IAN-Gの無謀旅日記 〜ロンドン弾丸旅行編〜
期間 2017年5月3日〜2017年5月6日
(行ってきた人、文、写真=IAN-G 同行者=いません)
↑わかってはいたけれど・・・ドミニオンシアターからフレディがいなくなってしまいました。
5月3日(水)
夜が明けてすぐの5時半に起床。気持ちよく晴れている。このまま日本にいれば行楽日和だが、より北の方へ行くのでシャツにジャケットとやや季節が逆戻りしたような格好で外に出る。さすがにまだ暑くはない。今回は一人旅なので自分のペースで羽田までサクサクと足を進めて7時には到着。さすがはゴールデンウィークの真っ只中だけあって保安検査場が大混雑していてここでだいぶ待たされたら出国ゲートを越えたのは搭乗時間の1時間前を切っていた。特に用はないので両替だけしてビールの時間を捻出していい気分になったところでもう搭乗時間。ブリティッシュエアウェイズの機体は安定のB777。極めて安定した姿勢で離陸すると多少揺れがあった以外は全く問題なく順調に進む。前回使用して良かった蒸気アイマスクをつけてなんとか5時間ほどは眠ることに成功。それでもまだ寝足りないがまずまずということで機体は無事ヒースローに到着。
イミグレーションに列に並ぶまでは順調に行ったが、ただでさえ厳しいUKの入国審査がより厳しくなったのか列がなかなか進まない。家族単位、グループ単位での審査がまあとにかく時間がかかることかかること。その割にいざ自分の番になるとアッサリ終了。審査官のおっさんは滞在先を見て「随分オツなところに泊まるねぇ」(超意訳)と言っただけ。やっぱり日本のパスポートが強いのだろうか?ともあれ無事にUKに入国し市内まではいつも通りヒースローエクスプレスで。
パディントン(Paddington)の駅に降り立ちロンドンへの第一歩を踏みしめる。そしてまずは外せないルーティンということでさっそく駅近くのパブでリアルエールを1ptいただく。
ひとくち、うん、ぬるい。そして、うまい。
↑ここが毎回ルーティーンを行う「Pride of Paddington」。選定理由は「駅から外に出て一番近いパブ」だから
やっぱりこの国に来たからにはリアルエールは欠かせない。ルーティンも無事にすみ、宿に向かう。地下鉄も随分久しぶりだ。最後に来た時は運がいいと乗れたSストック車輌はハマースミス&シティ線では全車置き換えが完了していてこれが実に静かなのだ。ベイカーストリートをはじめとするいい味を出している駅を眺めつつファリンドン(Farringdon)で下車。
今回の宿はスミスフィールド。しかもこんな都心の真ん中で
パブの上の宿なのだ。たった6室しかないのに予約が取れたのは運がいいとしか言いようがない。通された部屋はスタイリッシュで実によくまとまっている。ベッドも快適、ソファもある。冷蔵庫にはクラフトビールがたくさんあるしコーヒセットもネスプレッソがある。ドバイのときのように出すもの出していい部屋なのは当然だが、今回のこのクオリティの高さはまさに大当たり。旅の汚れを落として一息ついてから再び出かけるが、もちろんその前に下のパブでもう1pt。
まずはピカデリーに向かう。ロンドンのハイブランドが大挙して揃うこの地区でワインを物色する。18世紀から続くワイン屋
「Berry bros and Rudd」 に行ってみた。思えばロンドンに来たらひたすらリアルエールだからワインなんて考えたこともなかった。まず外見からしてかなり年季の入った建物で、店内は今風のディスプレイの仕方をしているがさりげなく飾られている調度品はその店の歴史を充分に物語っている。ショップオリジナルブランドののワインなら一本20ポンドあたりからあるが、メインの価格帯は50ポンドあたりから。ちょっと贅沢に、という時に飲みたいワインが多彩に揃っている。フランス、イタリア、スペイン、オーストラリアにニュージーランド、あ、アメリカのワインはなかったな。ちなみにこのお店、ネット販売のみだが
日本支社もあってロンドンと同じセレクションが買えるので、店を出る時に店員さんに「日本に帰ったら買いますよ」と言って出て来た。ただの冷やかしではないということは主張しておかねば。
その次も買い物。ピカデリーを進んでピカデリーサーカスに出たところにあるスポーツ用品店
「Lillywhites」でクリケットシャツを買う。以前シドニーでオーストラリアチームのシャツを買ったら意外に使い勝手がよかったので今回はイングランドチームのシャツを手に入れようというわけだ。オーストラリア同様テスト用とODI用両方買ったがオーストラリアではlサイズで充分だったのにこちらはXXLでもちょうどいいくらい。イギリス人ってそんなに小柄だったか?
