IAN-Gの無謀旅日記〜プラハ編〜

期間 2017年12月30日〜2018年1月3日
(行ってきた人、文、写真=IAN-G 同行者=かみさん)

↑プラハもドレスデンも街の風景に欠かせないのがトラム。気づいたらトラムばっかり撮ってました。


12月30日(土)
 正確には12月29日(金)の夜から。忘年会を終え、酔いをさましてから夜9時に羽田空港へ向かう。これで3年連続夜逃げ同然の出発だ。すでに出国のピークは過ぎて、チェックインの行列も保安検査の行列も少ない。早めに出国して軽く腹ごしらえをしてから搭乗。
 今回は直行便がないのでまずはフランクフルトまで飛んでそこからプラハに入る。ルフトハンザで予約したが、フランクフルトまではANA便となった。機材はB777-300ERと最新の部類の機材。エコノミークラスでも大きなモニターに後ろに倒れないシートで快適に過ごせる。事前の席予約ができず残念ながらカミさんとは離れ離れだが、かみさんは非常口席の窓側、自分は毎回お決まりの中央左通路側といい席を確保できた。しかも搭乗してみると自分の隣は誰もいない。コイツはラッキーだ。離陸前から目をつぶり、ベルト着用サインが消えたら早々に席を倒して寝ることにする。先週末に風邪を引いてしまい、なんとか喉がいがらっぽいだけくらいには直してきたが、これから長丁場なのでひたすら寝ることにした。「蒸気でアイマスク」をつけて、途中で目が覚めてもとにかく目を閉じる。音楽もかけない。おかげでヨーロッパ上空にさしかかり、朝食が出る時間まで眠りこけることに成功。12時間のロングフライトも体感時間は短めでひとまずフランクフルトに着陸。
 ここでイミグレーションを済ませ、プラハ行きの便まで3時間待機。冬のヨーロッパ、朝の5時は当然まだ漆黒の闇の中。開いたばかりの免税店を冷やかし、コーヒーブレイクを挟んでルフトハンザのA320に搭乗。こちらは飛行時間たったの40分で夜もすっかり明けたヴァーツラフ・ハヴェル国際空港に着陸した。チェコ航空のハブ空港ではあるが行き交う機体はナローボディ機ばかりで慎ましやかな感じだ。A380やB747-8が何機もいるフランクフルトと比べると小ぢんまりという言葉すら出てきてしまう。荷物はすぐに出てきて、ここでチェココルナに両替をして晴れてチェコに上陸。
 空港から市内へは電車が通っていないし、タクシーはぼったくりが多いという話を聞いたので、料金先払いのハイヤーを予約しておいた。出口に来るとすでに自分の名前が書かれたボードを持ったオッサンがお出迎え。ピッカピカの黒塗りのメルセデスでいざ市内へ。程なくして風景に路面電車が現れてさらに進むとプラハ城が姿を見せ、ブルダバ川を渡り、今回の宿があるプラハ現代建築の傑作、ダンシングハウスに到着した。

↑今回泊まった「ダンシングハウス・ホテル」のあるダンシングハウス。レセプションは小さいですが部屋はきれいで窓からの眺めもいいです。


 あわよくばすぐにチェックインしてしまおうとレセプションに行くも、部屋に入れるのは2時からということで荷物を預けて街に出る。宿の近くのブルダバ川沿いに毎週土曜日ファーマーズマーケットが開催されるということなのでまずはそこから見て回ることにする。
 多いのはなんといっても肉屋。うまそうなソーセージが山と積まれている。しかもスライスしたものを片手に試食を勧めてくる。冷やかしで食べても嫌な顔ひとつしない。全体的に売り手がフレンドリーなのだ。寒さゆえ飲み物の一番人気はグリューワインだが、ここで飲んでこの後に支障をきたすわけにもいかず大人しくコーヒーで暖をとる。ここで昼飯も食べてしまおうというわけで、パリパリに焼けたソーセージとポテトニョッキにベーコンとザウアークラウトを混ぜたものをいただく。あったかい固形物がじんわり胃に染み渡る。


