IAN-Gの無謀旅日記 〜ソウル編、その3〜

期間 2013年8月16日〜2013年8月17日
(行ってきた人、文、写真=IAN-G 同行者=いません)

↑路地裏にきらめくピンクのネオン。ディープなソウルはきらびやかな繁華街のすぐそばにあります。

8月16日(金)
 夏休みに入って3日目。ようやく出発の朝となった。珍しく旅以外の予定が入ってしまって、連続して出かけられるのが2日間のみとなってしまった。2日で行けるところなんて日本国内以外ではソウルしか無い。というわけで3度目のソウル行きは意外に早くやってきた。
  羽田空港は夏休みの割には人が少ない。世間的には夏休みの後半だからむしろもう帰ってくる人の方が多いのだろう。搭乗券は携帯電話にダウンロードしたからチェックインカウンターに並ぶこともなく、預ける荷物もなく、両替だけして朝飯を食べてから出国。羽田も利用するのはこれで4度目だからどこで朝飯を食べて、どこで一杯やるかのパターンができてきた。いつもの店でギネスを飲んでからソウル行きの便に乗り込む。
 過去2回はGWの初日という超ハイシーズンだから機材も近距離路線に似つかわしくないB777だったが、今回はB767。席はいつもの中央左通路側で離陸したかと思ったら2時間も経たずにソウルについてしまった。入国も乗客の数が少ないから大行列になることもなく通過。早速電車にてソウル市内へと移動する。
 今回最初に向かったのは梨泰院。前回も行ったが、その時は夜だったし飯も食べた後だったから大して何もしなかったので昼間に再訪することにした。相変わらずアジア以外の顔つきをした人たちが多く、中には軍服そのままで買い物する軍人さんもいるが、この時間帯目立ったのはアラブ系の人たちとスカーフをした女性。その人たちの流れについていくとそこにはモスクがあった。なるほどアメリカ的な店の他にトルコ料理屋やエジプト料理屋が多いのはそういう理由もあったのか。
 ひとくされあるいてから昼飯。梨泰院に来たのはもちろん飯にも目的があって。それが何かというと、「タコベル」。「え?」とか言わない!アメリカでおなじみのテクスメクス料理のチェーン店ではあるが、10年前シドニーに住んでいた時によく利用していたのだ。その後オーストラリアからは撤退してしまい、かといってアメリカに行く用なんてないから食べたくてもチャンスがなかったのだが、前回歩いた時に見つけて、「次行く時は絶対タコス食べるぞ!」と息巻いていたのである。その時はコルベンイと玉子焼きで腹一杯だったからなぁ。思えばファーストフードの店に旅先で入るなんていつ以来だろう。まずは氷たっぷりのコーラで生き返る。アメリカ式ファーストフードというわけで、ここはドリンクおかわり自由だからここぞとばかりに水分補給をする。ほどなくしてタコスも出来上がった。久しぶりに食べたタコスはうまいと同時に懐かしい味だった。

↑何もソウル来てまでタコス食べなくても、しかもチェーン店の・・・いや、日本にタコベルがないのがいけないんだ!

 腹も落ち着いたところで次の場所へ。気まぐれに梨泰院から2駅行った三角地で降りる。駅を出ると大通りに出たが、そこから細い路地に入ると地元の人御用達の飲食店やスーパーマーケットなんかが軒を連ねていた。観光地の飯屋といえば大抵日本語の解説書きも書いてあるのだがこの辺りの店はハングルのみで勝負している。こういう地元の人たちの生活が垣間見れる空間というのはやっぱり楽しい。暑さも忘れて歩き回ってしまった。
 汗もびっしょりかいたところで3時になったので宿にはいる。今回は何と明洞の駅から徒歩1分もかからないところにあるホテルを予約した。本来なら地下鉄の便がいい鐘路がいいのだがソウル行きが決まるのが遅かったのでその周辺の宿はあらかた埋まってしまっていたのだ。こんな観光地の真ん中だからやっぱり宿泊客は日本人が多い。同じ頃にチェックインしていた人たちもやぱりほとんどが日本人だった。部屋の清掃が間に合わないとのことで少し待たされたが、通された部屋はなかなか。早速シャワーを浴びてリフレッシュしてから休憩する。