さらにラグビージャージも購入。今年は4年に一度のブリティッシュアンドアイリッシュライオンズ結成の年なので迷わずそれに決定。まずは最初に欲しいものを手に入れて一旦宿に戻り荷物を置いてから晩飯を食べに出かける。しかしここまで機内食を最後に何も食べてなく、その上でいきなり駆けつけ3杯をやってしまったので胃の調子が微妙な感じになって来ている。
↑ピカデリーサーカスの広告は現在工事中につき看板でした。完成したらどうなるのやら。
向かったのはオーバーグラウンドのホクストン。この駅の周辺はベトナム料理屋が密集していて、しかも美味しいところが多いというのでその中でも特に評判の高い店に入る。フォーをはじめ気軽に食べられるメニューが多いからか一人の客が多いのも助かる。ここでは辛いイカの唐揚げと牛全部のせフォーを注文。サイゴンから遠く離れたロンドンにもかかわらず、そのクオリティは本場顔負け。フォーがとにかくうまい。色々な旨味が複雑に絡み合ったスープなんてなかなか本場でもお目にかかれない代物。肉も薄切り肉をスープの熱さでレアにしたものに加えてよく煮込まれたバラ肉、センマイ、アキレス腱が入っていてまさに豪華版。これだけうまいのだから人気が出るのも頷ける。
↑こんな立派な食器でベトナム飯を食べるのもロンドンならでは。サイゴンだと基本プラスチックですから。
空っぽの胃に温かいスープと炭水化物が入って少しは落ち着いたところでオーバーグラウンドでホワイトチャペルに戻る。この周辺は毎回ストリートアートが楽しくてよく来るが今回はそれに加えてこの周辺にあるインド、イスラム系のスーパーでスパイスを探すことにする。しかし、どれも量が半端なく多い。正月にドバイで買ったカレー粉とカシミールチリパウダーがまだ使いきれていないのでスパイスはさすがにやめておこうとふと視線を移すとカレーの入れるのに雰囲気満点のバルチ鍋を見つけてこちらを即買い。しかも一枚2.5ポンドという安さ。2枚買ってしまった。とこの辺でさすがに胃がきつくなって来たので8時とまだ早いが宿に帰ることにする。シャワーを浴びて横になったら落ち着いて来たのでやっぱり疲れからくるものだと解釈して明日のこともあるし今日は早めに寝ることにする。
↑今回出会ったストリートアートの中で一番がこれ。時計が道路まで垂れているのがポイント。
5月4日(木)
昨日早めに寝たら目がさめるのまで早くなってしまった。もう一寝入り、といきたかったが、スミスフィールドの朝は早い。もう3時くらいからガサガサ仕事をしている。それでもなんとか6時まで寝続け7時に行動開始。
スミスフィールドといえば楽しみの一つが強烈なボリュームのロンドン肉屋式朝食だったのだが、それを出す市場内のパブが店を閉めてしまった。非常に残念だが次善策をちゃんと用意してある。それを求めて向かったのはイーストエンドの少し先、ベスナルグリーン。ここの
「Pellicci」というカフェのフルブレックファーストが有名でテレビにも出たことがあるという。駅からしばらく歩いて店を見つけいざ突入。
オシャレな店が幅を利かせているロンドンだが、ここはそれに逆らうように昔のままの佇まいを保っているという感じの店。テーブルの擦り切れ具合や壁のテカり具合、使用しているエスプレッソマシンの年季の入り方など古いパブにも通じる味がよく出ている。非常に有名な店らしいのだが、観光客の姿は自分以外おらず皆地元の人ばかり。皆メニューも見ないで自分流にカスタマイズした朝食をスラスラと言っている。そして店の人との会話も軽妙だが、悲しいかな8割がたわからない。本気のイギリス英語は時として英語に全く聞こえない。自分は一応存在するメニューを見せてもらってフルブレックファーストを注文。少しは地元民に近づこうとチップスを追加するカスタマイズを行なった。で、このブレックファーストが正直な作りで実にうまい。追加したチップスも切り方で手作り感がわかる。下手に脂っこくなく腹もだいぶ減っていたのでペロリと完食。これにコーヒーをつけても10ポンド以下と値段もお手頃。人気が出るはずだ。こういう店こそ長く残ってもらいたいものである。
