IAN-Gの無謀旅日記 〜ベトナム再訪編〜

期間 2012年8月14日〜2012年8月17日
(行ってきた人、文、写真=IAN-G 同行者=いません)

↑雨季のベトナムは青空と雨が紙一重。絵になる入道雲も時として雨雲となって空を覆います。

8月14日(火)
 最初にベトナムに行ったのは2007年だからもう5年も前の話。この国にはまだまだやり残したことがある。前回は自分の旅のスタイルもまだ「観光客に見られたくない」を地で行くもので、カメラもノートPCも未装備だったから今のカメラ小僧ぶりとは隔世の感がある。あの時はまだ携帯電話で写真を撮っていたっけ。とにかく前回とは違う視点でこの国を楽しむつもりだ。

 さて出発である。お盆休み真っ只中の東京はどんより曇り空。どうやらこれから雨が降るらしい。成田までの道中は至って順調。チェックインを済ませビールを飲みながら時間をつぶしていると雨が降ってきた。5月に引き続きまたしても雨のスタートとなってしまいそうだ。雨が降ると離陸時の挙動が若干不安定になるからあまり好きではないが上空に出るまでの我慢だ。
 まずはANAのB767で香港までひとっ飛び。何でこんな行程なのかというと、ベトナム航空の直行便は6月末の段階でもほぼ満席だったので、ANAにあたったら直行便は午後発の夜着で午前発の便はこの香港経由しかなかったのだ。しかも香港からはアライアンスの壁を越えてベトナム航空だ。こんなフレキシブルな予約も受けてくれるのか、と驚いてしまった。4時間チョイのフライトはわりと快適なままで香港に到着した。遠くに見える山に張り付いたような高層ビルが香港らしさを演出してくれている。ここでは適当に免税店を冷やかして時間をつぶす。香港ドルは持っていないから酒も飲めやしない。

1時間ほどの待ち時間の後ホーチミン行き搭乗。滑走路が混雑していて少し遅れたが、アオザイ姿のCAのオネーサンを眺めているだけで2時間のフライトはあっという間に終了。タンソンニャット空港に着陸した。入国カードは廃止になったらしくパスポートを出すだけになったゆるいイミグレーションを通過し、荷物を手に入れていざホーチミン市内へ。
 ターミナルビルが新しくなってこの町もずいぶん変わったかなと思っていたがその感想はすぐに覆された。空港を出た瞬間から道路にあふれるバイクの群れ!コレだけは何も変わっていなかった。タクシーはその波をかき分け今回の宿へ。かねてからの念願であるサイゴンコロニアルホテルの代表格マジェスティックホテルに泊まることになっている。ロビーからして街中のけたたましい空間とは違う世界のようだ。通された部屋も期待にたがわず最新鋭の設備とレトロな調度品がうまく合わさっている。やっぱり宿も旅の楽しみの一つだ。ここのところ宿が大当たりしているのでそれだけでうれしい。

↑ドンコイ通りの入り口に立つマジェスティックホテル。ぜひサイゴンの定宿にしたいですな。

 すでに日はすっかり落ちてしまいこのまま一休み、なんていったらそのまま寝てしまいそうなのでとるものとりあえず町へ繰り出す。まず安定した晩飯をと思いベンタイン市場へ行ったらまだ設営中だったのでそのまま足を伸ばしてデタム通りへと行く。交差するブイビエン通りとともにベトナム版カオサン通りとも称されるここは欧米人向けのバーやバックパッカー向けの旅行会社がたくさんある。そして歩いているのはほとんど欧米人ばかりだ。こんなに魅力的な場所なのになぜだかこの界隈は前回は行かなかったのだ。ネオンサインがきらめく中でおなじみの小さいテーブルと小さいいすで営業している屋台もあり雰囲気は満点。

