IAN-Gの無謀旅日記 〜ソウル編、その5〜

期間 2016年8月15日〜2016年8月16日
(行ってきた人、文、写真=IAN-G 同行者=いません)

↑二人旅も楽しいですが、一人で何でもない路地裏を歩くのはやっぱり自分の旅の原点です。

8月15日(月)
 昨日は早く寝られたので朝の5時半にアラームが鳴ってもシャッキリと起きられた。昨日は寝つきも悪く、そのままカミさんに連れられて群馬まで行って蛇を見てきたこともありかなり疲れたが、その疲れもすっかり吹き飛び勇躍家を出る。寝ているカミさんは起こさないように。そう、今年の夏はカミさんが休みが取れなかったので久しぶりに一人旅なのだ。ひたすらに歩き倒し、飲み倒すつもりだ。
 羽田空港の人出はまあまあ。祝日が一つできても連休は分散されているようで保安検査場は行列というほどではないがなかなかの人の量というくらいである。チェックインはオンラインで済ませているし、搭乗券はスマホに入れたし、さっさと出国を済ませ、早速一杯飲んで落ち着く。朝飯はソウルに着いてからいっぱい食べたいので必要最小限に。搭乗時間までを淡々と過ごし、飛行機の席に落ち着いてからはさっさと寝てしまい気づいたら機内食のサービス。何度も言うがソウルに着いて色々食べたいのに機内食が「満腹弁当」なのは正直勘弁して欲しい。出されたものは残せない日本人(というよりむしろ自分)には結構苦行である。
 そんなこんなであっという間に金浦空港に着陸し入国。預け荷物はないからさっさと外に出ると出口で女子がたくさん出待ちしている。ものごっつい一眼レフを構えている人も。大方韓流スターがどこかから帰ってくるのだろう。それにしてもこんなのに遭遇するのなんて初めてだ。何も悪いことはしていないのだが自分が出てきて出待ちの集団に一斉に舌打ちをされている感じで泣けばいいのか怒っていいのか。
 空港快速に乗ってソウル駅まで乗ってそのまま地下鉄を乗り継ぎ最初の目的地、乙支路4街で降りる。ソウル市内は雲は多いが青空で気温もぐんぐん上がっている。そしてすぐに気づいたのが街のあちこちに韓国国旗が掲げられている。はて、今日は何かあったっけかとカレンダーを見る。今日は8/15。そうだ、日本では終戦の日だが韓国では光復節、日本統治からの解放記念日だ。その辺の店にかかっているカレンダーを見ると今日は祝日のようだ。今更何か被害を被ることはないだろうがやりにくい日に来ちゃったなぁ。

↑写真に納まっているのはこんなもんですが実際はもっとたくさんの太極旗がソウル市内にあふれていました。

 まあ、気を取り直して街を歩く。まずは乾物市場で有名な中部市場。品揃え、陳列の仕方、全体の雰囲気まで築地の乾物屋そっくりだ。メインの通りは現代的なアーケードだが、少し外れると年季の入った味のある建物ばかり。近場では日除けでなかなかわからないが遠目に見れば絵になる市場である。

↑メインストリートはとてもきれいな中部市場。乾物市場なので道がビシャビシャ、なんてこともありません。

 ひとくされ見終わってから昼飯。この市場に面する五壮洞はかつては冷麺通りとして有名で、現在その数は少なくなったものの残っている店はいずれも名店でどの店も行列ができている。その中の一軒、店名はズバリ「五壮洞咸興冷麺」に決めて入ったがこちらも行列。しかし昼時ということもあり圧倒的な回転の速さですぐに座れ、エイの刺身が入ったフェネンミョンをいただく。真っ赤な外見に違わず辛いがエイの刺身は旨味と噛み応えが秀逸で、これにサービスで付いてくるユクス(肉スープ)を飲みながら食べ進むとあっという間に完食。のっけからいい店、いいひと皿に出会えた。ただ、量はそれほどでもなかったのでもう一軒あたりをつけていた店を目指して忠武路まで足を伸ばしたがこちらは祝日ということで残念ながらお休み。宿に向かうことにする。