↑Pellicciでのフル・ブレックファーストはロンドンのローカル気分を存分に味わせてくれます。店の雰囲気も良。
腹ごなしにその辺をブラブラしていたらちょうど中心部に向かうバスが来たので乗り込む。近くに学校があるのか制服姿の若者も多い。イーストエンドを抜け、シティに入ると通勤ラッシュ真っ只中で、まあとにかく自転車の多いこと。オーバーハングのないバスの二階から見ていると2、3人轢いているのではないかというくらいギリギリで止まる。トッテナムコートロードが終点だったのでそこで降りて通りを南下。なんとも久しぶりにトラファルガー広場に来た。
ベタな観光地だが、久しぶりのロンドンだ。改めて訪れなくてはなるまい。ここはさっきまでと打って変わって観光客だらけなので大手を振って写真を撮ってiPhoneで動画も撮ってお上りさんを満喫する。しばらくしたら時計の針は10時。ちょうどナショナルギャラリーが会館の時間を迎えたのでタダだし入ることにする。今回はほぼ街歩きになりそうなので少しアトラクションもこなしておこうというわけだ。広大な空間でたくさんの絵に囲まれるのはやっぱり気持ちいいものだ。目玉の展示物というとそこまで有名なものはないが、ダビンチ、ゴッホ、ベラスケスなど有名どころもしっかりあってなかなか粒ぞろいだ。小一時間ほど流し見して出てくる。
(左)トラファルガー広場のライオンをとったのもこれが初めてかも。
(右)ナショナルギャラリーは大英博物館と違って落ち着いた時間が過ごせます。
そのあとはホワイトホールをまっすぐに進みウェストミンスターブリッジに到着。つい最近ここで暴走自動車事故があったがそれもなかったかのように普段どおり観光客でいっぱい。曇り空ではなかなか絵にならないがビッグベンもしっかりカメラに抑えてからまた移動。ディストリクト線でタワーヒルへ。ロンドン塔やタワーブリッジといった古い建築物にシティホール、ガーキンビル、さらにはシャードも加わりものすごい勢いで新旧入り混じった風景が広がる。南岸についてからバスでバラまで。
昼もロンドンローカルフードで攻めることに。
「Manze」、そうパイアンドマッシュの店だ。ちょうどお昼になったのでどこからともなく人がわらわらと入っていく。まだ朝飯が腹に残っているのでパイはパスしてシチュードイール、ウナギにする。これも久しぶり。リカーの味は変わらない。マッシュポテトとともに一気呵成に食べ進み店を後にする。こういう店は長居は禁物だ。
↑Manzeの店内。ここで話されている英語も理解不能な時が多々あります。
またしても腹ごなしのために周辺をブラブラ。ちょうどよく自転車スタンドを見つけたので次の目的地、ロンドンブリッジまではこれに乗ることにする。歩くのはもちろん、バスでも意外に遠回りになるのだ。シティの真ん中を走るのは怖いがこの辺までくれば車も少なく安心して乗れる。このレンタルサイクルのアプリを入れておいたので近くのスタンドの位置も分かり返却も迷うことなく終了。いざ目的地のバラマーケットへ。
ハイセンスな食材がこれでもかと並ぶこの市場、たまのご馳走を作るときにこういうところがあるというのが羨ましい限りだ。市場好きとしては見て回り、写真を撮るだけでも十分に楽しめるがやっぱり買い物も。お土産調達に走る。肉製品を持ち込めないのは残念な限りだが、その中で煎り空豆、魚介の缶詰、ハーブティーにクラフトビールを手に入れる。屋台飯も充実していて、すでに昼飯を食べた身だが、その場で牡蠣を開けてくれる店を発見して即飛びつく。とりあえず3個。いや〜、生カキって本当に素晴らしいものですね。思わず日本にいるかみさんにLINEで写真を送ってしまった。
↑市場でものに囲まれるのはやっぱり楽しいです。しっかりカキも手に入れたことだし。
この数週間後にここでテロ事件が起きようとは思ってもみませんでした。
そしてマーケット向かいのパブでようやく今日の初ビール。今日は胃袋の中にこれでもかと詰まっているので問題ない。
移動がスムーズに進んでここまでの予定が早く終了したので荷物を置きに宿に帰ってサイダー一杯飲んでひと眠りする。四時過ぎには再び行動開始。
↑宿からSt Johnまで歩いて2分。今回はまさに千載一遇のチャンスでした。
