしまったが、UKにはパブ飯という心強い味方がいる。当然立錐の余地なしのところばかりだが、いつもシアターに行く前に飯を食べるパブなら広いのでその心配もない。フィッシュ&チップスをしのぎ、いまやUKの国民食になりつつあるチキンティッカマサラを食べて再び町歩きへ。
 しかし、花火が良く見えるエンバンクメントはすでに人がいっぱい、パブリックビューイングをやるトラファルガー広場にも人が集まりつつある。何とか頑張って新年の花火くらいは見たかったが、さすがに長旅の疲れが抜けないのでおとなしく帰ることにする。疲れに人ごみのダブルパンチはやっぱり避けたいもの。ただ、うまいこと12時前に起きられたのでテレビで花火を見てこれで2012年はおしまい。宿の廊下には酔っ払って帰ってきたであろうご機嫌な声が結構な時間まで響き渡っていた。

1月1日(火)
 寝るには寝たが何だか眠りがものすごく浅い。眠っているようでなられなかった感じだ。とりあえず日記を書いて空が明るくなるのを待って外に出る。

↑うっすら明けの明星が見えるイーストエンドから。初日の出はもうすぐ。

 元旦からロンドンは良く晴れている。腹も減ったので散歩ついでにとりあえず朝飯でもとイーストエンドから歩き始める。昨日の夜からずっと騒いでいたであろう人たちはたくさんいるのだが肝心の飯屋はどこも開いていない。そのほとんどが「1日は休業します」。UKでも元旦は祝日だから休みのところばかりなのだ。仕方なしにどこか開いていないかロンドンの街を縦横に歩き回る羽目になってしまった。イーストエンドはもとより朝早くから店がやっていることでおなじみのシティも、市場が開いていないから望み薄だがスミスフィールドもあたってみたが開いているのはオールナイトでやっていたクラブだけ。歩きに歩いて結局ソーホーで開いているカフェを一軒見つけてここでイングリッシュブレックファーストを食べてようやく腹が落ち着いた。
 この時点でもう時計の針は10時近く、観光客が多いエリアでも店が開く気配は全く感じられない。 そういうことなのでバスに乗って市内観光でもすることにする。しかしだからと言ってあの例の2階建てバスの屋根のないアレに乗るわけではない。もっといいものだ。それは何かというと昨年から新投入された新型ルートマスターだ。左右非対称のデザインをはじめ端々に未来を感じさせてくれるこのバス、運行されているのはたった一路線だけだがそういうことなら狙って乗ることができるからむしろ好都合だ。ケンジントンの街並みを楽しんでからバスの始発であるビクトリア駅で目的のバスがくるのをしばし待つ。

↑38番が新型ルートマスターの運行路線。ロンドンを東西に横断するので普通に市内を歩いていても意外に良く見かけます。

 3分ごとに出発する過密スケジュールの路線だがおそらく10台近くは旧車両を見送っただろう。ということは30分か、暇人だなぁ。ようやくお目当てのバスがやってきた。まだまだ珍しいのだろうか、自分のようにこれがくるのを待っていた人も自分だけではなかった。早速オイスターカードを読み取り機にかざし後部の階段を上って観光客を気取り2階の最前列に陣取る。走るルートは市内の中心部を通り東部郊外ハックニーまで行くルート。走り始めるととにかく動きがスムーズ、最新のハイブリッドエンジンを積んでいるのでバス特有のけたたましいエンジン音もアイドリング時の振動もなく実に快適だ。青空が気持ちいいハイドパークの脇を通り、新年のパレードが始まっているピカデリーを過ぎ、シティからイズリントンへ抜けてしばらくするとハックニーに到着。イーストエンドのさらに外郭に位置する、東京で言うと葛飾区くらいのところだから、やっぱりどこも閉まっている店ばかりで、周辺を軽く歩いてから電車に乗る。最寄のハックニーセントラル駅はオーバーグラウンドの駅なので、これに乗って、ここなら少しは開いている店があるのではないかというかすかな希望を胸にカムデンへ向かうことにする。今日はどこに行きたいという以前に町が動いているところを探すのが最優先だ。

↑ハックニーの町並み。パブは開いておらず。残念。

 カムデンロードの駅に着き、少し歩いてカムデンの中心部へ。ここは観光客も地元の人も集まるところだから期待通り街が動いていた。パブも開いている店の方が多い。まずは乾いた喉を氷をいっぱい入れたサイダーで潤してから昼飯にする。これもまた期待を裏切らず運河の近くにあるエスニック料理の屋台が元気に営業中でここで昼飯にタコスとインドカレーを一気呵成に食べる。こういうのが本場に劣らないクオリティで、しかも屋台で食べられるのがロンドンのいいところだ。そのあとようやくエールを一杯飲んで落ち着いてから日の入りまでここで過ごし一旦宿へ帰る。