↑眠気と寒さでだいぶ思考停止していましたが、今思えばここでもっとお土産買っておけばよかった!!と思うくらいうまそうなものであふれていたのですよ

さらにここで生カキも発見。内陸国ということで今回は食べないつもりでいたが、早々に見つけてしまい、寒さを物ともせずに2個ほど頂く。こういうところのカキなら鮮度には問題ないだろう。暖を取りつつ、歩き回ったものの元よりの寒さに加え川からの冷たい風にやられて寒さも限界に達しギリギリのところで宿にチェックイン。しばし暖をとり、ヒートテックにダウンジャケットにマフラーを着込み再び街へ。

↑細い道があるかと思えば急に広いところに出たり・・・旧市街の魅力ですな。

 寒さは和らいだものの今度は雨。弱い雨が降ったり止んだりの踏ん切りのつかない強さだ。半ばなし崩し的に旧市街を目指す。気になった店に気まぐれに入ってところどころ雨宿りをしながら旧市街広場へ。ただでさえ世界中の観光客が集まるここにこの時期はクリスマスマーケットがやっていてさらに観光客だらけ。みんなこれくらいの雨では怯んだりしないのだ。クリスマスマーケットでよく見るクリスマスグッズは少なく、そのほとんどが食べ物、飲み物の屋台。グリューワイン、ホットミード、この寒空の中飲む人がいるかわからないがビールもあちこちで売られている。一方食べ物はというと特に目立つのはトゥルデルニクという焼き菓子と豚のもも肉のバーベキュー。どちらも炭火+ロティサリーでじっくり焼かれている。見物ついでに暖まることも可能だ。

(左)修繕中の天文時計。正面から撮るのをあきらめざるを得ないほどの人だかり。
(右)旧市街広場はクリスマスマーケットで大賑わい。皆さん雨でも元気ですなぁ


 天文時計の正時の仕掛けを見てから一旦離脱。近くの地下鉄駅で切符を買わなくてはならない。今日もこれから地下鉄とトラムは乗るし、それ以降も必要なのだが、トラムの停留所には基本券売機はなく宿の近くの地下鉄駅では自動販売機は札を受け付けず、駅事務所にもticketと書かれているキオスクにも人はおらず、観光客の多いところならばキオスクにも人はいるだろうと期待して行ったが、キオスクには「ウチに交通機関のことに関しては聴かないように」という張り紙が。ここもダメかと諦めかけていたら、さすがは観光地。ここの券売機はクレジットカード対応だった。中国人が群がっていたので初めは気づかなかったのだ。というわけで今日使う分の切符に加え明日以降楽をするため3日券を購入。プラハでの課題を一つクリアすることができた。
 その後雨が少し強くなってきたので室内の見所を、と共産主義博物館を目指したが、持っていた地図が古かったか「移転しました」の非情なる張り紙が。移転先は旧市街広場を挟んで反対側なので今日はあきらめ、ヴァーツラフ広場へ。ここでもクリスマスマーケットがささやかながら行われている。なぜかロバにヤギに羊もいて餌をあげたりなどふれあいもできる。ここで「C&A」なるファストファッション系の店があったので帽子と手袋を調達。いざ被って外に出るとそれまでとは雲泥の差の温かさ。

↑イルミネーションがきれいなヴァーツラフ広場。建物もいい感じです。

 周辺を少し回ったところで地下鉄に乗って今日の晩飯を食べに出かける。今回は年末年始ということもあり、あたりをつけておいた店は全て予約をしておいた。今日はA線平和広場駅すぐにある“Vinohradisky Parliament” という店。少々早く着いてしまったがすぐに席に案内してくれた。まずはチェコビールで乾杯。ここまで酒を飲まないできたので格別のうまさだ。ずっと軽食ばかりで腹がだいぶ減っていたので、サラダと前菜をかみさんと二人でシェアして、各々スープとメインを注文。親切に量もグラムで明記しているので計算した上で食べられると踏んだのだが、ここで思わぬ落とし穴。このメニューに書かれた量、付け合わせは含まれておらずやってきたメインの鹿肉にはその4倍のボリュームはあろうかというクネドリーキが。そして計算通り肉まではちゃんと食べきったもののクネドリーキは一枚の半分を食べてギブアップ。ドイツ語圏ではクネーデルと呼ばれるこの小麦粉のダンプリングの恐怖はすでにオーストリアで経験したはずなのに二の轍を踏んでしまった。心の中ですまぬすまぬと謝りながらプラハでの最初の晩飯は終了。しかし、驚いたのはこれだけ満腹になっても、ビールも2杯飲んでも会計が一人3000円以下という安さ。観光地価格ではない場所ではあるがそれでも申し訳ないと思うほど。せめてチップだけでも弾まねば。帰りはすぐ目の前の平和広場からトラムに乗ってブルダバ川が見えてきたら降車。まだ8時だが明日も早いし今日はこれ終了。