スミスフィールドに宿を取れたということでついてはこの近所で肉屋式朝食と並んで行きたい店がある。それがファーガス・ヘンダーソン率いる
「St John」。内臓料理を得意とするモダンブリティッシュの店で、実は前回ブラジルからの帰りの時は予約までしておいて行く気満々だったのだが、かみさんが体調を崩してしまい泣く泣くキャンセルしたのだった。今回一人だしどうしようかと迷ったのだが、ちゃんとした食事でなくてもバースペースで軽くつまみが食べられるということで思い切って突入。何の飾り気もない白い空間だがなんだかそれが潔く居心地がいい。エール1ptとともに頼んだのはここの店の看板メニュー、骨髄のロースト。これを試してみたかったのだ。カニ用のスティックで骨をほじくりながら食べ進む。食べづらい、チマチマ食べるという酒のつまみにピッタリの条件を満たしている。パンにのせて食べても美味しくて、そのパンも自分のところで焼いているものでそれだけでも美味い。結果大満足。いつかちゃんとここで食事といきたいものだ。
↑ついにSt Johnの骨髄のローストとご対面。骨髄だけでなくパンもパセリのサラダも、うまいんです。
店を後にして地下鉄でロンドンを東西に横断する。目指すはハマースミス。キングスクロスからピカデリー線でトロトロ向かう車内ではフリーペーパーのLondon
Evening Standardを読む。これができると地元民になったみたいで嬉しい。
↑この日のEvening Standardの一面は今秋で公務から引退することを発表したエディンバラ公。
ハマースミスでディストリクト線に乗り換えひと駅のレイヴンズコートパーク(Ravens Court Park)駅で下車。ここからテムズ河岸に向かうとあるのがハマースミス地区随一のパブ
「Dove」。実に古ぼけた建物で店内もクラシックパブそのもの。パブのすぐ脇にはこの建物にまさにおあつらえ向きな年季の入ったMGーB。これだけでも嬉しいが、ここの最大の魅力は川沿いのバルコニー席でテムズ川をゆったり眺めながら一杯やる。川からの風もあって結構寒いがこの程度でひるんではいけない。ヴィクトリアエンバンクメントのような大きな堤防もなく自然に任せた流れで、四人乗りボートの練習なんかも見られる。人には教えたくない隠れ家に使うパブにしたいところだ。
↑ロンドンとは思えないくらい程ゆっくりとした時間が流れるDOVE。これで青空だったらもっといいでしょうね。
ここからの移動はまたしても自転車でブルックグリーンまで。ここにあるフィッシュ&チップスの店
「Kerbisher & Malt」で今日の晩飯とする。前回泊まったブルックグリーンホテルの隣の隣、ちっとも気づかなかった。フルブレックファースト、イール&マッシュときてフィッシュ&チップス。今日はザ・イギリス料理の食事となった。この店、ビールも自分のところで作っているらしく、そのペールエールをお供にする。飲んでもらうだけでなく揚げ衣にもビールは使うからそのこだわりもうなずける。出てきた一皿は期待通り、衣はサクサクのハドックと揚げたてホクホクのチップス。これならイギリス料理はマズイなんてはとても言えない。定石通りモルトビネガーをかけて食べ進む。よく考えたら今日は三食イモだ。大満足してまたしても腹ごなしに歩く。ハマースミスの駅に戻るのはアレなので反対側のシェパーズブッシュに向かう。シェパーズブッシュコモンをぐるりと回ってみる。この三角形の公園を囲むように街が展開し、ゴールドホークロード(Goldhawk
road)、シェパーズブッシュマーケット(Shephards Bush Market)、そしてセントラル線とオーバーグラウンドのシェパーズブッシュ(Shephards
Bush)と駅が3つもある。ロンドンの道にまた1つ詳しくなった。
↑シェパーズブッシュは都会過ぎずそこそこのひらけ具合が心地よいところ。すぐ近くにはウェストフィールドショッピングセンターがありますけどね。
