IAN-Gの無謀旅日記~シンガポール編、その2~

期間 2018年5月3日~2018年5月6日
(行ってきた人、文、写真=IAN-G 同行者=かみさん)


↑2009年訪問時、マーライオンの向かい側は工事現場でした。9年後の今、こうなっております。



5月3日(木)
 昨日からの雨が残り、6時前に目がさめると外は雨がしとしと。出発の日が雨なんて随分と珍しい。しかも雨足は結構強く、歩いて5分ほどの駅に行くのも傘無しでは厳しい。カミさんが用意してくれたカッパを着ていざ外へ。なんとか駅まで服は濡れずに済んだが、カバンはすっかり濡れてしまった。
 一度地下に入ってしまったので安心だが、大門でモノレールに乗り換えるのに外に出るのは嫌なので、今回は浅草線に乗り換えて、そのまま京急で羽田入りすることにした。ちなみに京急に乗るのは最後が思い出せないくらい昔の話。所要時間はモノレールで行くよりプラス10分ほど時間はかかるが地上には一歩も出ることなく羽田空港に到着。
 早速チェックインを済ませて出国。朝一番だが、ゴールデンウィークということで人の数は結構多い。待合ロビーのテレビで映されているのはちょうどこの時メンバーの不祥事があった某第一次産業系アイドルの謝罪会見。朝飯を食べて一杯飲んだらもう搭乗時間。前回のシンガポール行き以来のシンガポール航空だ。最新鋭の翼を惜しげもなく投入する航空会社だけにB777というありきたりな機体でも設備は最新。いろいろ試してみたいところだが、早起きに加えてすでに一杯飲んでしまったのでまずは心いくまで寝ることにする。最近気付いたのだが、後ろにもたれるのではなく枕を前に抱いて前かがみになると結構良い感じで眠れる。全体の半分以上の4時間眠ることができた。あとは機内食を食べてテレビプログラムを少し見たら機体はもうシンガポールの上空。徐々に地面が近づき、無事チャンギ空港に着陸した。
 広い広いターミナル3はイミグレーションの行列もなくスムーズに入国は完了。ここでシンガポールドルに両替して宿までは電車で向かう。タナ・メラ経由で東西線をブギスまで乗り、ここからダウンタウン線でひと駅のローチョーという駅。その次の駅がリトルインディア。そう、今回はリトルインディア地区に宿を取った。「Wunderlust」という宿の競争が激しいシンガポールでもひときわ個性派のデザイナーズホテルだ。ロフト付きの部屋で各部屋にテーマがあるらしく、通された部屋はジャングルをイメージしたかのような部屋で天井一面葉っぱに覆われている。事前情報では宇宙空間がテーマの部屋だったり、でっかいタイプライターがある部屋だったりともっとぶっ飛んだ部屋ばかり出て来たがそれに比べれば随分まともな部屋だ。ベッドの近くにコンセントが少ないのがネックだがまあ良いだろう。旅の疲れを軽く落として外へ。
 折からスコールに見舞われ建物の庇を伝って再びローチョーの駅まで行く。ここでIC乗車券のEZ linkを購入する。自分はすでに持っていたのだが、有効期限は最後の利用から5年ということですでに9年経ってしまったカードはもう使えなくなってしまい、結局自分も新しいのを購入。ダウンタウン線をまさにダウンタウン駅まで行く。
 向かったのはマリーナベイフィナンシャルタワーにある、地上33階とシンガポールで最も高いところにあるブリュワリーパブ「Level33」。入ってみるとすでに大盛況で空いている席が外の立ち席くらいだったが、ちょうど雨もやんできたので喜んで外に出る。立ったまま酒を飲むなんていうのはいくつものパブを巡ってきた身には特別なことではないのだ。マリーナベイが一望できる眺めが実に気持ちいい。じめっとした空気を洗い流してくれそうな爽やかさ溢れるアメリカンペールエールを頼み、空きっ腹にいきなりビールだけはいかんとチップスも注文。自分たちが来た時は外にはほかに人はいなかったが、しばらくするとわらわらと集まって来てあっという間に満席。人が少ないうちにいい眺めの席が取れて良かった。