↑カムデンは変わらず営業していましたが、やっぱりパブは開いてないところもありましたよ。それでも上出来。


 あまり良く寝られなかったから結構眠いのだがこのまま一眠りなんていったらすぐに起きられる保障はないのですぐに再び外へ。今日の晩飯はガイドブックにも紹介されていた料理のうまいパブ"Princess of shoreditch"(www.theprincessofshoreditch.com)へ。こういう料理にも力をいれているパブのことをガストロパブと言うそうだ。流通が止まる正月だからこの手の店は元旦は休みの店が多かったのだかここは通常通り営業していた。(サンデーメニューだったから通常営業とはいえないかも)ここで焼き加減抜群のローストビーフを特大サイズのヨークシャープディングと共に食べる。

↑見よ、このヨークシャープディングの大きさ。もちろん肉も申し分なし。いいサンデーローストに出会えました。

 まだまだ昼のタコスとカレーは消化し切れていなくかなり体が重いがそれでも大満足。少し腹ごなしのためにひと気の多いところを歩こうというわけで昨日に続きオックスフォードストリートにきた。ここくらいしか人通りの多いところってないのですよ。観光客は多いが店は閉まっているところがほとんどで、適当に切り上げてあとはうまくパブでエールを飲んで今日はおしまい。ああ疲れた。
1月2日(水)
 朝の6時には起きる。昨晩はよく眠れた。毎度のように日の出を待って行動開始。今日は遠出をする予定だ。毎回ロンドン来るたびに一日は地方都市に行くことにしているのだが、今回選んだのはケンブリッジ。オックスフォードと並ぶ学問の都である。電車が出るのはキングスクロス駅だ。お隣のセントパンクラスはユーロスターなどで何度か利用したがこちらは実は始めて。ショッピングカートが半分壁に埋まっている9と4分の3番線を見て朝飯を食べてからいざ出発。乗った列車はケンブリッジまでノンストップで行ってくれるそうだ。途中停まる駅がないから一時間もかからず到着してしまった。結構近いんだなぁ。

↑カレッジ、教会、ケム川。ケンブリッジの魅力はここに集約されます。あとパブも。

 空はどんより曇り。でもこの色がなんだかしっくりくる。早速市内中心部まで歩いて行く。この街のメインの見所は歴史のあるカレッジと同じく歴史ある教会群、そして何より市内を流れるケム川をパント船で巡ること。このうちパント船は昨日降った雨だろうか船が軒並み浸水したようになっていて開店休業状態。それでも観光客と見るや「パント船クルーズどうだ?」という客引きがやってくる。ま、あの船の状態を見て”Yes”という人は一時期のダニエル・ブライアンくらいなもんだろう(今は”No”だけど)。川沿いは歩くだけにとどめメインは町歩き。いい風景、建物、路地裏を次々とカメラに収めて行く。

↑この寒い中、桜がけなげに咲いていました。でもやっぱり桜は青空にこそ映えますね

街の中心部をあらかた歩いたところでお昼になったのでランチにすることにする。このケンブリッジにもガイドブックに載っている飯がうまいことで評判のパブがあり、そこに行くことにする。賑やかな中心部からは離れた住宅街の中にあるパブで注意深く探さないとうっかり通り過ぎてしまいそうなところだったが入ってみると昼飯を食べているグループにエールを飲みながら歓談する地元の人たちなど中の雰囲気は満点。リアルエールも種類が豊富だし、何よりも飯がうまい。パブ飯の王道、ステーキを食べたのだが、肉の焼き加減はもとより一緒についてくるチップスがとにかくうまい。チップスがうまいパブは他もすべてうまい。

 大満足して外に出ると雨が降っていた。BBCの天気予報では今日は雨が降らないはずだったのだが、冬のUKの天気は本当に安心できない。というわけで行動を町歩きからパブ巡りにスイッチ。どこもロンドンのような喧騒とは無縁で落ち着いた雰囲気の中でエールを飲める。昨日は寝不足もあって1パイントを3杯も飲めばフラフラだったが今日は結構いくらでもいける。やっりこうでないと。

 こんな感じでパブを6軒ほどはしごしたあたりで雨は止んだが同時に空はすっかり暗くなってしまったのでロンドンに戻ることにする。列車は頻発しているのか待つこともなくやってきた。車内は空いているしリラックスした状態でロンドンまでの1時間を過ごすことができた。
 ロンドンに帰り着く。今日はもうどこも通常営業なので晩飯さがしに困ることもない。向かったのはエンジェル。ここはエールも飯もうまいパブが狭い範囲に集まっているので行かない手はない。
 1軒目に入った"Duke of Cambridge"(www.dukeorganic.co.uk)は料理にオーガニック食材を使用しているパブで、エールもオーガニックという力の入れよう。ここではムール貝を注文。実に丁寧に作ってあってうまい。ただ量はそれほど多くなかったので二軒目の”Island Queen”(www.theislandqueenislington.co.uk)に移りここでも飯を食べる。こちらではやや軽めにシーザーサラダを注文。こちらもなかなかうまい。これで満腹になったので3軒目"Narrow Boat"(thenarrowboatpub.com)ではエールだけにしてゆっくりと飲み干す。運河沿いにあって夏はもっと気持ちいいんだろうなぁ。すっかり気持ちよくなってエンジェルをあとにする。時計の針は9時を超えていた。ちょうどいい時間だしいい気分なのでこれで宿に戻ることにする。実に充実した一日だった。