↑想像してください。左の前菜を食べて6割がた満腹になったところにこのクネドリーキが来た時の「これ絶対食べきれない!!」という絶望感。

12月31日(日)
 昨日は早くも10時には寝てしまった。長旅の疲れもあるが、それ以上に今日は早起きなのだ。目覚ましが鳴ったのは朝の5時。いそいそと着替えて外に出る。向かうはプラハ本駅。どうやら宿の一番近くにあるトラムの停留所から一本で行けるそうなのだがさすがにこの時間だし、待たないと来ないのではないか、という心配をよそにすぐに来てくれた。駅には6時前には着いた。ここからユーロシティに乗ってチェコを離れる。目指すはドイツ、ドレスデン。6時21分発。チケットは事前にネットで購入しておいた。二等車でコンパートメントに遭遇することを避けるため、オープンサロンキャビンの一等車を買ってしまった。

↑プラハ本駅。コンコースは現代的ですが、右のような歴史あるホールも共存しています。

 プラハから遠くベルリンに行く車内は朝早くということと大晦日という日にちもあってガラガラ。非常にゆったりと座らせてもらう。暗闇の中列車は順調に進む。駅で買っておいたシュニッツェルのサンドイッチで朝食を済ませ1時間ほどすぎると空がだんだん白んで来て車窓からの風景も楽しめるようになってきた。霧がかかった山に川、煙突から煙を吐く家が連なる景勝ルートを通り、都市部に入ったところでドレスデン中央駅に到着した。

↑ドレスデン中央駅。頭端式ホームの両脇に高架の通過式ホームがある面白い設計です。

 外は細かい雨が降っている。それにも負けず早速市内中心部に向かうべくトラムのチケット買おうとサービスセンターに行くと今日はお休み。コンビニでさっきATMからおろして来た50ユーロ札を飴を買って崩し、自動券売機でなんとか一日券を手に入る。そして次はいざトラムに乗車と行きたいところだが、どの路線も15分に一本程度のスケジュールになっている。広大なネットワークを持つはずのドレスデンのトラムがどうしたことか?と停留所の掲示物を注意深く見てみると。大晦日ということで運行本数を大幅に減らしているようなのだ。特に事前に路線図を見て便の良さそうだった8番なんて午前中運休なのだ。結局3番のトラムに乗り、エルベ川沿いのシナゴーグ前の停留所で降りて旧市街を歩き始める。

↑エルベ川沿いは非常に贅沢な散歩道。夏はさぞいいところなのでしょうなぁ

 川沿いには歴史的建造物が連なって鎮座していて存在感は抜群。ブラブラ歩いて観光名所の一つ、「君主の行列」にまずは遭遇。陶器で出来た歴代の国王の肖像が壮観な作品で、奇抜なファッションの君主やカメラ目線の君主などを探しながら眺めると結構楽しい。さらに進むとドレスデンのアイコンであるツヴィンガー宮殿とゼンパーオーパーの前に着いた。この辺はさすがに観光客が多くガイドツアーの集団も。

(左)「君主の行列」。一番カメラ目線で俺が俺がの主張が強いのがアウグスト強王です。
(右)ゼンパーオーパー。隣のツヴィンガー宮殿とともに外せない観光名所。


 ここでいったん旧市街を離れ、橋を渡り新市街、ノイシュタットへ。8番トラムが通るはずのアウグストゥス橋を渡っていったのだが、絶賛修繕中で歩行者しか通れなかった。なるほどこれなら8番トラムが午前中運休でも仕方ないな。こちら側はトラムもそれなりに通っているのだが、店という店どこも閉まっているのだ。たまに開いているのはApotheke、つまり 薬屋。飯屋もほとんどが休みで開いているのはケバブ屋くらいなもの。ストリートアートが多く、個性的な建物が多い地区ではあるがここに長居するのは得策ではないというわけで旧市街に戻ることにする。ここでの収穫はトラムの写真と動画が取れたことと、旧東ドイツのアイコン、アンペルマンを発見できたことだった。