↑高いところで飲む酒は回りが速いのでご注意を。大きな醸造器具を33階まで運ぶのも大変でしたでしょうなぁ


 一杯飲み干し、地上に降りてマーライオンを見に行く。まあ、こちらはもう3度目なのでサクッと見終える。最後に来た時はまだまだデジカメが記念撮影の主流だったが、今やスマホ+自撮り棒に取って代わられている。空のペットボトルをうまくマーライオンから噴き出す水に合わせるなどインスタ映えのする写真撮影に皆余念がない。

↑マーライオンほどの記念撮影スポットとなるとほかの人が映らないように撮るのだけでも一苦労。結果、他人の記念撮影ごとカメラに収めてしまいます。

 そうこうしているうちにあたりもそろそろ暗くなり始めたところで今夜の晩飯へ。これまでシンガポールで飯といったらホーカーばっかりだったが、カミさんと一緒なのでちゃんとした飯屋にも行くことに。選んだ場所はいきなり1番の話題スポット、マリーナベイサンズ。多種多様な料理が味わえる場所だがその中で選んだのはシーフード料理の「dbビストロ」。マリーナベイサンズの中に数多くあるセレブリティシェフのレストランの中のひとつで、決め手となったのはやっぱり生カキだった。日本ではオフシーズンだが海外に行けば年中食べられるところも多いのだ。

↑マリーナベイサンズから眺める夜景もなかなかのもの。モールも広々。


 隣接するモールの中にあって、雰囲気はそこそこカジュアル。Tシャツ短パンでなければ特に着るものにこだわることはない。頼んだのは自分はもちろん生カキ1ダースとリブアイステーキ。カミさんはマスのポケと鴨のコンフィ+カスレ。1ダースにフランス産、アイルランド産、アメリカはワシントン州産と3種類のカキが4個ずつ入っていて、それぞれ味わいが違う。カクテルソースも付いてくるが、基本はやっぱりレモンのみで。たまにタバスコで刺激的に。例によって終始口元が緩みっぱなしのようだった。
 すでにうまいビールを飲んだのでここはワインで。店員さんオススメのロゼシャンパンと肉料理に合わせたイタリアのヴァルポリチェッラ。カキだけでなくレアで焼かれた肉も申し分なく大満足。食べ終わった頃にはすでに10時近かったのでモール内を冷やかして、そのまま直結のベイフロント駅から電車に乗って宿に帰る。今日はひとまずシンガポールのアイコンを堪能した。

↑肉もカキも場所を問わず食べますが、ここのは格別でした。少々お値段が張るだけあります。



5月4日(金)
 大いに疲れていたが、目覚ましより1時間半も早く目が覚める。なんとか目をつぶって二度寝を決め込みたかったが結局あきらめテレビをつけて行動開始。七時過ぎには朝飯を求めて外に出る。シンガポールでは朝飯は当然ホーカーということになるが、リトルインディア周辺で朝から動いているところということでテッカセンターに向かう。すでに多くの店がやっていたがインド系の店はまだやっていないところも多く、マレー系中華のドライワンタンミーを食べる。カミさんはベジタリアンラクサ。ラクサにはエビがつきものだがベジタリアンミールなら安心だ。

↑早朝のテッカセンターのホーカー。客席を利用して仕込みをする人たちもちらほら。


 腹ごしらえを済ませて向かうはタクシー乗り場。今日は1日動物園巡りなのだ。8時半から開園するシンガポール動物園へ向かう。基本的に渋滞がほとんどないから幹線道路では100キロ以上で飛ばしてくれる。30分ほどで動物園に到着。事前にチケットは手に入れておいたのでそのまま入場。朝露に反射された陽の光がなんとも美しい。開園直後ということでまだ寝ぼけなまこの動物も多くそれほど活発ではないが、ここの目玉のホワイトタイガーを始め、ライオン、シロサイ、キリンにチーターなどなどを見ることができた。せっかくカメラも新調したことだしと結構撮ってしまった。