ゴールドホークロードから地下鉄に乗ってシティ方面へ戻る。しかし、線路に人が入ったらしくしばらく足止めを食らう。なんとか動き始めたものの電車は遅れているのでベイカーストリートで降りて買い物通りのマリルボンハイストリートをウインドウショッピングを決め込みながらオックスフォードストリートまで歩き、セントラル線で宿の近くまで行く。最終的に部屋に帰り着いたのは9時過ぎ。シャワーを浴び、ベッドに大の字になり今日はもうそのまま終了。実に長い1日だった。
5月5日(金)
ここまでさあ寝よう、と決めて寝てもなかなか眠れないので昨晩はそのまま寝落ちをするに任せてみたら少しは長く眠ることができた。早速身支度して今日は宿の下で朝飯。パブの上の部屋というのはある意味B&Bなので一回くらいは食べておこう。店内入ると既に白衣姿のおっさんがビールを飲んでいる。この周辺でこの時間から開いていればそりゃそうだよな。この時間なのに席も予約されているところがある。というわけで自分は端っこで食べることに。フルブレックファーストだが、普通のに比べてソーセージが倍、さらに腎臓にステーキも付いてくる。これはまごうかたなきロンドン肉屋式朝食ではないか。さらに料金にはギネスが含まれていて、まさに市場で働く人たちのディナーになっている。量は当然多いが脂っこさはそれほどでもなくゆっくりではあるが完食。勇躍外に出る。
↑見た目それほどのボリュームではありませんが。このパンの下には肉が満ち満ちています。これを食べたら昼飯はあきらめましょう。
今回の滞在で初めての青空だ。こういう日がたまにはないと。まずはセントジョンストリートを上ってウェイトローズでお土産探し。グローサリーの種類が豊富で、日本ではなかなか買えないものも多い。クスクスくらいなら日本でも比較的容易に手に入るが、キヌアやブルグルとなるとそうはいかない。欲しいものが多くて目移りしてしまう。会計はセルフレジを初体験。割とサクサク進むし、無愛想な店員の顔色を伺うこともしなくていいので実は快適だ。
荷物を置いて、再び出発。まずはリバプールストリートまで行き、ここからオーバーグラウンドに乗り換える。この駅始発のオーバーグラウンドは他と違い、既存の車両をオーバーグラウンド色に塗っただけというなんともゆるい外観で内装も古ぼけている。3駅目のロンドンフィールドで下車。広い公園がなんとも気持ちいい。昼間はこうして明るくてランニングやサイクリングをしている人がいるからいいけど夜は少し怖いかも。
↑リバプールストリートからオーバーグラウンドで3駅のロンドンフィールズはなんとものどか。うちの地元に少し似ているかも。
ここの駅の高架下に構える
「London Fiealds Brewery」の直売所があって、しかも8時には開くというので行ってみたのだが、まだビールの用意ができていないんです、と肩透かしを食らう。朝はカフェらしい。最大の目的は逃したが、いい町の雰囲気を感じられたので良しとしよう。と、いうわけで今日は1日ロンドン市内のクラフトビールブリュワリーのタップルームを巡ってみるのだ。
予定していたルートでは次はオーバーグラウンドのハックニーウィック(Hackney Wick)という駅。しかしここで時間が空いてしまい昼開店のところまだ時間は10時過ぎ。こんな中心部から離れたところで時間が潰せるところ、としばし考えた結果、ストラトフォードのショッピングセンターが出てきたのでバスと電車を乗り継いでストラトフォード(Stratford)へ。ロンドンオリンピックのメイン会場となっただけに新しく小綺麗だ。センター内は一通りの店が揃っている。映画館もあるしフードコートも広いし、東部郊外、ドックランズあたりなら市内に出なくてもここであらかた済んでしまいそうだ。そう、ちょうど埼玉県民の池袋や千葉県民の錦糸町のような感じだ。一通り見て回ってスタバで休憩。アイスコーヒーが市民権を獲得していないところでもスタバに行けばコーヒーフラペチーノがある。やっぱり冷たいコーヒーはいいなぁ。
というところでお昼になったので改めてハックニーウィックに向かう。ストラトフォードからは電車で一駅。降りてびっくり、ホームからは古い煉瓦積みの廃工場のような建物しか見えない。そして駅から出てさらに驚愕。建物という建物どれも落書きでビッシリ埋め尽くされている。そして人気が恐ろしいほどに無い。なんというか「暴力が支配する世紀末」に迷い込んだ感じだ。