↑なんだかんだで毎回来てます、明洞。宿も上の階だと喧騒も気になりません。

 少し日が傾いた5時ごろに晩飯と酒を求めて外に出る。まずはここはやっぱり外せない、広蔵市場へ。地元の人しかいかない感じの市場ではあるが鐘路という立地もあり観光客も結構来るのでここは一人飯が苦ではないのだ。一人で歩いていてもアジュマは食べておいきよ、と勧めてくる。ここでいつも行くユッケ屋は週末の夕方ということもありすでに行列ができていた。ただでさえ忙しい時に一人ではいるのも悪いな、ということで市場のメインストリートを埋め尽くす屋台でつまみを探す。まずはコッテギから始める。辛めの味付けがビールによく合う。2軒目は刺身。韓国では刺身といえばマグロよりも白身や貝が多く、個人的には好きである。こちらではソジュでチビチビやる。ここの刺身屋台のアジュマは話好きなのか常に手は動いているのだが口も動きっぱなしである。日本語も少しできるようで自分にも話を振ってきてくれる。やっぱり気になるのは「なんで一人なの?」ということらしい。

↑ソウルビギナーも気軽に屋台飯が楽しめる広蔵市場。肉が楽しめないなら、魚を食べればいいじゃない。

  一旦市場をあとにして腹ごなしに東大門方向へ歩き回ると焼き魚屋にコッチャン屋が並ぶ一角に出くわした。隠れた名店もあるのか、結構客の数も多い。コッチャンにはかなり心動いたが、店先でアジュマが焼いているのを見ていると出来上がった3人前はあろうかという量を一つの皿に載せて出していたところで、これは一人では食い切れない、とあきらめた。いいもん、二日前に大阪でホルモンたくさん食べてきたもん。
 地下鉄を乗り継いで次に行ったのは乙支路3街の駅。この周辺には大衆的な飲み屋が多くあるというので期待しながら歩き始める。駅を出てすぐの路地が明るいのでそこに入ってみると、今度は話し声が聞こえてきた。声の発信源がそれほど近くはないのに聞こえるということはかなり賑やかなはず。その声の聞こえる方へといくと通りいっぱいのテーブルでたくさんの人たちがビール片手にワイワイやっていた。この一角だけで200人近くいるはずである。ほとんどがグループで飲んでいるのだが、そこに混じってひとり酒のアジョシもいるので自分も飲むことにする。この界隈は生ビールがメインらしく、他の酒を飲んでいる人はいない。そうでなくてもこの暑さ、嫌でも生ビールに食指が伸びてしまう。これにノガリという干し魚が基本セットのようでコチュジャンをつけて食べると辛さとうまさでビールがいくらでもいけてしまう。しかも外で飲む開放感もあってさらにビールが進む。結局ここではジョッキ3杯飲んでしまった。ノガリと合わせても勘定は一万ウォン。安すぎる!

↑乙支路3街の名物飲み屋、マンソンホプは店の外まで人でいっぱい。今回はその隣のOBベオ(こちらも名店)で飲みました。

 非常にいい気分で明洞まで戻る。 ここまででかなり食べて飲んできたが、締めにやっぱり何かガツンと食べたいということで夜も遅くにオゴルゲタンを食べる。4月にきた時にも食べて、これで今年は風邪とは無縁だガッハッハ、と思っていたら7月に風邪を引いてしまったのである意味これはリベンジである。それまでの酒が抜けるほど大汗かいて綺麗に完食したので今度こそ大丈夫だろう。宿についたのは11時近く。シャワーを浴びてそのまま横になって気絶したように眠りに落ちた。
8月17日(土)
 いつの間にか眠ってしまって気がついたら朝の6時半。どんなに酔って寝てもこの時間にちゃんと起きられるところが素晴らしい。まあ昨日飲んだくらいでの量では二日酔いになることもない。いつも通り日記を書いてから朝飯。明洞は朝早くから観光客が動き始めるから食べる場所にも事欠かない。24時間やっているソルロンタンの店があるのでそこに決定。スープは起き抜けの体に染み込んでいくし、付け合わせのキムチも美味い。ただし肉の量は少なかったかな。前回行ったところがサービスよすぎただけかもしれない。
 食後にもう少しだけ宿でゴロゴロして、10時前には宿をチェックアウト。今日は荷物も預かってもらわない。背中に荷物をしょったまま夕方まで歩き回るのだ。まず向かったのは地下鉄の祭基洞という駅。地上に出るとそこからもう露店が道を埋め尽くしている。ここには地元の人御用達の京東市場があり、今回の目的地もここ。かなり広い市場のようで外周を形成している表通りにも八百屋、魚屋、肉屋などなど色々あるが適当な路地から内部に侵入するとさらにディープな空間に迷い込んだ。そう、表通りの店はあくまでさわり。あらゆるものが一体となった色の集合体が目を楽しませてくれる。やはり市場はカラフルであってナンボである。