↑のんびりタイムのホワイトタイガーにライオン。どうやら皆さん「午後から本気出す」そうです。


 カミさんのお目当ては言うまでもなく激ハマり中のカワウソ。何しろプラハでもカワウソ見たさでプラハ動物園を開園待ちしたくらいだ。入った直後はまだ姿を現していなかったが、一通り回り終えて休憩しているところに出待ちをしていたカミさんから興奮気味にLINE通話がかかって来た。行ってみるとまあ愛らしいコツメカワウソがなんと5匹もいた。おっと、徐々にカミさんに洗脳されつつあるようで。入って一番最初のエリアにいるので自分たちの役割をわきまえているのか実にサービス精神が旺盛である。
 動物園は10時までいて、今度は隣接するリバーサファリへ。世界最大の淡水水族館という売り文句の割には一番の推しがパンダという感が否めないところだが、水槽のガラスの綺麗さだけを取っても展示のクオリティは高い。当然ここもカミさんのお目当てはカワウソ。しかもこちらにはアマゾン川流域にしか生息しない激レアなオオカワウソがいて、水のトンネル、水槽内、水面からと3つの異なるアングルで見られるものだからカミさんがなかなか動かない。おそらく他のすべての展示を見た時間よりオオカワウソを見ていた時間の方が長かったのではないかと思うくらいじっくりと観察していたと思う。自分は時折後から来る子供達に場所を譲ったりしながら、目を$マークにして動画を撮っておいた。

↑実は生まれて初めて生でパンダを見ました。まあ、笹を食べてばっかりですな。

↑カワウソファンのあこがれ、オオカワウソ。この動物がどれだけ貴重なのかを行く前から延々かみさんに聞かされてきました。

 結局リバーサファリを出たのは1時近くで、一旦市内中心部に戻る。昼飯もホーカーにすべくタクシーで直接中心部のマックスウェルフードセンターまで行ってもらった。地元の人にも観光客にも人気のホーカーセンターだけに昼休みは終わっている時間だが席の混雑具合は8割ほど。相席になるのは仕方がない。ローカルにならいポケットティッシュで席を確保して店を物色して行く。ここで一番有名な「天天海南雉飯」は脇の通路にまで伸びるほどの行列。一方で同じくらい有名な「阿仔海南雉飯」は空いていたのでこちらの海南雉飯を食べる。カミさんも一緒だ。オーストラリアに住んでいた時期に最初にはまったご飯で今まで旅行先で色々なものを食べてきたその原点という料理。いつ食べても感慨深い。

↑「阿仔海南雉飯」のチキンライス。たぶん「天天海南雉飯」のも同じ見た目かと。

 これだけでは足りなかったのでもう一つシンガポール名物のラクサを食べる。ココナッツミルクベースのピリ辛なスープがこの暑い気候にちょうどいい。カミさんも別腹とばかり菓子パンとカフェラテを買ってきた。いろんな種類の料理をお好みではしごするというホーカー飯の醍醐味がどうやらわかってきたようだ。

↑オシャレなコーヒー屋にクラフトビール屋。ホーカーにも新しい波がぐいぐいと押し寄せているようです。

 駅に向かいつつチャイナタウンを冷やかし、地下鉄でお隣のクラークキーまで。ここのリャンコートショッピングセンターにクラフトビールの店があるというのでここで恒例となりつつある地元ビール探しをする。ほかに客もおらず、店員のアンチャンが話しかけてくれたので、単刀直入に「シンガポールのクラフトビールありますか?」と質問。2つのブリュワリーの6種類のビールがあるというのでまとめてお買い上げ。目的を1つ果たして満足して荷物を置きに宿に戻る。
 ひと休みしてからリトルインディアのメインストリート、セラングーンロードを歩く。お土産店もあるし、携帯ショップも軒を連ねている。インドのプロクリケットリーグ、インディアンプレミアリーグの冠スポンサーであるVIVOのスマートフォンにも初めて遭遇した。そのまま一駅分くらい歩いてシンガポールのドンキホーテことムスタファセンターへ。以前は手荷物持ち込み禁止だったがその時よりも大きい肩掛けカバンを持ったまま入ることができた。これは規制緩和というものなのだろうか。

