IAN-Gの無謀旅日記 〜台北編〜
期間 2012年5月3日〜2012年5月6日
(行ってきた人、文、写真=IAN-G 同行者=いません)
↑15年ぶり2度目の台北。香港と並ぶ「資本主義の中国」はさすがの発展ぶり。
5月3日(木)
毎度毎度いろんなところを旅しているが、運のいいことに雨に降られるということはあんまりなかった。天気予報の精度が上がった今日でも堂々傘マークが予報されていても見事に裏切って快晴だった日も一度や二度ではない。いや、ここまでくればむしろ晴男と呼んでもらいたい。それなのに今回の旅は見事な雨模様で始まった。しかも並大抵の雨ではない。成田に着くと飛行機のエンジンで舞い上げられるのか雨が霧のようにもうもうとあたりを漂っている。本当に飛行機が飛ぶのか疑わしいほどの荒天だ。こういう時B737やB767クラスの大きさの飛行機では心もとない。幸い今回搭乗するエバー航空の機材はA330。エンジンの数はともかくA340と同じ胴体なのだからましな方だろう。人の入りはまあまあ。ほぼ定刻どおりに離陸し、上昇を続け、分厚い雲を抜けるとそこは真っ青な空。ひと時天気の悪さは忘れ快適なフライトを過ごし、3時間ほどで台北の桃園空港に着陸した。こちらも予報は雨だが、雲が厚いものの何とか持ちこたえている。たった3日前に韓国を2日で出入国したばかりでも怪しまれることなくイミグレーションはパス。荷物も早々に出てきて台北市内へ向かうバスに乗り場に向かう。台北ほどの観光都市の市内への移動手段が基本バスしかないのが驚きだが、結構頻発しているからいいか。でも中国語とごく基本的な英語しか通じないのはちょいと困る。しかもかなりのブロークンイングリッシュで”A”と”eight”の区別がつかないくらいだ。ともかくバスに乗り込み台北市内へ。やってきたバスも国家の玄関口と都市を結ぶバスの割にはやけに年季が入っている。早いところ高速鉄道にでも直接乗り入れてもらいたいものである。
バスはうなりを上げて高速道路を進んでいく。山がちの地形が徐々に平地に変わっていく。クアラルンプールではペトロナスツインタワーが、ロンドンではトレリックタワーが見えてくると市内に近づいてきた合図だが、ここ台北も台北101がひときわ高いその姿を現すと到着は近い。しばらくして台北駅に着き、ここからは地下鉄で今回の宿へ向かう。台北駅から一駅の中山駅で降りてその出入口からは歩いて数十歩、繁華街の真ん中に位置するコンパクトなホテルだが、一人では十分な広さで設備も充実。もちろんデザインも行き届いている。今回もいい宿を引き当てることに成功したようだ。しかもこれで値段もそこそこリーズナブルとくればこれからの旅のテンションも上がるというもの。
↑なんでもない風景なんですが、台北の町並みは妙に惹かれるところがあるのですよ。
旅の疲れを落とし、まずは軽く肩慣らしに台北駅南側の繁華街を歩くことにする。この界隈には市場あり本屋街あり、いい味出している飲食店もあれば、acerやASUSのお膝元だけあってPCショップもあって誘惑が多い。ここだけでも街のエネルギーを感じるには十分だが台湾の魅力はやっぱり日が暮れてから。いい時間になったところで台湾最大の夜市である士林夜市へ乗り込んだ。
↑立派な建物の士林夜市。地下の美食区では台湾名物が一気に味わえます。
アジアの楽しみの一つが夜市だが、台湾のそれは観光客だけのものではない。より地元の生活に根ざした「食べる」、「買う」、「遊ぶ」が渾然一体となって広範囲に広がり、歩を進めれば進めるだけ新しい出会いが待っている。普通の店舗に街角屋台の組み合わせも充分魅力的だが、新しくできた市場の建物はその魅力が凝縮されている。地上階は金魚すくいにエビ釣り、射的に輪投げと遊べる場所がたくさんあり、地下には食べ物屋台が集まった美食区が形成されて、名物の味を競い合っている。ここでまずは台湾といえば外せないオイスターオムレツと臭豆腐から食べ歩き開始。一人前の量もそれほど多くなく、何軒も何軒も市場を見ては食べるの繰り返しで、「少量を少しずつ、何軒も」という屋台ライフの醍醐味を存分に味わうことができる。最大の懸念であった酒はその辺のコンビニで調達してこちらも飲み歩き。つまみは中華ソーセージこと香腸や肉の串焼きを好きに買って場所を選ばず酒盛りができる。腹がいっぱいになったら腹ごなしにその辺をブラっと歩き回れば楽しみはいくらでも出てくる。
↑市場の建物の外も屋台が続きます。中には行列の店も。しまった、ジャンボ唐揚げ食べるのを忘れた!