↑旅人が集まるブイビエン通り。道路脇は酒飲みで大盛況ですが、真ん中はやっぱりバイクがジャンジャン駆け抜けていきます。

その中のひとつでまずはフォーを食べて腹を落ち着かせる。あの低いいすに座るとベトナムの素が見えてくるようでなんだかうれしい。この後適当に入ったバーでビールを2本ほど空けてからベンタイン市場に戻る。5年前に比べて飲食店の数は減ってしまったが「とりあえずベトナム名物」を食べるならばここは無難なところだ。茹でタニシと牛肉炒め、そしてやっぱりコレ、とホビロンを頼み貪り食って満足してから宿に戻る。通いてからまだ数時間しかたっていないがすっかりホーチミン、いやサイゴンの空気に浸ってしまった。
8月15日(水)
 ホテルというものは基本的に時計がないかあっても申し訳程度なものが多い。昨日の長時間移動の疲れからか朝目がさめたら時計の針は7時を越えていた。遮光カーテンだから太陽の光も入ってこない、時間の感覚が狂ってしまう。まずは日記を書いてシャワーを浴びて朝飯を求めて外に出る。まあ当然の話だが暑い。しかし、同じくらいの暑さの東京から来たからか前回のようにそれだけでやられるなんてことはない。今朝の目的地は決まっているのでそこへ向かってひたすらに歩いていく。食べたのはコムタムという割れ米のご飯。スペアリブが乗ってきてボリューム満点だがご飯が軽いので朝食べるにはちょうどよいくらいだった。で、今日は市内をあてどなく徘徊。聖マリア教会、中央郵便局、戦争証拠博物館などの主だった観光地は前回行ったのでまさに目的のない街歩きだ。風任せでまず着いた先はタイビン市場。市場内は洋服をはじめとする日用品が売られ肉、魚、野菜などは市場の外。狭い通路は買い物客でいっぱい。その一角では底の浅いたらいに水を張って横になった状態でサバイバルしている魚がそれでも元気に体をばたつかせて周囲を水浸しにしている。はずれには飯屋もありみんな背中を丸めてフォーをすすっている。観光地化しているベンタイン市場よりも生活感にあふれる市場だ。そのあとは国営百貨店の上にあるコーヒー屋でブラックなのに十分甘いコーヒーを飲みながら涼む。歩いている時間とエアコンのあるところにいる時間がほぼイコールだがそれでもいいのだ。

↑タイビン市場。観光客慣れしているベンタイン市場よりもこういうすれていない地元の市場のほうが楽しいですな。

 昼飯はベトナム定食屋コムビンザンへ。こちらは普通に平日ということで昼休みの地元の人で大賑わい。注文は指差しでまったく問題なし。豚皮の煮物とイカを頼んでご飯とともに食い進む。暑いからといって食欲が減退するなんてことはない。どれも濃い味付けで必要以上にご飯が食べられてしまうのだ。

↑コムビンザンで地元の人に混じってランチ。大人数で行ったらもっとたくさんの種類のおかずを楽しめるんでしょうね。

 午後はまずレタイントン通りの通称「リトルトーキョー」を歩くところから。なるほど日本料理屋が軒を連ねている。現地駐在の日本人が足しげく通っているのだろう、表記されている日本語も割りと正確だ。しっかりと日本人街しているのだ。ほかの街角ではいたるところにある屋台がこの界隈ではほとんどいないのもベトナムらしくないと感じた理由かもしれない。ひと歩きしてまたしても汗びっしょりになったところでいよいよ待ってましたのビールタイム。地元の人御用達のビアホイへ突入することにする。ノンブランドのビールを安く提供してくれるこのビアホイ。数は少なくなってしまったそうだが残った数軒は地元の人や観光客に変わらず人気だそうだ。なにしろうれしいのはペットボトルに入れられたビールが1リットルで10000ドン(=40円くらい!)という破格の安さ。これだけでも行く価値は十分にある。味も想像していたよりちゃんとビールの体をなしている。ペットボトルから注ぐのに抵抗がある人もいそうだが、自分で作ったビールをペットボトルにつめている身にはそんなの至極当然のこと。とにかく大きな氷を浮かべてグイグイと飲んで、気分は最高。腹いっぱいになったところでいったん宿に帰りシャワーを浴びてリフレッシュ。

地元の人だらけでローカル感満点のビアホイ。UKの地方都市のパブにも通じる雰囲気がたまらなく好きです。

そのままいい気分で一眠りしてしまったら窓の外は雨が降っていた。すでに雨の峠は越えたのかたいした降りではないので予定通り晩飯を食べに外へ出る。この日の晩飯はサイゴンのローカルグルメの代表格、ヤギを食べることにした。鍋と焼肉のどちらも有名だが、一人鍋はせわしないし食べきれないかもしれないし、何よりさびしいので焼肉を選択。正肉と乳肉を一人前ずつ頼んで戦闘開始。自分のペースで肉が焼けるし、一緒についてくる野菜に入っていたオクラも焼くとうまいし、何より肉がとにかくうまい。一枚一枚かみしめながら食べる。もちろん焼肉のお供にはビール。サイゴンビールを3本空けてすっかり満腹になって店を後にする。
←役者はそろった。さあ、ヤギを焼こう。