↑リトルインディアのストリートアート。ボリウッド映画の世界が楽しめます。

 店舗は広いが物がありすぎて狭い中、2階の食料品売り場へ。スパイス売り場でカレー粉を探すもさすがはリトルインディア。様々な料理に合わせたマサラは豊富なのだが、いわゆるカレー粉というのはないのだ。その中でいちばん汎用性の高そうなガラムマサラとよく作るタンドリーチキン用のマサラ、それにドバイで買ったのを使い切ってしまったのでカシミールチリパウダーと安かったピンクペッパーを購入。さらに一階でインドの音楽CDをジャケ買い。インド的合理主義なのかMP3形式の音楽ソフトも。ジャケットの中身がどんなものなのか分からないまま買ってしまった。家で聴くのが楽しみだ。相変わらず購入後はレジ袋を結束バンドで締めるという万引き対策をしていたが、締め方が緩く普通に外すことができた。これも規制緩和の一環なのだろうか?
 ムスタファセンターを後にして早めの晩飯を食べるべくニュートンへ。リトルインディアからならダウンタウン線で一本で行けるので便がいい。中心部から少し離れた場所にあり規模も大きく席にも困らない。当然ホーカーもよりどりみどり。以前来た時は鬱陶しかった客引きも今になってはこれくらいがいいかもと感じるようになった。カミさんはここでバターチキンカレーとナンを。自分はチキンとマトンのサテを。地元のクラフトビールをドラフトで売っているところもあるのでIPAを1パイント。ホーカーでビールといったらタイガーとカスバが相場だったが、時代は変わったもんだ。サクッと食べて。またしてもタクシーに乗る。
 
 本日の動物園巡りのクライマックス、ナイトサファリだ。日本からネットで予約したので入場は一番早い7時15分。着いたのは入場時間5分前とギリギリだった。入るとすでにトラムは大行列。パスして歩きで回ることに。

↑ええ、ナイトサファリです。実質今回のメインイベントなので写真も大きめです。

 真っ暗でありつつも薄明かりのライトが道を優しく照らしていて歩きでも難儀することはない。入り口から一番近い徒歩コースのフィッシングキャットトレイルを巡ってから途中で8時半からのクリーチャー・オブ・ナイト・ショーを見るために一旦離脱。観客の3割ほどを日本人が占め、もう3割をインド人が占めていた。ここにもカワウソは出てきて、ゴミを分別してゴミ箱に運ぶという芸を披露。しかもこれが並居る動物たちを抑えてトリなのだから恐れ入る。一体今日1日で何匹カワウソを見ただろう?もちろんそれだけではなくスナドリネコにワラビー、サーバルキャット、ハイエナ、ライオンなどなど闇の中目を凝らして結構な数の動物を発見できた。近くで頻繁に雷がゴロゴロと鳴っていたが雨に降られることもなくナイトサファリを後にしたのは10時。タクシーで宿に戻ったのが10時半。

↑ごみを分別するコツメカワウソ。カワウソ界ではどうやら有名だそうですよ。


 流石に6時にサテ10本食べただけなので腹が減ったので宿の近くのムスリム飯屋でマトンスープとチャパティの夜食を食べる。このスープがスパイスが効いていてまるでスープカレーのようだ。蒸し暑い空気もコリアンダーの爽やかな香りで吹き飛ばしてくれる。一緒にビールも、と行きたかったがムスリム飯屋なので当然酒はなく、近所にコンビニも無く、宿のバーも11時になり店じまいしてしまい、部屋のミニバーにも酒はないので、結局今日はたったビール1パイントしか飲んでいないという極めて健康的な1日を送ってしまった。リトルインディアで宿を取るというのはこういうことなのか!!でも炎天下の中沢山歩いたのでよく眠れそうだ。
5月5日(土)
  いつもならエアコンがガンガンに効いた部屋でも布団もかけず暑い暑いとゴロゴロと涼しいところを探しながら寝ているのに、酒を大して飲んでいないだけで寝る前に早くも布団をかぶる始末。しかし充分に疲れていたからぐっすりとよく眠れた。7時に起きて行動開始。
 今日の朝飯はチャイナタウンに行くことにする。チャイナタウンコンプレックスのホーカーで中華系メニューを物色。揚げた豚の腸入りのお粥をまずはすすり、胃の調子を整えてから豚スペアリブ入りのプロウンミーに移行。カミさんはアレルギーの心配のないベジタリアンミールを食べてからお土産調達の下調べとしてカヤトーストに挑戦。朝もはよから行列の絶えなかった「五十年代」という名前のこの店、ミシュランガイドにも載ったほどの店らしく、注文したカヤトーストもメニューの写真より若干パンが薄いくらいで味はなかなかのもの。食べ終えてからは腹ごなしにケオンサイクロードのショップハウスを見に行き、そしてまた駅に戻りリトルインディアへ。