この繰り返しで何時間でもいることができるのだ。夕方の5時に到着し、たくさんのツアーバスが到着するのを眺めつつ歩き回っていたらあっという間に夜の10時。まだまだ探検し足りないが、それでも足が疲れて、腹一杯になってしまうのが悔しくて仕方がない。締めに広東粥を食べてひとまず屋台の食べ歩き第一弾は終了。本当に帰るのが惜しいが、心地よい疲れのうちに帰ったほうがいい思い出になるだろう。地下鉄駅はこれから訪れようとする人たちでまだまだごった返していた。
↑食べるのに飽きたらゲームでも。射的やパチンコなど、シンプルなのにハマること間違いなし。
5月4日(金)
朝起きたら、雨。しかも相当な強さだ。あまり気乗りはしないが朝飯を探しに外に出ることにする。最初はそこそこの降りだったのだが、地下鉄に少し乗って地上に出ると完全に本降り。傘無しでは移動もおぼつかない。屈辱的だがコンビニで傘を買うことに。しかし、安物の小さい傘ではまったくしのげないほどの雨だ。
↑雨に煙る朝の台北。こんな天気でもバイクで通勤の人はたくさんいました。
幸い台湾の建物は上階が道路にせり出してアーケードの役目を果たしてくれるのでこれを伝って何とか歩くのだが、中華圏のくせに朝からやっている店が少ないのだ。シンガポールのチャイナタウンはどこも朝から絶賛営業中だし、香港も朝から粥麺専家がやっているのに比べればありえない遅さだ。晩飯難民にならない代わりにこれでは朝飯難民だ。こんなことなら宿の朝飯食べればよかった。そんなことをしている間にも雨はさらにその勢いを増してくる。毎度毎度街歩き、どこまでも歩き倒す旅をする身にとって雨は致命的。仕方ない。今日は予定を前倒しして故宮博物院に行くことにする。これなら雨に濡れることもない。地下鉄とバスを乗り継ぎ到着。自分と同じ考えの人やツアーの観光客で館内は大混雑していた。肝心の展示はさすがの一言に尽きるが何より人ごみがつらい。団体客が無理やりに割り込んできたり子供が騒いだりというのは当たり前。こちらが気疲れしてしまう。それでも2時間かけてみっちり見て回って外に出ると雨はそろそろやみそうな雰囲気。ここまで何も食べてなかったので適当に入った店で水餃子を食べて腹を落ち着かせる。
↑故宮博物院。中国史は好きなので人ごみさえなければ一日中いられます。
次に向かったのは地下鉄の終点でもある淡水。淡水川の河口にある街で川沿いのプロムナードが続く。どんより鉛色の空なのが残念だが、もうここに来るころには雨はすっかりやみ再び自由に歩き回れる。やっぱり街歩きは晴れてなんぼである。この辺は観光地らしく屋台も多く、適当に買ったイカの丸焼きをつまみつつブラブラする。
↑ウォーターフロントのおしゃれタウン、淡水。どんより曇り空だったのが残念。
夕方からはもちろん夜市めぐり。今日向かったのは松山駅近くの(食尭)河街夜市。どこまでも広がる士林と違い一本道の夜市なので見て回りやすい。もちろん魅力的な屋台飯もたくさん並んでいる。早い時間に着いたので人気店もそれほど並ばずに品物を手に入れることができた。席に座って食べられるところも多いが、ここはあえて食べ歩きできる軽めのものを重点的に選んでいく。一口鍋貼やエリンギの炭火焼などシンプルだがうまそうなな屋台にならんで日本のお好み焼きなんかも売られていた。
↑(食尭)河街夜市に向かうために台湾国鉄にも乗りました。駅も電車もなんとなく重苦しい・・・IC乗車券は近郊の駅までは対応していました。
↑アクセスはいまいちだけど楽しみが一本の道に凝縮された(食尭)河街夜市。人通りの少ない夕方にぜひ。
全部を見て回ってもまだ時間が早いので思い切って今日は夜市のはしごをすることに。歩いて歩いて地下鉄を乗り継ぎ次に向かったのは臨江街夜市。
↑こちらは臨江街夜市。駅から結構歩かされます。その分飯も酒もうまく感じる・・・かな?