↑駅前もすぐ近くを流れるリー川沿いも落書きだらけ。これで人がいないのだからさすがにひるみます。
本当にこんなところにブリュワリーがあるのかと住所に向けて歩く。住所はクイーンズヤード(Queen's Yard)。ここには人もいてトラックやフォークリフトが動いている。どうも工業団地みたいなところらしい。恐る恐る入ってみると、確かに、あった。しかもこの敷地内に二軒。早速一軒目
「Howling Hops」からスタート。クラフトビールは大量生産では無いからいろいろなスタイルを少しずつ作るのが主流。ラガー、ペールエール、スタウトなど常時三〜四種類がスタンバイしている。そしてこだわりの現れか、アルコール度数が高いのも多く、早々に酔っ払ってしまうことのないように度数低めのところから攻める。工場直結で発酵タンクも丸見え、テーブルと椅子は限りなく簡素。パブとはまた違う雰囲気が心地いい。続いてそのお隣、
「Crate Brewery」へ。こちらはすぐ隣が運河という立地上外で飲むのも楽しい。お客さんの入りもけっこうなもので店内にはピザオーブンがあってちょうどお昼だからバンバン焼いているところだった。それにしてもこの人たち、一体どこから湧いてきたのだろう。本当にこの敷地の外に出ると人なんてほとんど歩いていないのに。
(左)Howling Hops。タンクにタップに簡素なテーブルとイス。これぞ正調タップルーム
(右)Crate Brewery。外の世界とは隔絶された感のあるスタイリッシュな内装。写真右奥がピザオーブン。
運河の向こうにはウエストハムユナイテッドの本拠地となったオリンピックスタジアムが見える。こんな場末のすぐ隣でオリンピックをやっていたのか。駅に戻ると駅名標の下に「東部ロンドンのものづくりの中心地はこちらから」と書かれていた。クイーンズヤードだけでなくこの周辺ほとんど工業団地というわけか。そりゃあ夜は人がいなくなるから落書きもし放題だな。
さらにオーバグラウンドを使って移動。ノースロンドン線を西に進みケンティッシュタウンウエスト(Kentish Town West)駅へ。ここの高架下にロンドンクラフトビールの代表格、
「Camden Town Brewery」がある。しかもここのタップルームは先月末にリニューアルしたばかり。明るい赤を基調とした店内はロンドンに似つかわしくないややアメリカンなデザインをしている。ここもすぐ隣をフォークリフトがぐんぐん動いている。もちろんここでは看板ブランドのHells
Lagar。安定のうまさだ。
↑「天国へ行く前に地獄を試してみないか?」ですって。こんな地獄なら大歓迎です。
とここまで三軒はしごして歩いて数分のケンティッシュタウン(Kentish Town)駅へ。と、ここでようやく昼飯。というより朝飯が全く消化されない。それでも食べるのは旅行の楽しみのうちと近くのパブ
「Oxford」でスターターの鴨のコンフィのコロッケを注文。ここは珍しくオープンキッチンでこういうところはクオリティも期待できる。そして期待通りのうまさ。付け合わせはレンズ豆のサラダ。メインが食べられないのは残念だがいいところを見つけた。
ケンティッシュタウンからはテムズリンクでファリンドンまで一本。第一ラウンドを終了して宿で休憩。
第二部はテムズ川南岸へ。とその前にヴィクトリア線を終点のブリクストン(Brixton)まで行く。マーケットタウンとして楽しいここにもブリュワリーはあるのだがここのは開くのが土曜日だけなので目的はそこではない。ここの駅前にブリクストンが生んだスーパースター、デビッド・ボウイの壁画があるらしいのだ。今回一緒に行けなかったボウイファンのかみさんにここの写真を撮っておかねばなるまい。ちょっとした観光スポットになっているようで記念撮影をする人が後を絶たない。自分も撮ってその場でLINEで送って差し上げた。
↑これがブリクストンのデビッド・ボウイの壁画。Twitterにアップしたら過去最高のいいねとリツイートをいただきました。Thank you David!!
