期間 2009年9月20日〜2009年9月23日
(行ってきた人、文、写真=IAN-G 同行者=いません)
↑ハマースミス&シティ線は滞在中よく乗りました。素のロンドンがよく見えてきます。
9月20日(日)
朝8時、玄関前には下町に似つかわしくない黒塗りの高級車が停まっていた。おもむろに車から出てきた運転手のおっさんに名前を呼ばれてすぐに迎えの車だとわかった。
そう、今回は以前から何としても乗りたかったヴァージンアトランティック航空のアッパークラスでロンドンにに行くことになり、話のネタに、と日本就航の航空会社の中ではここにしかない送迎サービスを受けることにしたのだ。こんな下町まで遠路はるばる、と思いきや結構近所から来ていたらしく運転手さんも「近くて助かりました」だそうで。シルバーウィークも2日目に入り車の波も少しは減ったのか京葉道路〜東関東道も順調に進み一時間もかからず成田に到着した。普段午前中のフライトならば7時頃には家を出て早めに成田についていろいろこなすわけだけど、今回は荷物も準備万端だし、保険ももう入ったし、両替だけしてさっさと出国。前回のロンドン旅行のときは250円もした1ポンドだが、150円以下とだいぶ安くなった。
搭乗ゲート近くのヴァージンのラウンジで朝飯を食べながら早速ギネスで乾杯。ほとんどの航空会社ラウンジでセルフサービスの食事もここはスタッフの人が席に注文を聞きに来てくれて、出来上がると持ってきてくれる。朝日を浴びる窓側で次々に離陸する飛行機を見ながらくつろいだ。これからの12時間の空の旅が楽しみだ。
↑ヴァージンアトランティックの遊び心。飛行機型の塩&コショウ入れ。
そしていよいよヴァージンが誇る世界最長の旅客機A340-600に搭乗。BAの前後互い違いの配置や、シンガポール航空のA380の法外に幅の広いシートなど、いろいろ見てきたけど、斜め配置のフルフラットシートのインパクトはそれに勝るとも劣らないものだった。ふんぞり返って座るのに十分な幅はあるし、足は好き放題伸ばすことができる。しかもシートベルトにエアバッグが付いていて離着陸時もシートをリクライニングした状態で大丈夫らしい。ウエルカムシャンパンをもらい一気に飲み干すとおかわりまで勧められた。これはさすがに初めての経験だ。定刻どおりに出発し、しばらくすると機内サービスが始まり、とりあえず一杯飲んでから食事をしていったん眠ることにする。ボタン一つでシートが倒れて完全に水平なベッドになり、横になるとすぐに夢の中へ。目覚めてからはこれまたヴァージンお得意のバーカウンターで軽く一杯ひっかけてたまたま隣に座ったUK出身のアンチャンと話をし、しばらくするともうヨーロッパ上空。12時間の空の旅はあっという間に過ぎ、無事ロンドン、ヒースロー空港に到着した。
さて、ここからは世界一厳しいイミグレーションとの対決が待っている。係りにパスポートを渡して7年前の別人のような顔写真と見比べられまず怪しまれ「何でロンドンなんて観光に来たがるの?」などと本気なのかユーモアなのかわからない質問には「電車に乗って、パブでビール飲みたいから」と正直に答える。最後まで懐疑の表情が消えることなくとりあえずハンコだけもらい晴れて入国は達成。ラゲッジクレームにつくと既に荷物がコンベアから降ろされた状態で用意されていた。さすがアッパークラス。ありがたく受け取り、ヒースローエクスプレスで一路ロンドン市内へ。今回のロンドンでの宿は地下鉄ハマースミス駅の近く、中心部からは離れているが、地下鉄は3つの線が通っていてアクセスは良好。しかも今回は入念なリサーチの末、「パブの上」の宿を予約した。ヒースローエクスプレスの終着駅であるパディントンからは地下鉄で一本。しかも終点だから降り間違えもない。すでに地上区間に出きったハマースミス&シティ線に揺られてほどなくしてハマースミスに着き、ようやく宿まで到着。レセプションは見事にパブのカウンターの端っこで、案内された部屋も実にきれいだ。
(左)ハマースミス&シティ線のハマースミス駅は歴史を感じさせる赤レンガの駅舎。ディストリクト線とピカデリー線の駅はこの向かい側。
(右)今回泊まったパブ”Brook Green Hotel”。広くて静かで居心地も抜群。都心のパブとはまた違った魅力があります。