(左)ここでも客席で仕込み中。ホーカーならではの風景ですな。
(右)ミシュラン掲載店の味を気軽に楽しめるのはシンガポールのいいところ。星付きとなると大変ですがね。


 またしてもテッカセンターだが今日はホーカーではなく2階のインド服フロアだ。普段着のシャツやパンツ、サリー、果てはハレの日のドレスまで豊富なバリエーションが揃っている。店によっては店先にミシンがありその場で縫製したりお直しもしてくれるようだ。カミさんも気に入った服が見つかったようで購入していた。 

↑テッカ・センターのインド服売り場。果たしてこれだけの量の服が実際にちゃんと売れているのかは不明。

 そのあとは一階の生鮮市場を一巡り。リトルインディアなのでマトン肉を扱う肉屋が多いことと、スパイス専門店があるのが特徴で、写真と動画を代わる代わる撮ってから外に出る。

↑スパイス屋の周りは別として、意外なほどにテッカ・センターはスパイスの香りがあまりしません。鼻が慣れてしまっただけかも。

 次の目的地は特に決めていなかったが、ファウンテン・オブ・ウェルスの風水の気にあやかろうとサンテックシティを目指す。 噴水を囲むショッピングモールはとにかく広く、入っているショップも東急ハンズにユニクロなど日本にいるのかシンガポールにいるのかわからないのでそそくさと流し見して地下にあるスーパーへ。ムスタファセンターよりも余裕のある店内でゆったりと買い物ができる。朝試してうまかったカヤトーストに使うカヤジャム、カップヌードルラクサ味、肉骨茶の素、腐竹、ギーなどなどお土産を買い込んで行く。ここでもシンガポールのクラフトビールを見つけてこれも購入。かさばるが軽いものがほとんどで持ち歩くのも比較的楽だ。
 買い物を終えるとお昼だったので同じ階にあったフードリパブリックで昼飯。マレー系の店を選び、牛肉グリルの定食を注文。筋がついたままの肉を焼くという豪快なのか大雑把なのかわからない代物でこれをナイフも無しで食べなくてはならない。自分は筋のある硬い肉は大好きなので大歓迎だがせめて次来るときにはナイフくらいは用意してほしいところである。
 昼飯を食べ終えてもう少しショッピングモールをぶらついてから移動。エスプラネード駅からシティホール駅まで地下道を通り、一駅先のラッフルズプレイスで下車。ボートキーに着いて、ここで昨日ほとんどできなかった「この疲れを癒すにはよく冷えたビールしかない」タイムへ。毎回足を運ぶイングリッシュパブ、「Penny Black」に今回もやってきた。その辺のおしゃれバーとは一線を画すビクトリア様式のパブで、シンガポールでは貴重な存在だ。ここですっかり日本では見なくなってしまったキルケニーをまず一気に流し込む。続いて喉をさらにリフレッシュさせるべくタイガーを注文。ああ、生き返る。テレビ画面ではAFLがやっていてしばらく観戦。首位争いをしているウエストコースト・イーグルスとポートアデレード・パワーの試合で終始イーグルスが優勢。パブでのスポーツ観戦は雰囲気も相まって楽しいもんだ。

↑南国の正調パブははるか昔住んでいたオーストラリアを思い出させてくれます。時間の流れがゆっくりと感じられます。

 いい気分になって一旦宿に帰って荷物を置いて再び外へ。この時点で午後の四時。今日は6時にアラブストリートで晩飯を予約してあるのでまずはそれに近いブギスに向かって歩く。露店が立ち並ぶモールを抜けるとブギスストリートへ。アーケード街にみちみちに店舗が詰まり、人の数もかなりのもの。煩雑さという点では中野ブロードウェイみたいな感じで非常に活気にあふれている。店舗の多くは洋服屋でチャイナタウンのようなオバチャンファッションではなく若者向けのオシャレショップも多い。なるほど、シンガポールの若者はこういうところで洋服を探すのだな。反対側の入り口まで歩いてアラブストリートの方へ。

