トレリックタワー(Trellick Tower)とはロンドン西部ゴルボーン・ロード(Golbourne Road)にそびえ立つ31階建ての高層集合住宅です。ヒースロー空港からロンドン中心部へ向かうヒースローエキスプレスに乗ると進行方向左側にその巨体が現れます。また、毎週土曜日に開かれるポートベロー・マーケットをどんどん進み、露店が途切れたところからもその姿を確認できます。 ロンドンの住宅難を解消するためのカウンシルフラット(市営住宅)として建築家のエルノ・ゴールドフィンガー(Erno Goldfinger)によってデザインされ、1972年に竣工。無機質の権化といえるほど一切の装飾も無く、むき出しのコンクリートと窓ガラスで構成された重量感溢れる出で立ちは、醜いながらも潔さを感じさせるデザインとして20世紀後半のモダン芸術の影響が残る貴重な建物です。 一時期は「恐怖のタワー」と呼ばれるほど治安が悪く、犯罪の巣窟となっていましたが、現在はそれも改善し、身近になったことでその芸術的価値が見直されています。 |
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特に秀逸なデザインなのが住宅から独立したエレベータールーム。この2つの構造物は各3階ごとに架けられた通路でつながっていて、それ以外の階の居住者はエレベーターを降りてからさらに階段を使ってそれぞれの部屋へ行くようになっているのが特徴です。 周辺に他に高い建物がほぼないこと、リージェンツ運河のほとりにあること、すぐ近くがモロッコ系のコミュニティであることなどがこの建物の存在感、そして無骨さをいっそう際立たせ、ロンドンを代表する高層建築の地位を確立させています。 また、ロンドン東部郊外には同じ設計コンセプトで、トレリックタワーよりも5年先んじて建てられた27階建てのバルフロンタワー(Balfron Tower)があり、こちらはすぐ後ろがA道路(幹線道路)、上空をロンドンシティ空港から飛び立ったジェット機が頻繁に通り無機質感は満点。1960年代が想像していた21世紀の未来を感じることができます。 I-G inTrellick (&Balfron) Tower |