↑パッと見病院にも見えますが、ここが五壮洞の誇る「五壮洞咸興冷麺」。だいぶお待ちが減ったころですが、まだ店の中で行列しています。

 この辺は地下鉄の駅が密集しているから意外に二駅くらいは余裕で歩けてしまい、乙支路にある今回の宿まで写真を撮りながらてくてく歩く。宿はロッテ系列のビジネスホテルである"Lotte city hotel moeyondong"。アメニティなどは最小限だが、シンプルにまとまった部屋は一晩泊まるにはちょうどいい。テレビをつけると当然オリンピックが放送されている。そして当然韓国代表の出てくる競技ばっかりだ。

↑乙支路からひとたび裏通りに入るとこんな古びた町工場がゴロゴロ。「漢江の奇跡」はこんなところから始まったのかもしれませんね。

 シャワーを浴びて一休みしてから明洞へ。明洞聖堂周辺が整備されてゴテゴテしたイメージが少し変わった。祝日ということもあり暑いのにもかかわらず人も多く、食べ物屋台も盛況のようで少し冷やかし、軽くつまんでから今日のメインイベントへ。

(左)やっとランドマークらしくなった明洞大聖堂。
(右)食べ物屋台が並ぶ一角。暑い日に一番助かるのはヒンヤリ凍ったたミネラルウォーター


 韓国の誇るエンターテイメント「NANTA」を見に行くのだ。チケットはネットで予約してありそのまま劇場へ。ビルの3階にあるシアターはそれほど大きくないがなんと1日3公演もするのだ。それだけお客さんが来るということだからこれは期待大だ。色々な道具を使いリズムを刻む、というと真っ先にSTOMPを連想するが使用するものが調理器具ということもあって小技はあまりなくのっけから大音響で叩きまくる。
しかもかなり客いじりをするようでセリフも無いのにコールアンドレスポンスは当たり前。出演者自ら客席に降りて客をステージにあげるなんてことも、と他人事のように見ていたら後半になってまた客を物色しにステージに降りると自分に向けてまっしぐらに進んできてされるがままにステージに上がる羽目に。お仕事は綿棒を叩いて餃子の皮を作ること。大勢の客の前に立つのは悪い気分ではないが何しろいきなりなので頭の中は真っ白。とにかく言われたとおりにして動き回りなんとかこなすことができた。そんなこともあって非常に記憶に残るショーとなった。通路側の席は連れて行かれる可能性が高いようで。

↑雑居ビルの3階に突如現れるNANTA専用劇場。各国からの観光客でいっぱいでした。

 一仕事終えて満足して晩飯に向かう。行き先は広蔵市場。日が傾いて少し涼しくなったのとテンションが上がっていたこともあり明洞から歩いて行ってしまった。相変わらずの活気でまずは刺身とビールでスタート。白身や貝に加えて今が時期のホヤもその場でさばいてくれた。そのあと間髪入れずユッケとビール。休日だから会社帰り、学校帰りの人がいないから相対的に観光客が多く、今まで来た時よりもどこも混雑が少なくすぐに座れる。

↑夜の広蔵市場は裸電球がまぶしい。明りに誘われるままに一杯行きましょうか。

 一休みして今度はサンナクチをマッコリとともに食べる。それまでこの市場ではサンナクチは見なかったが、欧米人が食べたがるからか刺身屋台や総合屋台だけでなく門外漢のユッケ屋でも出すようになっている。競争がないようにどこも一皿15000ウォンだ。
 ここまででかなり腹が膨れたが締めにもう一皿とカルグクス+マンドゥを食べるといよいよ腹がいっぱいに。市場もだいぶ店じまいが進んできたので宿に帰ることにする。さすがに歩きはもう嫌なので少々遠回りだけど地下鉄で。シャワーを浴びてしばし大の字になってからこの日記を書く。