↑ドレスデンは旧東ドイツ。旧東ドイツといえばトラバント(しかもストレッチ!!)(左)とアンペルマン(右)

 と、ここでお昼になったので昼飯にする。ビアレストランで今回ドイツで食べたかった豚肉のタルタル、かみさんはコルドンブルーを注文。当然ビールも忘れてはいけない。豚の生肉と言う日本ではまず食べることはできないものということだけで大興奮。ビールも進み、ここで2パイントも飲んでしまった。
 地下にある店から外に出ると雨はすっかりやみ、ところどころ青空も見える。聖母教会の周辺では小規模だが屋台が並び肉の焼けるいい匂いを漂わせ、ストリートパフォーマーは管楽器四重奏でアイネ・クライネ・ナハトムジークを奏で半ば眠った街の中でも人が集まって来ている。

(左)ドレスデン復興のシンボル、聖母教会の前で美しい管楽器四重奏。演奏するほうも、聴くほうも気合と根性が必要です
(右)今回唯一のドレスデンの青空です。


しかし、この辺から酒が回り始め疲れが見えるようになってきた。風邪も抜け切らず、喉はいがらっぽいまま。朝、コンビニで買った飴が手放せない。さらにカメラの電池が予想外に早く切れてしまった。既に充電しておいたはずの予備の電池を入れても動かない。なんとかギリギリまで使い続けたが非情にも完全に動かなくなってしまい、以降は携帯で撮ることに。休み休み動きながら6時前にはドレスデン中央駅に戻る。

↑大みそかの夜はおぼろ月。あたりでは「すわ銃声か」と思うくらい花火がパンパン上がっています。

 市内ではろくに店が開いていないので駅構内で買い物をしていくことにする。スーパーは市内の店が開いていないからここに人が集中しているのかレジ待ちの列が長くなっている。土産物なら本屋でそれなり揃っているのでこちらでチョイス。見たことのないブランドのビールにアンペルマンの壁掛けなど結構いい買い物ができた。カミさんは大好きなデビッド・ボウイが表紙だっドイツ語版 GQをお買い上げ。ちなみに日本語版の表紙を調べたら去年解散した某アイドルグループ5人のうちの3人でした。「GQなら日本でも買えるよ。」と言う前に調べてよかった。
 そうして7時24分発のユーロシティに乗ってプラハに帰る。遠くハンブルクから来た列車で、この駅でドイツ国鉄の機関車は外されチェコ国鉄の機関車が連結される。
 ドレスデンで晩飯を食べなかった、というより腹が減らなかったので出発してすぐにここで晩飯。人生初の食堂車でディナーと洒落込む。実は行きの時点で帰りは食堂車に行こうと決めてはいたのだ。もし晩飯を食べても酒飲むだけでもいいや、という感じで。なんたって食堂車なんて今では希少ですからね。注文したのは仔牛肉のローストにレンズ豆の煮込みと本格的なメニューだ。これを金属のカトラリーで、綺麗にセットされたテーブルで、それでいて列車の中というこのシチュエーションだけで気分は最高。座席の方はパリピどもが大音量で音楽流して騒がしいので食堂車の方で長めに過ごす。

↑ユーロシティの食堂車で優雅に晩飯。食べたのは仔牛のローストとレンズ豆の煮込み

 プラハ本駅に着いたのは9時半。とりあえず来たトラムに乗ってブルダバ川まで来ると既にあちこちで花火が上がっている。地元の有志の方々による花火なので大きさも何もかもバラバラだが、とにかくどんどん打ち上げ続けている。電池残量の少なくなった携帯を酷使して花火を撮ったりトラムを撮ったり大忙し。宿に帰り始めても川沿い至る所で上がる。宿に着いても窓から見ることができる。すぐ目の前の橋の上からも上がる。そして年が明けるとさらにその勢いは止まらない。正直うるさいくらいだ。なんだかんだで3年連続で年越し花火を見られて大満足。この宿を選んで本当に良かった。あとはこの花火がいつまで続くか。果たしてちゃんと寝られるのだろうか?