雨はすっかりやんだのでこれだけではもったいないと昨日に引き続きブイビエン通りに行き飲み直し。ここでのつまみはタニシにサルボ貝と貝尽くし。ヤギで膨れた腹にはこれくらいのつまみがちょうどいいのだ。ビールもさらに3本飲んで満腹を通り越したところで宿に帰ることにする。帰り途中にベンタイン市場のナイトマーケットで軽くお土産を買って宿に帰りついたのは10時手前、暑い中帰ってきて、汗を流し、エアコンの効いた部屋でベッドでごろごろするのが何より至福の時だ。大して動いていないといわれればそうなのだがこれくらいがちょうどいい。よく眠れそうだ。
8月16日(木)
 サイゴンに着いて3日目。実は出発前からこの日の予定をどうしようか迷っていた。せっかくだからその辺の旅行会社が催行する日帰りツアーにでも参加しようかな、なんて具合である。しかし、結局はそれはやめにして相変わらず市内をブラブラすることにした。早起きは苦ではないが、時間に縛られるのも団体行動も苦手だそんなのもう何年もやっていないし。
 ま、それでも少し旅気分を味わいたいので朝飯にフォーを食べてから向かったのはベンタインのバスターミナル。1番バスに乗って向かうはチョロンである。2度目となると通る道も訳が分からないということもなく道中窓の外からの風景を楽しむことができる。5年前は工事箇所だらけだった道もきれいになり、エアコンが効いていることもあって実に快適だ。チョロンに着いてからはひたすらに歩き回る。卸の店ばっかりで飯屋ほかその他の店は屋台ばかりだが、町全体が市場の活気にあふれているため市場好きにはたまらない空間だ。伊達に「大きな市場」を名乗ってはいない。

↑道具街の印象が強いチョロンですが、少し歩けば食料品の青空市場もありました。狭くてもみんなバイクを降りません。

昼ごろまで歩き回り、バスターミナルに帰り着いたところで雲行きが怪しくなったかと思えば雨が一気に降ってきた。ちょうどよくやってきたバスに駆け込みサイゴン市内へ帰る。いつものバイクの群れも合羽を着てそれでもびしょぬれになってしまうほどの振りだったが、ベンタインにつくころにはその勢いはだいぶ収まっていた。それでもいつまた強くなるか気が抜けないのでこの近くで屋根のあるところ、目の前にあるベンタイン市場に入りついでにブンボーフエの昼飯を食べる。食べ終わって外に出ると雨はもうやんでいた。

 さて午後である。市内の狭い範囲を歩き回ることもないので一人ミステリーツアーを始めることにする。行き先も分からない路線バスにとりあえず乗って、適当なところで降りて歩き回るというもの。言葉の分からない国だからこそできる楽しみだ。乗ったのは4番バス。市内中心部を出て広い道に出ると見覚えのある道に出た。空港から市内に向かう道だ。あとでバス停を確認すると空港へ向かう125番バスとかなりの区間同じルートを通る路線のようだ。歩いている人は少ない。ましてやカメラ片手の観光客は皆無であるが、こんなところでもバイクの上で休憩しているおっちゃんはいて、しかも声をかけてくる。たぶんどこに行ってもこれからは逃れられないんだろうな。

↑バスを降りるとなんでもないけれど魅力的な風景が見られます。間違ってもお勧めはできませんけどね。

適当に歩いて市内中心部に帰り着いてからは違うバスに乗る。今度は27番。サイゴンのバスはどこまで乗っても一律4000ドンだから実に安い。今度は北西方向に向かう路線のようで道中ラウンドアバウトが多いからしっかり道を覚えておかないと迷ってしまう。こちらも適当なところで降りて歩き回る。生活用品を売っている店が多く結構にぎわっているようだ。案の定ラウンドアバウトのところで来た道を忘れてしまいひとくされ迷ってしまったが、まあ何度も言うように迷ったからこそ出会える風景というのもあるので、これはこれで面白かったかな、と。バスに乗ってベンタインに着いたら時計の針は4時近く。宿に帰って休憩する。