↑ナクチを広げて見せるなどサービス精神も旺盛に。でもここだけは観光地になってほしくないなぁ。

 今日は色々と新鮮な体験ができた。さ、コンビニで買ってきたコルベンイをつまみにビールでも開けるか。
8月16日(火)
 6時に目を覚ます。今日の朝飯はもちろんソルロンタンなので早速、といきたいところだが、今日目的の「里門ソルロンタン」は8時開店なのでまだ時間がある。仕方なしに昨日飲みきれなかったビールを飲んでオリンピックでも見ながらゴロゴロとして、7時半頃におもむろに起きてシャワーを浴びて外に出る。太陽はまだ低く、日陰は風が吹くと気持ち良い。さらに爽やかな空気を求めて清渓川沿いを通って鐘閣まで。

↑早朝のさわやかな清渓川。10年前までここが暗渠だったとはねぇ。

件のお店はオフィス街の裏通り、駐車場に囲まれてポツンと建っていた。先客は二組、日本人のグループと朝からソジュを開けているアジョシが一人。早速特ソルロンタンを注文。キムチとカクテキを取り出し、まずはそのまま一口スープを飲んでからおもむろにネギを大量投入し、塩で味付け、しかし今回は少し強目に塩味がついてしまった。ま、今日これからたっぷり歩くことだし塩分補給だ!と食べ進む。よく煮込まれたスープの味も引き立ち一気に完食。塩味は自己責任というのはソルロンタンの弱点ではあるがそれでも満足。

↑ソルロンタンは毎回食べていますがここもやっぱり大当たり。ソルロンタンの名店はキムチもうまいんです。

 大汗かいて宿に戻り再びシャワーを浴びて完全に汗を引かせてから荷物をまとめて宿をチェックアウト。気温がグングン上がる中帰りの飛行機まで背中に荷物を背負っての道中だ。
 まず向かったのは仁寺洞。一番最初にソウルに来た時以来で絵に描いたような観光地だからそれ以降は来ていなかったが、今回ここに来た理由は仁寺洞の中ほどにあるキムチ博物館。これまでは江南にあったのだが移転してきたようだ。キムチの作り方の流れや乳酸菌の働きなどタッチパネルを駆使して分かりやすいのだが、建物の問題なのか、展示スペース自体はそれほど広くなく、その上細かい部屋に三階に渡っていて、なんというか個人所蔵を趣味で展示している小さな博物館みたいな感じ。国の誇りの食文化なのだからもっとドーンとやっても良いのではないかというのが正直な感想。ま、キムチの試食もちゃんとできるのでそこまで悪くは言わないでおこう。ただし、社会科見学の小学生が団体で来てしまい、もう居場所なしなので切り上げて外に出る。

↑左、仁寺洞。右楽園洞。やっぱり自分は右のほうが好きだなぁ

 しばし仁寺洞をぶらついてからそのすぐ隣の楽園洞へ。仁寺洞はおしゃれなオネーサンや各国観光客で賑わっているが、一歩楽園洞に足を踏み入れるといるのはアジョシばかり。いったいこの二つの世界を隔てているのは何かわからないがこちらの方が写真に収めがいのある風景であふれている。しばし歩き回ってから昼飯。
 韓国五回目にしてついにポシンタンを食べるのだ。ちょうど最後の伏日、末伏の今日は栄養のあるものを食べて暑さを乗り切る日。参鶏湯がポピュラーだが、ポシンタンも伏日に食べられる料理だ。ネットで調べてあたりをつけた店は表通りからも近く少しは入りやすい。しかし、外から中の様子は伺い知ることはできず、入ってみても窓は閉め切り、何の飾り気もない店でサラリーマンたちが昼飯を食べていた。アジュマアジョシばかりかと思いきや、意外に若いOLさんもいる。店の隅っこで特ポシンタンを注文しドキドキしながら待つ。やってきたのはグラグラに煮えたやや赤みのかかったスープ。スッカラでひとすくいすると、肉がもうゴロゴロ。皮の部分も入っている。早速食べ始める。肉は臭みもほとんどなくよく煮込んでいるのに煮崩れせず、しかも弾力があってそれでいて柔らかい。スープもほどよく辛く肉の旨みを邪魔しない。結果は見事に完食。賛否両論あるが少なくとも韓国からなくすには惜しい料理であるということだけは確か。ひっそりと存在し、知っている人だけが食べる、これくらいがちょうどいいとエアコンの前で風に吹かれなから思った。