さて、一仕事済んで、クラフトビール巡りを再開。ここからペカムへと向かうのだが、電車で行くと恐ろしく遠回りになる上にナショナルレールだから地下鉄ほど高頻度で来るわけでもない。直通で行けるバス路線を探して乗車。自分以外に観光客などいない車内は大変訛りの強い英語が飛び交っている。ちょうど目的地周辺が終点だったのでどこで降りるか緊張することもない。目的地の
「Brick Brewey」はペカムライ(Peckham Rye)駅の高架下。トタンの囲いにその辺の木を雑に組み上げたような椅子とテーブル。バーカウンターはコンテナを改造したものとまるでお祭り会場のような仮設感がたまらない。ここはつまみも売っていてタップルームとは別の一角でドラム缶を改造したバーベキューピットで肉をバンバン焼いている。是非とも食べてみたいのだがいかんせん腹がまだ減らない。後ろ髪引かれる思いでビールだけを飲み干し後にする。ああ悔しい。
↑Brick brewery。タップルームは仮設みたいだけど。ビールの味は本物。近くにこんなところあったらなぁ
駅まではすぐ。ペカムライからはオーバグラウンド→ジュビリー線を乗り継ぎバーモンジー(Bermondsey)へ。地球の歩き方でも特集が組まれるほどのホットスポットだ。ここには三軒もタップルームがあるのだ。
まずは一番駅から近い
「Ubrew」。ほぼ工場の中に申し訳程度にタップを背にしたカウンターがあるだけ。グラスもここはプラスチックのコップでハーフパイントのみ。その割に支払いはカードのみといういろいろな意味で独特なところだった。すぐ隣がラーメン屋というなんとも悩ましい立地だ。
↑Ubrew。見つけにくいところにある知る人ぞ知るタップルームという感じ。
週末にはマーケットが出るドルイドストリートにさらに二軒あるのだがそこにたどり着くまでにクラフトビールの専門ショップを見つけてしまい入ってみる。ドラフトだけでなく缶、瓶も充実していて、ここでも一杯飲むついでに持って帰るビールもラベルで選んで購入。写真に撮ってTwitterにあげたら速攻でこの店からいいねがきた。
その店の隣の隣、
「Anspach & Hobday」に続けて入る。さっきのUブリューもそうだがこのドルイドストリートは高架線に沿って伸びていてこの高架のアーチの隙間を工場スペースとしているのだ。ここだけでなく高架下はマイクロブリュワリーにとっては使い勝手のいいところなのだろう。レストランになっているところもあればセントジョンのパン工房になっているのもある。週末ということでどんどん人が入って来る。ここは三種類お試しセットもあったが、さすがにもうそこまで飲めない。ずっとハーフパイントだ。後一軒残っているし。
↑Anspach & Hobday。ここはすぐ向かいがパブ。やりにくそうだけど、お客さんでいっぱいでした。やっぱり作りたてはうまいということです。
最後は
「Southwark Breweing」。ここはリアルエールなのでここまで炭酸で腹が膨れていたところにも入るのがいい。細かい味は後半もうほとんど覚えていないがなんとか予定を完遂。少し歩いてロンドンブリッジまで。シャードの下も通ってしまった。
↑Southwark Brewingのハンドポンプ。やっぱりホップの香りが際立つIPAについつられてしまいます。
とここでようやく晩飯が食えそうな腹具合になってきた。もうお酒と一緒に、はいいので手っ取り早くその辺のケバブ屋でラムコフタを食べる。これで後はもう宿に帰るのみ。となったのだが肝心の地下鉄が動かない。かろうじてバンクの駅までは行ったがそこからさらに動かないので電車を降りて外に出て自転車を引っ張り出してスミスフィールドまで戻った。部屋に着いたらもう10時。シャワーを浴びて今日も寝落ち上等で大の字になった。
↑ロンドンではファーストフード感覚でケバブが楽しめるのがいいところ。マックなんてナンセンス。
5月6日(土)
3泊5日の強行軍もいよいよ最後の一日。羽田着の便だと朝が早いので、午後出発の成田着の便を選んだ。お昼過ぎくらいまでは行動できる。宿の下のパブも土曜日は開店が8時半で、それの時間に合わせてチェックアウトをする。なかなか貴重な体験をさせてもらった。一路パディントンまで。荷物をレフトラゲッジに預けて行動開始。この周辺で土曜日といえば行くのはもちろんポートベローマーケット。観光客で混雑するノッティングヒルゲート(Notting