1月3日(木)
 ロンドンにくるのはもう7回目。さすがに一通りの場所は巡ってきたと思ってもまだまだ魅力的な所がいっぱいあるということを改めて感じることができた。
 朝起きてまず向かったのはブリクストン。ビクトリア線の終点でもあるここは駅周辺に広がるマーケットで知られている。それもけっこう朝早くからやっているらしい。露店はまだ設営中のとこがあったものの普通の店舗で商売している店はもう陳列棚に商品がずらっと並んでいていつでも準備万端のようだ。置いている品物が全くUKらしくないのは以前に訪れたシェパーズブッシュもダルストンも一緒だがその店の並び方の節操のなさ、これはむしろアジアの市場と言ってもいいくらい混沌としているのだ。少し歩いたら露店の方もぼちぼち営業を始めより活気に満ちてきた。他ではなかなか見ない調理道具なんかもここでは売られている。その活気をすっかり楽しんでブリクストンを後にする。

↑ブリクストンマーケットの万国旗は緑と黄色が多めでなんともエスニック。ロンドン屈指のマーケットタウンです。

 そのまま市内に帰ってもいいのだが少し遠回りしてオーバーグラウンドの新たに開業した区間に乗ってみる。クラパムハイストリートという新駅から乗ったのだが、おなじみの既存の施設の流用、もしくは再利用した駅でほんの数週間前に開業したとは思えないほど疲れた感じがすでに漂っている。自動改札もなくオイスターカードの読み取り機があるだけでにわかにこれが都市圏交通の一部なのかと思えてしまう。まあ、電車が時間通りにくるだけマシな方か。

↑11月に開業したばかりのCrapham High Street駅。こんな感じでまったく新しくない新駅がロンドンには結構あります。


終点は2駅先のクラパムジャンクション。さっきの閑散とした駅とは対象的にひっきりなしに電車がやってくる、いわく「ロンドンで最も忙しい駅」なのだそうだ。20近くあるプラットホームをひとまたぎする跨線橋のとにかく広くて長いこと。電車の頻発さでは負けない東京に住んでいる自分でもこの駅には圧倒された。ここからウォータールー経由で市内に戻り次の目的地へ。
 
 北部郊外のハムステッドへやってきた。すぐ近くにはロンドン最大の公園、ハムステッドヒースがあり自然と街並みが調和した街だ。そしてここにも有名なパブがあるというので軽く街を歩き回ってから昼飯を兼ねてここで一杯飲むことにする。元々のロケーションの良さに加えて年季の入った内装。これでエールがうまいとくれば評判がいいのもうなずける。頼んだ飯は鴨のロースト。これが絶妙の焼き加減で実にうまい。

↑ハムステッド随一のパブ”Holly Bush”。見つけにくいところにありますが、道に迷ってでも是非。

飯の後も再び街歩き。繁華街がそれほど広くはないのでさくっと見終えてハムステッドを後にする。この段階で午後の2時。パブで結構ゆっくりしてしまった。その後はマリルボンのスーパーでお土産探し。いつもはプライベートブランドの包装がきれいなセインズベリーだが、今回はもう少し高級にウェイトローズで。オリジナルブランドのおしゃれな調味料とクリスプスを買ってコレでお土産は買い揃えた。そろそろフィナーレは近い。

 夜はもちろんウエストエンドでミュージカル。見たのは言うまでもなく”We Will Rock You”何回同じミュージカル見れば気が済むんだと言われそうだが、何度でも見ますよ。いつもより少し後ろよりの席で舞台全体が見渡せて今回もいい感じ。キャストが違うと結構印象も変わってくるもんだ。今日のお客さんは結構ノリが良く最後は皆立って手拍子なんかをしている。自分もその中に混じって大盛り上がり。最高のショーを見て宿に戻る。明日はもう東京か・・・
 
翌朝は早くに起きてスミスフィールドでいつもの肉屋式朝食を食べてから空港へ。朝から飲みっぱなしだったので飛行機が離陸してから機内食を食べたらすぐに夢の中。気づいたらもう日本上空だった。何の余韻もないまま日本に帰ってきてしまった。

もう7回目になるロンドンだけど、やっぱり「また行きたい」と結論が出たようで。

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