こちらはさらにコンパクトなつくりで狭い故に人ごみが玉に瑕だが食べ物の屋台が広さの割りに充実している。屋根はないが、その代わりにネオンがきらめいていて「夜市」を主張している。すでに食べ歩きを繰り返してきたのでここでは締めの麺線をいただき、店を冷やかしてから後にする。
さらに今日はこれだけでは終わらない。酒とあまり縁のない台湾だが、その台湾のアイコン、「台湾ビール」の工場敷地内にバーがあるというので最後にここに向かうことにする。すでに工場の就業時間は終わり、暗いし実にさびしいのだが、案内表示に従って進むと確かにあった。ここだけやけに騒がしい。倉庫の一角を開放しただけでバーというよりはビアホールといったほうが適当かもしれないここではおなじみ台湾ビールがドラフトで飲めるので早速これを注文。缶や瓶とはまた違った趣がある。ここでもしこたま飲んで宿に帰りついたのはいつもより遅めの11時。今日も朝の雨を除けば充実した一日だった。
↑できたての台湾ビールを味わいたいなら迷わずここ。工場敷地内だから鮮度は折り紙つき。
5月5日(土)
台北滞在3日目にしてようやく気持ちよく晴れてくれた。天気がいいとそれだけでテンションもあがる。今日もまた懲りずに朝飯を探しに外に出ることにする。普通の店は空いていないとしても市場ならどうかな?と晴光市場に向かうと朝からやっている屋台がちらほら。無事に朝飯にありつくことに成功した。今日やることはもちろん街歩き。こんなに天気がいいのだから歩かなければ損だ。古い町並みが並ぶディンファ街に向かうべく地下鉄の駅を降りたらすぐ目の前で市が立っていてまずはこちらから探検。フルーツ屋台が主だが、それに混じって肉や魚の売っている店も軒を連ねている。食べて楽しむ夜市ばかり目立つ台湾だが、こうやって生活観あふれるマーケットにもようやく出会うことができた。
(左)双連朝市。近くに病院があるからか青空を楽しみに来た車椅子の人多し。そんなところも地元感があってイイネ。
(右)ディンファ街は道路に飛び出してカメラに収めたくなるような建物ばかり。ただ車だけは充分注意。
これに気をよくしていざディンファ街へ。並ぶ店は乾物屋が多いが、この街で見るべきところはここではない。建物を飾るファサードがおよそ中国的ではないハイカラなデザインをしている。ここはそれほど広い地区ではないので軽く歩き回ってコンビニで買った黒松沙士で一休み。次は市政府地区へ。もちろん目的は”元”世界一高い建物、台北101。といっても高いところは苦手なので周辺からその巨体を見るだけだし、ショッピングセンターはブランドショップばかりでありきたりだ。そうでなくてもこの周辺は区画が広いから歩くだけで一苦労で、やっぱり高い建物は遠めに見るのが一番という結論に。東京で散々学んだ教訓の感じもしなくはない。
お次は頂好地区へ。表通りは百貨店がにらみをきかせているが、ひとたび路地に入るとおしゃれな店や小さな飲食店が所狭しと並んでいて歩きがいがある。ここで適当に見つけた食堂で牛肉麺の昼飯を食べる。結構当たりだったな。台北の庶民的な食堂は自分でメニューが書いている伝票に数量だけ書き込んで渡すだけなので言葉が分からなくても何とかなってしまうのは非常に助かる。この時点でようやく時計は1時を過ぎたあたり。都会の喧騒を少し離れるべく次は中正紀念堂へ。無駄に広い敷地に、遠近法が狂うほどのでかい建物。帝政ならば皇帝の威厳を示すためという目的があるが、共和制だというのに中国人というのはどうしてこうでかい建物を作ってしまうのだろう。まあ無料で誰にでも開放しているのだから文句は言えまい。蒋介石像の前に衛兵が二人、微動だにせず職務を遂行していた。軍服もつやつやで最初マネキンかと思った。