Hill Gate)ではなくラドブロークグローブ(Ladbroke Grove)から入る。こちらの方が圧倒的に人が少ない。そもそもハマースミス&シティ線のパディントンから先なんて観光客はあまり使わないのだ。それにいきなりマーケットに突入するのではなく流れに逆らってゴルボーンロードに行くのだからこちらの方が都合がいいのだ。
そう。ゴルボーンロードといったら目的はもちろんトレリックタワー。せっかくロンドンに来たのだ。ビッグベンやタワーブリッジもいいが、これをカメラに収めておかないと。遠目に周りの風景と一緒に撮り始め徐々に近づいて単体で撮っていく。建物の近くに来ると何やらパトカーがたくさん。警察官に囲まれてオッサンが手錠をかけられてパトカーに乗せられている。おお、かつての悪の巣窟を彷彿とさせる現場を見させてもらった。
↑毎度おなじみトレリックタワー。このサイトに一度ならず訪れている人ならば説明は不要ですね。
そこから改めてポートベローマーケットを見て行く。朝飯がまだだったので何かないかと探していたがまだ準備中のところが多く、そんな中でファラフェル屋台がもう準備ができていたのでファラフェルラップにしてもらい食べる。肉にまみれた朝飯を2日も続けたのだ。ベジタリアンミールにしても文句はあるまい。
↑アンティークマーケットのイメージが強いポートベローマーケットですが、食べ物屋台も目白押し。ランチはストリートフードで決まり。
もう一つここに来た目的は
「Rough Trade」でレコード探し。今までブリックレーンの方ばかり行っていたがこちらが本店だそうで。家では再生できないがそれは後々買えばいいことだし、そうでなくともインテリアとして飾るくらいにはなる。かみさんが気に入ってくれるものといったらやっぱりデビッド・ボウイかな。と短絡的に考え探す。旅先でアナログ盤を探すようになるとは昔の自分からは想像つかない。選んだのは「Heros」。シングルカットではあるがアートワークはアルバムと同じ。やっぱりあの手の形が決め手となった。ついでにクイーンも物色。四人のポートレートとして秀逸な「Radio Gaga」のシングルと、さらにブライアンメイのソロアルバム、「Star Fleet Project」を見つけてこちらも購入。メイが自分の息子が好きだった「Star Fleet」というテレビ番組、日本で作られた「Xボンバー」という名前なのだが、このテーマソングを本気でカバーしたアルバムとなっている。さすがにCD化されていないのだ。こういうレアなものを見つける喜びというのは古本で掘り出し物を見つけるのと共通するところがある。いい買い物をした。
↑今回手に入れたレコードたち。自宅にて撮影しました。
そうこうしているうちに食べ物屋台が徐々に準備ができて来た。国際都市ロンドンにふさわしくアジア、中南米、アフリカの料理もあるし、この近くにスペイン語学校があるからかパエリア屋台がその場で大鍋で作られている。と、迷いに迷ったが、結局インドカレーにしてしまった。肉の誘惑に負けたと言っていい。ロンドンのインドカレーもまだ試していなかったからまあいいチャンスでもあった。今度は是非ブリックレーンのカレー屋に行ってみよう。一通り見終えてパブで休憩。今回旅してわかったのがロンドンのパブがクラフトビールを売りにしているところが増えたということ。それまでもリアルエールはたくさんの種類があってケグビールの電気サーバーの方はギネスにフォスターズにペローニあたりで見向きもしなかったがここにクラフトビールが入ってきた。店によってはタップルームのように壁からタップを出しているところも。企業努力を今まで以上にしないといけなくなっているようだ。前回の時にも薄々感じてはいたが、今回その流れがはっきりと見えた。そういえば今回はロンドンプライド一回も飲んでないな。フラーズのパブに遭遇しなかったから見てもいないや。
といったところでポートベローロードを後にする。ノッティングヒルゲートに抜けるのにわらわらと湧いてくる人波をかき分けて今回最後の地下鉄。今回はよく電車に乗った。25ポンドから始めたオイスターカードの残額は4.4ポンド。パディントンに戻り荷物を受け取ってヒースローエキスプレスで空港まで。ターミナル5でロンドン最後の食事はやっぱりシーフードバーで生カキ、それも1ダースをシャンパンとともに存分に堪能してから飛行機へ。成田行きの機材はB787。少しは快適に過ごせそうだ。