↑このポシンタン屋は比較的表通りに近いところです。伏日はやっぱり稼ぎ時なんでしょうね。

 午後は電車で少し遠出。というより少し電車の中で涼みたいので鍾路三街から1号線に乗って清涼里まで行くことにする。ソウル駅を出た韓国国鉄の列車が最初に止まる駅ということでロッテ百貨店併設の巨大な駅が鎮座しているが。表通りには古めかしい商業雑居ビル、裏通りには個人商店が点在し、その奥は団地風の建物が。中心部のような華やかさはない、普段の生活の場のようだ。

↑清涼里までフラッと。ひらけてはいますが観光客はまずいません。でもこういう風景がいいんですよ。

在来市場もありフラフラ市場の中をめぐる。隣の巨大市場、京東市場とおそらく一体化しているのではないかというくらいどこまでも続いている。ここで目立ったのはチョッパル。縦半分に割られた頭やひっこぬかれたタン、面白いところではツルまでチョッパルジャンで煮込まれていてどれも良い照りを出しいている。許されるなら日本に持って帰りたいくらいだ。



↑市場でモノに囲まれるのは買わなくても楽しいもの。芸術的な陳列にも出会うことができます。

 物に囲まれて少しリフレッシュしたところで清涼里を後にして乙支路3街まで戻る。毎度おなじみ「この疲れを癒すにはよく冷えたビールしか無い」時間になったので、マンソンホプに入りよく冷えたビールをノガリと一緒にいただく。まだ客は数えるほどで、夜の喧騒とはまた違う雰囲気でしみじみビールを飲む。こうして少しばかりエネルギーをチャージして最後の目的地、南大門市場へ。言わずもがな靴下ショッピングだ。

↑夜になるとこのガラス戸が全開になるんです。ノガリだけでなくお通しが少し増えていました。

 着いた午後4時頃は屋台の数が多くなく、折しも降ってきたにわか雨もあり、出揃ったのはもう5時過ぎ。それまでの間に少ない中ですでに商売を行っている靴下屋台にあたりをつけ突撃開始。一軒あたり20足、それを四軒はしごしてうち二軒でオマケしてもらい、別に用意したカバンの中にはしめて88足の靴下が入った。相当な大荷物ではあるがおみやげであれこれ考えなくてすむのでこれはこれで楽だ。買い物を終え、本来ならタイミングよく出来てくるポジャンマチャで一杯といきたかったが、今日は出てこず。最後に肩透かしを食らってしまったところで時間いっぱい。

↑ポジャンマチャが出る曜日もどうやら決まっているようで。もしくはもっと夜が更けると出るのかな?

 ソウル駅に向かうのだが崇礼門のところで道を間違えるという痛恨のミスをしてしまい市庁に出てしまう。この時点ではどうせ隣の駅だからと歩くのをやめなかったが道路標識の通りに進むとこれがとんでもない遠回りの道で結局ソウル駅まで30分大荷物を持ったまま歩かされてしまった。こんなことになるならせめて市庁のところで地下鉄乗ればよかった。

↑右から左まで30分。なんでか知らないけれど長い道のりでした。

 すっかり消耗しきって空港鉄道に乗って金浦空港へむかう。行きと同様預ける手荷物はなし。さっさと出国して飛行機を待つ。待合時間の唯一の楽しみが免税品店を覗くことだがメインのロッテ免税店はリニューアル中ということもあり売り場がだいぶ縮小。買えそうなものは韓国海苔くらいでそれもとんでもない量買うことになってしまうので何も買わずに搭乗時間を迎えた。前回に引き続き台風が近づく中での帰りのフライト。結構揺れたがなんとか無事に羽田に着陸できた。さ、台風が本格的に暴れる前に家に着けるかな。
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