↑ブルタバ川沿いでは行く年を惜しみ新年を迎える花火がそこかしこで。今年はタダで、それも間近で。

1月1日(月)
  さあ、2018年も華々しく幕を開けた。昨日は延々打ち上がる花火の音をBGMに眠ったが、一旦夜中に目を覚ました時にはその音も止み静寂の中寝入ってしまった。今日は少々遅めで6時半に起床。宿の朝飯は7時からなのでそれに合わせておきたのだがいざ朝食会場のレストランに行くと閉まっている。よくよく見るとエレベーターに今日の朝食は8時からになります、 と仕方なしに部屋で8時までウダウダしてからもう一回レストランに行って見てもやっぱり開いていないので、宿での朝飯は諦め外に出ることにする。
 今日最初の目的地はプラハ動物園。これは動物好きのカミさんたっての希望なのだ。プラハ7という市内中心部からは離れたところにあるが、幸い宿のすぐ前から乗れる17番のトラムで近くまでは行けて、そこからバスを乗り継いで動物園前まで。既にバスにはそれなりの数の人が乗っていて人気の高さを感じたが、ほとんどの人が開園前の動物園に入っていく。なんだ、従業員か。次にきたバスから降りて来た人たちはカメラ片手がほとんどでうちのかみさんを含め皆開園待ちきれない状況になったあたりでチケットオフィスが開いた。チケットを買わずに一直線に入っていく人も。こちらは年間パスポート保持者か!

↑動物園の開園待ちなんてもちろん生まれて初めて。正門前には動物版ウォーク・オブ・フェイムが。

 プラハ動物園は敷地面積が桁外れに広い。高低差もあり、高いところからはプラハの街並みも一望でき、さらにその景色を楽しみながら移動もできるリフトまであるくらいだ。その広さは動物たちにも恵まれた環境で、鳥や身軽な狼などを除けば金網で動物と隔てられていることもなく、ガラスの柵はあっても子供が誤って乗り越えない程度の高さしかない。非常に見る側に優しい作りとなっている。ちなみに「餌は与えてはいけません」としっかり書かれているのでご注意を。
 ここのところカワウソに激ハマり中のかみさんはインドネシアの動物ゾーンにいたコツメカワウソでいきなり興奮の最高潮。こちらまでつられて写真を撮ってしまった。かみさんによるとカワウソは開館直後が一番活動的だそうで。しかし、多くの動物はこの寒さと夜が明けたばかりということであまり活発ではなく、ゾウやキリンなどアフリカの動物は外にも出て来ていないが、そこは関連展示でカバー。ホッキョクグマやトナカイなど北の動物を見て楽しむ。本気で全部見て回ると1日では収まらないので適当にきりのいいところで動物園を離脱する。かみさんの喜んだ顔を見られたので来た甲斐はあったというものだ。

↑ホッキョクグマはともかくカンガルーがこの時間に活動しているとは!これくらい寒いくらいが動きやすいのか?

 お昼頃に市内中心部に戻りついにプラハ最大の観光名所カレル橋を渡ることにする。人の多さはどうしようもないので世界中の観光客も含めてのこの風景として写真を撮っていく。橋の上では似顔絵描きに、自撮り棒売り、お土産屋台などまさにザ・観光地だ。渡りきった先はマラー・ストラナ地区で旧市街地に負けないほどの賑やかさだ。狭い石畳の路地にもトラムが走りその歴史的な景観と相まって心躍る街並みだ。

↑カレル橋からマラーストラナはプラハ城に向かう目抜き通り。少々時間はかかりますが歩いていくのがやっぱり楽しい。

 と、ここでようやく本日最初の食事。かみさんはグーラッシュ&クネドリーキ。自分は豚のひさ肉のロースト。まあ、ドイツのアイスバインのようなものでドイツのものと違うのはハーフサイズができるのだ。肉の繊維がみっしりと詰まっていて皮もパリパリ。付け合わせにフライドポテトも頼んでちょっと多いかな?と思うくらいだったがなんだかんだで完食してしまった。
 腹が膨れたところで本日のメインイベント、チェコ人の心の故郷とも言われるプラハ城へ入る。旧市街広場もカレル橋も大した人だがここはまさに桁違い。早速チケットを購入。入場する場所の数でチケットの種類が分かれていて、今回は宮殿、聖ヴィート大聖堂、聖イジー教会、黄金小路に入れるBチケットで一枚250コルナ。早速見学に行くのだが、一番人気の聖ヴィート大聖堂は若冲なみに並んでいたのでまずはパス。聖イジー教会から見始め、次は黄金小路へ。ここは小路だけあってその広さに観光客の数が釣り合っていないが、中世の甲冑、ドレス、拷問具も展示されているし、ここに多く住んでいたとされる錬金術師の生活の場を再現したりと古い時代のヨーロッパの生活様式を垣間見ることができる。