↑市場でカラーセラピー。エステや汗蒸幕だけが韓国の癒しじゃないですよ。

 売っているものをより注視してみる。唐辛子が山となっている店はもはや見慣れた。うず高く積まれたゼンマイの水煮も存在感を出している。魚屋にはドジョウにウナギもいてアジョシが日本風に手際良くさばいている。そしてやっぱり驚かされたのは肉屋。牛豚鶏は当たり前だが、韓国特有の食材である”あの肉”も原型をとどめている程度に解体されて売られている。割と扱っている店も多いのだ。
 ものに囲まれ五感を刺激されまくっていい気分になったところでお昼になったので次の目的地の前に一旦鐘路で途中下車。昨日食べられなかったユッケを食べに広蔵市場へ。この時間のひとり酒の割合の高いこと。これなら気にならない。人気店でも暇な時間帯を狙えば簡単にはいれるのだ。ここでビールを一本飲んでリフレッシュする。

↑電車内で突如実演販売を始めるアジョシ。売っていたのは首に巻くひんやりタオル。買う人いるんだろうか、いるからやっているんだよなぁ。

 午後は郊外都市の趣もある永登浦へ。ここの在来市場もいい味出しているというらしいのでそれを見に行くことにする。すでに地下区間を出て電車は地上を走る。駅にはロッテ百貨店も入っていて実に賑やかなのだが、少し駅の近くを歩くと何人ものアジョシが飯とキムチだけの食事を立ったまま外で食べているところに遭遇。建物の中を除くとそこもアジョシでいっぱいで順番待ちで並んでいる人もいる。そんなに有名な店なのか?と思って店内をもう一度見渡すと、壁にはキリストの絵。キリスト教とご飯と行列を作るアジョシ。数日前大阪の某地区で見た光景によく似ている。ああ・・・いわゆる炊き出しってやつだな。ソウルにもドヤ街があるなんてものの本でも読んだが、どうやらここがそのようだ。
 さらにしばらく歩くと今度は道端のアジュマが道路越しに盛んに呼び込みをしてくる。何かと思いその先を見てみると・・・やけに赤とピンクを多用した内装をした前面ガラス張りの建物が何軒も連なっている。この手の建物ならアムステルダムやブリュッセルでお目にかかったことがある。ということは、今は昼間だから無人の所ばかりだが、夜になるとピンク色の照明の下、薄着のアガシがガラス越しで手招きでもしている・・・まさか。ちなみにこの通り、先に進むと新世界百貨店である。そんな健全な繁華街と目と鼻の先にそんな店があるはずがない。とりあえず実物を見ていないからここはグレーにして改めて市場に向かう。

↑洗濯物が干されている光景は実に生活観がありますが明らかに普通の家じゃない。夜はどうなっちゃうんでしょうか?

 ここの市場はとにかく毅然としている。観光客を相手にすることははなから頭にないようだ。もちろんそこがいいのは言うまでもない。どれくらいかというと京東市場で見つけた例の肉。ここでは頭がついたまま解体されている。首だけさりげなくディスプレイしているところもある。流石にこれにはひるんだ。写真も撮れんかった。でもこの肉を売っている人たちは興味本位で写真ばっかり撮るのを快く思ってない風なのでまあそれでいいのだ。他にもイカやヒラメを重ねてそのまま冷凍して四角くなっている塊をノミなどで剥がす実演ショーもやってくれている。向こうがショーと思ってやっているわけではないだろうが。
 ソウルも明洞や仁寺洞みたいなオシャレで洗練されたスポットだけではない、ということだけは存分に感じることができた。そのあと涼みに入ったロッテ百貨店とのいろんな面での温度差の違いと言ったら…色々考えつつソウル駅に戻る。
 出発まではもう少し時間があったので、腹も減ったことだし南大門まで足のを伸ばしカルグクスをたべる。ポジャンマチャが出てなかったから仕方がない。うどんのような外見だがもっちりしていてこま切れにしたすいとんのようでもある。せっかく辛くないスープを使っているのだから問答無用でそこにコチュジャンを入れないで欲しい。結局今回はコッテギとノガリくらいしか目新しいものを食べなかったなぁ。まあ、ソウルにきていきなりタコス食っているくらいだからそれも致し方なしか。そして東南アジアでもないのに汗がでっぱなしになる暑さなのでここでとうとういつもの「この疲れを癒すにはよく冷えたビールしかない!」が発動。というわけで、コンビニでビール買って一人酒盛り。とにかく体にしみる。
 というところで今回もタイムアップ。そのまま空港鉄道にのる。毎度お土産は金浦空港のロッテ免税店で買って、カフェでコーラ飲みながら日記を書くいつものパターンをこなして、羽田行きの飛行機に搭乗。帰りの飛行時間は2時間ちょい。二時間かからず行った行きの便は何だったのだろう。
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