↑コレだけ大きい建物を作ろうというのは島国の人間にはない感覚。「中華民国」もやっぱり大陸の国でした。
ブラブラ徘徊の最後は台北市のおしゃれスポット、西門町。ここはもう純粋な繁華街で、記憶の新しいところだとソウルは明洞のような感じのところだ。ただ、明洞ほど狭い通りでないことと日本語があふれていないところがいい。まあ、決まりきった街という感じではあるのでここもサクッと見終えていったん宿へ戻る。
宿で一休みしてから夜はもちろん懲りずに夜市めぐり。まずは師大夜市。学生街の夜市だけあって出ている店も心なしかおしゃれ、ほかではあまり見ない各国料理屋もこの周辺に点在している。早くも腹が減ってきたのでここではいきなり屋台ステーキに挑戦。鉄板の上でジュージュー言わせるスタイルは日本の影響だろうか。青空の下で食べる肉というのは無条件でうまい。夜市の規模としては大きいところではないので一時間半ほどで見て回って今日も夜市のはしご。
↑師大夜市はあまり観光地化していないという点でおススメの夜市。青空ステーキ屋台で肉をエンジョイ。
龍山寺のすぐ脇にある華西街夜市が次の目的地だ。アーケードの一本道にはこの夜市の名物である蛇やすっぽんの店もあるが、せいぜい2〜3軒であとは普通の夜市である。そしてこれらの店はもったいぶって撮影禁止のところがほとんど。いや、別に蛇屋だったら香港で好き放題写真撮ってきましたけど。屋台は華西街の前を横切る広州広場の方に集中していて場所によってはテーブルを出していて座って食べられる店もある。すでにステーキを食べてそれなりに腹は膨れているがそれではもったいないので、ここでさらに田うなぎそばに台湾でこれは外せない魯肉飯と排骨をさらに食べる。
腹ごなしにさらに歩くと裏通りにはいかがわしい店もかなりあった。ここが元色街だったことを教えてくれる。結局人ごみが耐え切れなくなって9時過ぎには宿に戻ることに。いい天気のしたひたすらに歩き回ったのでこれ以上ない満足。宿で一日の余韻に浸りつつビールをあおる。なんかあっという間だったなぁ。
5月6日(日)
何だかんだ言って今回も旅もおしまい。今日は朝飯を探すこともなく宿で朝をゆるく過ごす。宿をチェックアウトしてから少し宿周辺を歩き回って牛肉麺にありつく。出発の日というのに今回の滞在中最高のいい天気だ。なんかもったいないが少しだけその中を歩けるのだからよしと思わないと。
桃園空港までは前日に宿で送迎サービスを頼んでおいた。バスでもいいのだが、せっかくこういうサービスがあるのだからたまには使ってみようかな、というわけで、荷物を受け取り案内された車はメルセデスベンツ!しかもかなり広く豪華な車内だ。やっぱりこの宿を選んでよかった。運転手のおっさんは渋滞を巧みにかき分けて進んでいく。空港まで一時間を想定していたが30分ほどで到着してしまった。
桃園空港は国際空港のわりにはコンパクトなつくりだ。夜市で何も買わなかったのでここでカラスミほかありきたりの台湾土産を買う。さらに免税店エリアを歩き回っていると故宮博物院のアンテナショップもあった。荷物が増えてはたまらないと現地で買わずによかった。ここで収蔵目録を買う。日本語版があるのは今となってはうれしい限りだ。なんか最近は町なかで土産を買うよりも空港内の免税店で買うことのほうが多くなったなぁ。荷物が増えないからこれはこれでいい。あからさまに観光客には見えるけど。まあ、空港くらいなら観光客に見られてもいいか。町なかではごめんこうむるが。澄み切った青空の中エバー航空のA330は離陸。機内食を食べて落ち着くと太陽はすっかり西に傾いてしまった。東京に着くのは暗くなってからか・・・
↑エバー航空のA330-300.。ハローキティジェットじゃなくて残念・・・なわけあるかいっ!!