↑現在も大統領府として使われているプラハ城。時の為政者は常にここからプラハを治めてきました。

 黄金小路を見終えたところで大聖堂に戻ると入場待ちは解消されていてすぐに入ることができた。プラハ、いやチェコの精神が凝縮されたような空間である。その中で最も目を引いたのはやっぱりアルフォンス・ムハ作のステンドグラス。線の繊細さ、流麗さ、色使い。いずれもステンドグラスの常識を打ち破るほどの美しさ。「スラブ叙事詩」などチェコ人の精神の独立をライフワークとしたムハの作品がこうしてチェコの象徴とも言える場所にあるのは感動ものである。
 大聖堂を出て最後に宮殿を見て回る。テレビで見たヴェルサイユ宮殿や、実際に目の当たりにしたシェーンブルン宮殿のような贅を尽くした豪華な宮殿ではないが一部が現在も大統領府として活用されているのだ。そちらの方がすごいと思う。
 全部見終えてマラーストラナに戻ったのは5時近く。帰りもカレル橋を渡ることにする。既に日はベトシーンの丘の向こうに沈み、街はライトアップされ、空には大きな満月。そして相変わらずの人の波。今日はすっかり観光客になってしまったが、ここでアクシデントが発生。橋の上から夜景を撮影していた時のこと。デジカメでの撮映をして、ついでだからiPhoneでも撮っておくかとデジカメを手放したら、ストラップが手にかかっておらず無情にもカメラは地面に落下。急いで拾い上げたもののレンズが動かない。正確には動こうとしても動かない。ここに来てなんとデジカメが壊れてしまった。以前タイはアユタヤで携帯電話を無くした時以来の一大事だ。残り1日、写真は全てiPhoneで撮るしかなくなってしまった。デジカメと同じ頻度でカメラを使うと電池が1日持たないというのに。他にも地図と経路確認などで頻繁に使わなければならいないのにこれは辛い。まあ、データだけは残っているのが不幸中の幸いか。
 気を取り直して旧市街に向かう。今日の晩飯はユダヤ人街の方にある店で旧市街広場と突っ切って向かう。しばらく歩いていると結構な量の人たちが同じ方向に歩いて行く。今日は6時からプラハ市主催の花火大会があるので皆ブルダバ川沿いを目指しているのだ。自分たちも飯屋の予約は7時だからまだ少し時間もあるし花火見物としゃれこむことにする。川沿いの道についたのは6時少し前。立ち止まってすぐに野太い音と共に上空に花火が打ち上がる。さすがオフィシャルの花火大会だ。昨日あちこち野放図に咲き乱れていた花火と違い計算されたレイアウトで空が綺麗に輝く。

↑さすがプラハ市公式の花火。形がそろってきれい。やっぱりタダで、こんなに間近で。

 約15分のショーを楽しんで改めて飯屋に向かう。今日の晩飯は”LOKAL Drouhaaa”という店。洗練されたオシャレビアホールのような店だ。6時半についたのだが、店の中は人でごった返している。店員さんに予約してあるんだけど言ってみると一旦は席に案内されるもその席にはまだ先客が。バーカウンターで飲みながら待ってて、と言われ、しばらくしてようやく席に案内される。品数は少ないものの魅力的なものが多い少数精鋭のメニューだ。前菜からメインというほど腹も減っていなかったし、おとといのクネドリーキの惨劇のような事が起きても不思議ではないので大人しく一皿にする。自分はアヒルのロースト。かみさんはマッシュルーム風味の鶏胸肉のグリルを注文。自分の方は適量だったがかみさんは少々物足りなかったようだ。しかし、料理は非常に高水準。丁寧な作りの料理が堅苦しくない雰囲気で食べられるのだから人気店なのも頷ける。