↑ミステリーバスツアー第2弾。並んでいるのは地元の人御用達の商店ばかり、路地裏もいい味出しています。

 夜はまたしてもブイビエン通りへ。何だかんだでここが一番飯には困らない。まずは通りのビアホイで駆けつけ3杯。続いて貝をつまみにもう一本。メインはベトナムスタイルのステーキを食べ、続いてフォーで中締め。最後はやっぱりうまいホビロンをつまみにしていっぱい飲んでいい気分になったところで今日はタクシーで宿まで帰る。宿で遣り残したことがひとつあるのだ。マジェスティックホテルの名物のひとつがサイゴン川を望むブリーズ・スカイバー。ベトナム戦争時はここが各国ジャーナリストのたまり場で情報交換の場でもあったところである。ここで酒を飲まなければせっかくここに泊まった意味もないというもの。ここで飲むのは開高健も愛飲したコニャックソーダ。夜景と気持ちいい川からの風が酒を何倍もうまいものにしてくれる。すっかり酔っ払って部屋に戻りシャワーを浴びてそのままベッドで大の字。明日はもう最終日か・・・
8月17日(金)
 東南アジアに旅行に行くときは最終日は時として苦行になる。宿をチェックアウトしたら夜飛行機に乗るまで炎天下に放り出されるからだ。今回もそうなることは予想できたので朝は宿でゆるく、できるだけ遅くまで過ごすことにする。部屋を出たのが10時近く。そこから夜8時までフリータイムだ。まずは朝飯にバインミーを買ってサイゴンの新しいランドマークであるビテクスコ・フィナンシャルタワーの下でかじりつく。フォーやブン、コムタムも朝飯としては軽い部類だがこのバインミーは食べ応えもボリュームも満点でしっかりと腹を満たしてくれる。そのままの勢いでまず向かったのはサイゴン川をはさんで向こう側。いつの間にやらこの河を渡す歩行者専用の橋ができていたので早速それで行ってみることにする。まあ、橋の向こう側はまだまだ工事中なのは大目に見よう。5年前に来たときのサイゴンの雰囲気がここではまだ味わうことができる。商店の時間の流れはゆるく、目抜き通りにはロッテリアがあってそれなりに開けているかと思えばその先の市場は未舗装路に青空屋台と自然体というかされるがままというか、この感じ、嫌いではないな。

↑発展著しいサイゴンですが、川ひとつ隔てただけでまだまだ昔ながらの姿も楽しめます。市場もローカル色いっぱい。

ひと時都会の喧騒を逃れたあとは昼も近くなってきたので昼飯を食べに出かける事にする。ネットや本で紹介されているシーフードの店がまちはずれにあるのでそこまでバスで行くことになるのだが、昨日の再現のように雨が降ってきた。雨宿りをしつつお目当てのバスが来るのを待ち、水溜りが池のようになっている道を進んでようやく到着。身がたっぷりのカニチャーハンと、カニ爪のタマリンド炒め、そして初体験のソフトシェルクラブとまさにカニ尽くし。これだけの量のカニ日本で食べたらいくらすることか・・・腹いっぱいになるまで食べて街歩きを再開。

↑少し雨が降っただけで巨大な水溜りがそこかしこにできるあたりはまだまだ発展途上。冠水ともいえますが。

雨のおかげでだいぶ涼しくなっているものの歩き回っていればやっぱり汗はかくもんだ。Tシャツもよりによってグレーのしか残っていなくて、遠目からでも汗ダルマっぷりがわかるほど。おまけに足が棒になる寸前まで歩いて時計を見ると1時間経ったか経たないかという具合で疲れは倍増。限界に達しようとしたところでいつもの心の叫び「この疲れをいやすにはよく冷えたビールしかない!」というわけで街歩きは切り上げておととい行ったビアホイ屋でよく冷えてうまくて安いビアホイを一気に流し込む。ああ、生き返る。ここでまたしても2リットルばかし飲んで最後の晩飯へ。今回の滞在で一番のお気に入りをもう一度食べて味を忘れないように、といったらやっぱりヤギしかない。今回は乳肉のみ中サイズで注文。雨で客足が少なかった2日前とは打って変わって大賑わい。その中マイペースで一人しみじみヤギを焼く。

↑この日もヤギ肉屋は大盛況。ビールがどんどん空いていきます

すっかり満足してお土産を少し買い足してサイゴンでの行動は終了。といってもまだ空港に行く予定まで一時間近くある。タクシー代を引いたら財布の中は10万ドン以下。ドンコイ通りに戻ってきたからもうこの界隈でこの金額では酒は飲めない。かといって今からブイビエン通りに行くという選択肢もない。結局最後の最後までサイゴンの町並みをしっかりと目に焼き付けながら歩き、ようやく荷物を受け取り空港へ。新しくできたタンソンニャット空港の国際線ターミナルはコンパクトな割りにだだっ広い。ショップの類は建物の外にバーガーキング(ついにベトナムにもアメリカ資本が!!もしくはロッテのつてか?)とコーヒー屋があるくらいであとは出国するまでほぼ何もなし。なのでさっさと出国を済ませ、免税店を冷やかしながらぶらつく。大汗かいた後にそのままエアコンの効いたところに来たからか、どうも体の調子が優れない。前回のときの二の舞にならなければいいのだが・・・

 飛行機搭乗前の悪い予感は大当たり。日本に帰ってきてからも疲れは抜けず、それでもせっかく帰ってきたのだからと地元の祭りに参加し、みこしを担いで水をかぶったらあっという間に前後不覚に。家に帰って熱を測ったら39度。どうもベトナム帰りは体調を崩していかん。祭りはキャンセルして、家でおとなしく寝たので仕事には穴が開かずに済みました。
IGMトップに戻る IGMtravelに戻る Copyright(c)Ian Gutheart all rights reserved