(左)ブギスストリートの手前には占い屋台が多数。中には福袋の自動販売機なんてものも。
(右)ブギスストリート内部。シンガポールというよりバンコクやサイゴンに来たみたいな雑多な雰囲気。


 アラブ文化というものに興味を持ったのがドバイに行って以来だから過去二回のシンガポール旅行ではこの界隈は訪れたことがなかったのだ。メインのアラブストリートは生地屋やカーペット屋が多く、小物も売られていてお土産探しにもいい。一本隣のハジ・レーンはストリートアート爆発のレストランにはじまり、さらに進むとセンスのいいセレクトショップが軒を連ねる。さらにサルタンモスクに続く通りは道路脇にヤシの木が生えていてなんとも絵になる通りだ。流行りの言葉を使えばインスタ映えポイントが満載のエリアといえる。

↑サルタンモスクが実に絵になるアラブストリート界隈。実は周りは飲食店ばかりで客引きが結構うるさいです。。

 一通り歩いて回ったら6時になったので予約していたレストランに行く。サルタンモスク近くの「BeirutGrill」というレバノン料理の店で、道路の外まで席を出しているが予約の場合は落ち着いた店内に案内される。店内のテーブルは全て予約の札が立っていて、どうやら人気店のようだ。
 頼んだのはファラフェルも入ったペイストリーの盛り合わせとパセリとブルグルのサラダことタブーレ。そしてこの店のおすすめであるケバブ盛合せ。串に刺さったケバブがラックに吊るされてくるというここでもインスタ映え度満点の一皿だ。アラブ料理ということでまたしても酒が飲めないかと半ば諦めていたがここではアルコールもおいていた。考えてみればレバノンはイスラム教の国ではないから酒を飲むのだ。レバノンワインもあったがボトルだけだったので全部飲める自信はないから大人しくビールで。出てきた料理はどれも美味しくてこれは大当たりだった。

↑「Beirut Grill」のオススメがこのケバブの盛り合わせ。ラムチョップ、チキンケバブ、ビーフケバブ、ラムコフタのセットでこれで二人前分。

 食べ終わって店を出ると7時半。あたりが夕闇に染まりサルタンモスクもライトアップされさらにインスタ映え度がアップ。腹ごなしにもう一度ハジレーンへ行きカミさんに付き合ってジェラートを食べる。アラブのストリートだからカフェやスイーツの店も多いのだ。爽快感満点のレモン+バジルのジェラートでひと時涼を得る。その一方でやや似つかわしくないバーもあってここで自分はもう一杯。しかもクラフトビール専門のバーで、チェイサーが欲しくなるほどの苦〜いIPAをじっくりと飲む。近くては路上ライブも行われていて雰囲気は最高。シンガポール最後の夜を楽しむ。


↑ハジ・レーンはアート爆発な建物ばかり。道は狭いので写真を撮るのに夢中で通行を邪魔しないように。

 宿に帰ってきたのは9時半ごろ。少々早いが荷物をパッキングしないといけないし、明日は6時前には起きなくてはいけないので今日はこれで終了。ガンガンにきいたエアコンが今日はちょうどいい。
5月6日(日)
 というわけでまだ夜が明けないうちから荷物をまとめてチェックアウト。電車で一路空港へ向かう。乗っている人が少ないので、ここぞとばかり車内の様子を動画で収める。意外とこういうのがYouTubeで見られるのだ。お土産はすでに十分買ったので搭乗時間までは朝飯を食べて過ごす。ありきたりなフードコートもホーカー文化のシンガポールならうまいものが揃っている。最後の飯はシンガポール名物肉骨茶。スペアリブががっつりついて来るが、胃に優しいスープだからこれはやっぱり朝に食べるのがいい。スープをご飯にかけてサラサラ流し込むのだ。
 ゲートに向かい保安検査を済ませて東京行きの機内へ。帰りはゆったりとできるようプレミアムエコノミーにしておいた。しかも席は最前列、非常口前の席。緊急時にお手伝いをしなければいけないが、足元スペースは破格の広さ。淀みなく離陸し、シンガポールスリングを飲みながら日記の続きを書く。短い滞在だったが充実した旅行でした。

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