↑プラハのレストランで検索すると必ず出てくるほどの名店。店の外まで待っている人がいるくらいの盛況ぶり。

 帰りはカレル広場駅まで地下鉄で帰る。時間はまだ少し早いので宿の最上階にあるバーで飲み直し。今回の滞在でようやく美味しくビールと飲むことができた。明日もこの調子でいきたいものだ。
1月2日(火)
 今回の旅で一番遅い7時に目を覚ます。というよりここまで朝が早すぎだ。早速着替えて上階にある宿のレストランで朝飯。おきまりのビュッフェスタイルではあるが、品数、特にハムやソーセージ、チーズの種類が豊富だ。スクランブルエッグもふわふわだし、目玉焼きも黄身は半熟。朝からうまいもんを食べて満足して今日も行動開始。
 まずは裏手のカレル広場にあるスーパーへ。今日はお土産調達が主なミッションだ。プラハのスーパーはイギリス系のTesco、ドイツ系のBillaが幅を利かせているが、そのどちらでもないAlfredというスーパーに入る。生鮮食品はそれほど多くなく、肉にしても加工品が多い。パンは焼きたてが頻繁に補充されていて、この辺が今まで見て来たスーパーと違うところだ。ここではビールを始めスープの素やおかし、ストックキューブなどを購入した。荷物を宿におきすぐに再出発。

↑カレル広場は多くの系統が停まるのでトラムウォッチングに最適なところです。

 トラムでヴァーツラフ広場へ向かう。今回の旅で一番の青空で道の広さも相まって気持ちいい。そこから少し歩いてハヴェルスカー市場に行ってみる。市場という言葉につられて来ては見たが、店はほぼ全部お土産屋。それも旧市街やプラハ城の近くに行けば普通に買えるものばかり。まあ、そんな中でもスパイスを売っている店を発見し、ここでステーキシーズニングとBBQシーズニングを手に入れた。パプリカは既に手に入れたし、グーラッシュのスパイスミックスはそうそう使いきれないからまあ順当な選択だな。

↑ハヴェルスカー市場。風情はあるんですけど。たいていのものは旧市街でも買えます。ガイドブックでの扱いが小さいのも納得。

 周辺を少し歩き回ってからトラムに乗って移動。リパブリック広場近くにある”nase maso” という店で昼飯。ここは正確にはレストランではなく肉屋で、店内にイートインコーナーがあるというところなのだ。ちょうどお昼時ということもあって店内は結構混雑している。自分は和牛のタルタル、かみさんはハンバーガーを頼んだ。飲み物を一緒に頼んだが、ここではビールと水が壁から出ているタップから自分で注ぐとセルフサービスになっている。一杯飲んで落ち着いた頃に料理が完成。鮮度が命のタルタルは生肉感がそれほど強くなく、パンに乗っけて食べるとこれがうまい。ハンバーガーもかみさんに一口いただいたが、こちらの方がうまさの感動の度合いが半端ない。注文を受けてから肉を挽いているのではないかというほどの新鮮さであらびき肉をざっくり混ぜて焼いたパティは中身がピンク色。見た目のインパクトも強いし味も満点。非常にいい店に出会えた。デリカテッセンの方でビールも発見し購入。肉が買えたらもっといいのに。


↑中がピンク色のハンバーガーに壁から突き出たビールタップ。そして、種類豊富なにく、ニク、肉!!肉好きならここはマストですよ。

 再びヴァーツラフ広場へ戻る。今度はここから旧市街を目指す。初日に旧市街広場に向かう間にあたりをつけておいたショップでお土産を揃えて行く。木製品、ビール入りの化粧品、やたらプラハ市内で売っていたアブサンも買ってしまった。成果はそこそこ。町歩きも出来たし、休憩と称しておいしいクラフトビールも飲めたし。5時前に宿に戻って身軽になってから晩飯に行く。


↑買い物ついでに旧市街をそぞろ歩き。最後に少しだけ空がいい表情してくれました。

 明日が早いので予約は6時。平和広場の近くにある”Blue Wagon” という店。入ると他に客はおらず店の主人が親切に対応してくれる。頼んだのは自分が牛肉の軽い塩漬けとウサギのベーコン巻き。かみさんは野菜たっぷりのクリームスープと鹿肉のステーキ。それまで質実剛健という言葉が似合うチェコ料理が多かったが、ここはそれとは一線を画す綺麗で鮮やかな盛り付け。付け合わせの量も非常にバランスがいい。ここは最初から前菜+メインで食べてもらう感じのところらしい。これにはワインだな、と。ついてはここはチェコなのだからチェコワインをお勧めしてもらう。料理の邪魔をしない奥ゆかしい味わいの赤ワインでスイスイと飲んでしまった。

↑盛り付けもきれいですが、ゴボウやしめじなどチェコでは馴染みのないであろう食材も使われていてそれでいて完成度が高い。
 文句なしに今回のベストディナー


 我々が食べ終えたあたりでようやく他の客が来た。それも中国人の団体ツアー客が20人ほどで席の約半分を占領。まあ、我々が食べている真っ最中にこなくてよかった。食後酒を楽しみ勘定をすると店の主人が一枚の写真を見せてくれた。今より少々若い主人が給仕しているのはなんと日本の天皇陛下!その隣には当時のヴァーツラフ・ハヴェル大統領夫妻。2002年にチェコを訪問した時にプラハ城で行われた晩餐会の時の写真なのだそうだ。すごいなこのオッサン。それになんとも奇妙な縁を感じずにはいられない。いいものを食べていいお話も聞き大事な写真も見せていただいてお腹も心も満たされるとはこういうことをいうのだろう。

↑この店に限らず、Vinohrady地区は良質なレストランが多いようで。交通の便も悪くないのでオススメです。

 宿に帰る前にローカルな感じのスーパーを見つけたので入ってみる。大手のスーパーだと置いてあるパスタがバリラだったりとローカルなものが手に入りづらいのだがここでタリアテッレとシュペッツレ、多分チェコのサイダーを手に入れる。チェコといえば買っておきたいクネドリーキの素は見つけたが作り方がチェコ語だけでわからないので断念。8時半ごろ宿に帰り着く。シャワーを浴びたら荷物をパッキング。あーあ、今回の旅も終わっちゃうなぁ。明日は早いのでもう10時に寝る。
1月3日(水)
  目覚ましが鳴ったのは朝の4時。プラハを出る飛行機が6時50分だから仕方ない。身支度をして荷物を持って部屋を出る。レセプションには前日のうちに5時前にチェックアウトしたいといっておいたので驚かれもせず、しばらくしたらお迎えの車が到着。観光地とはいえこんな時間に来てもらってすまんねぇ。行きはメルセデスだったが、帰りはチェコが誇る自動車メーカー、シュコダ。漆黒の闇の中少々のトラックとトラムとすれ違い、ヴァーツラフ・ハヴェル国際空港に到着。

↑空港もなんだか質実剛健。目立つところにシュコダがディスプレイされていました。このエンブレム、好きなんですよねぇ

 朝早くからヨーロッパ域内を行く便が頻発しているのですでに空港は結構人が多い。チェックインをして荷物を預けさっさと出国。飯屋は空いているものの免税店は開いておらず大人しく搭乗時間まで座って待つ。フランクフルト行きのA320 は朝も早よから満席。
 やや雨が降り出しとところでプラハを飛び立った。フライト時間は1時間の予定だったが、上空の気流が悪く、高度を上げられず、機内サービスも中止という悪条件。ナローボディ機で乱気流の中を行くのは楽しいものではない。巡航速度も抑えて飛んだので到着は30分遅れ。12時間のフライトで30分遅れるのはいいが、1時間のフライトで30分遅れるのは気分的にもよろしくない。それでも飛行機は飛び続ける。着陸の瞬間CAさんの”Bravo!!”の掛け声と拍手が。そんなに悪条件だったのか!!

↑悪条件下のフライトで降りてくる人達も心なしかお疲れ気味。

 ようやくフランクフルトに着いて飛行機から降りると沖どめのタラップでターミナルまでバス移動。しかもバスの一番前に陣どれたので空港敷地内をたっぷり動画で撮ることができた。ここから3時間のトランジット。朝飯を食べ免税店でお土産を買い足し。あとはショップをぶらぶらして気づいたら搭乗時間。順調に離陸して欲しかったところだが、やっぱり上空の気流があまりよろしくないらしく離陸の順番待ちでここでも30分遅れてしまった。羽田までの便も着陸態勢に入ったところで乱気流に巻き込まれ派手に揺れてくれた。最後の最後まで波乱の旅でした。
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