荷物を置きシャワーを浴びたら早速晩飯を食べるべく街へ出る。近所で食べるという選択肢もあったけど、ビクトリア駅周辺まで行けばコーチステーションもあるから飯屋も多いということだし、夜の散歩ついでに行ってみることにする。ターミナル駅ということだけでなく長距離バスもここに集まるので宿も飯屋もここは多い。ロンドンについて最初の晩飯はありきたりだがパブでエクストラコールドのジョンスミスとフィッシュ&チップスにした。モルトビネガーをビタビタにかけて食べると久しぶりということもあって実にうまい。腹一杯になってとたんに眠くなったので今日はこれで終了にして宿に戻る。もちろんパブを素通りすることは無理ということなので、ここでも一杯。初日からBeer&Bedを堪能することができた。
9月21日(月)
昨晩は10時頃にはもう寝てしまったので、朝は5時頃に目が覚めた。シャワーを浴びて、いつものように日記を書いてから朝飯に臨んだ。パブの端っこにあるダイニングテーブルに腰掛けて淹れたてのコーヒーを飲みながら朝飯が来るのを待つ。出てきたフルイングリッシュブレックファーストはボリューム満点だがうまいからいくらでも食べられてしまう。9時過ぎには中心部に向かった。
通り一辺倒の観光コースは前回の旅行でほとんど見て回ったのでウエストミンスターにてビックベンにあいさつしたらそのまま進路を南に取りウォータールーへ歩を進めた。そこからは午前中の街をひたすらに歩きまわる。魅力的な建物が多いから軽いひと駅分の散歩のはずが気付いたら5駅分ほどみっちり歩いてしまった。
行きついたのはタワーブリッジ南岸。ここまで何も目的もなく徘徊していたわけではない。目的は昼飯。ロンドンに来たからにはこれは食べておきたいと決めていた「ウナギ」がそれだ。すでに本やネットなどで多数紹介されているウナギの専門店なのだが、かば焼きこそ正統な鰻の食べ方!という日本人にしてみれば骨ごとブツ切りにしてゆでたウナギと付け合わせのマッシュポテト、そして「リカー」と呼ばれるソースがたんまりかかったその姿は確かにカルチャーショックだ。食べてみる。感動的なうまさというわけでもないが、元来うなぎは大好きなので個人的には大いに気に入った。これはこれで悪くない。簡素な店内を見回すと近所のオッサンオバハンや家族連れ、タクシーの運転手さんなど地元の人が圧倒的に多く、古くから支持されていた大衆的な料理ということらしい。
↑これがウワサのロンドンのうなぎ。イギリス料理らしい洒落っ気のまったくない質実剛健の食事。
ここまでかなりの距離を歩いたので帰りはバスでウォータールーまで戻り今度は一気に北側に移動。St.John's Woodの駅で降り、まずは世界一有名な横断歩道のあるアビーロードを見学。スタジオの壁には無数の落書きがあり、横断歩道では案の定世界中の観光客が横断歩道を渡るところを撮影していた。当然みんな車道の真ん中でカメラを構えているので車を走らせるほうにしてみれば大迷惑なはずだ。
↑ただの横断歩道?さにあらず。この写真に写っている人全員手にカメラを持っていました。
高級住宅が立ち並ぶ街並みを歩くといつの間にやらリージェンツパークに出たので公園内をゆったりと散歩しながら反対側の出口まで行くとカムデンに出てきた、ここのマーケットは来たことがあるから軽く冷やかすだけにする。それにこの時間、学校帰りの学生でごった返しているのだ。道を歩いていても人が多く、パブに入っても結構混雑している。静かなところを求めてリージェンツ運河沿いをキングスクロスまで歩くことにする。さっきのリージェンツパークもそうだが、ひとたび入り込むとここが同じロンドン市内とは到底思えない。歩く人、走る人、自転車で行く人、釣りをする人、船で進む人。すれ違う人もさまざま、時間の流れ方もさまざま。バスも電車も視界に入ってくることがない、大都市の真ん中にいることを忘れさせてくれる静かな空間だ。
↑リージェンツパークにリージェンツ運河。もちろんここもロンドン市内。水と緑と空が実にさわやか。
ふたたび雑踏の中に戻ったのは午後5時近く。さすがにここまで歩き通すと完全にヘトヘトの状態になる。その後も前回滞在したベイズウォーターやオックスフォードストリートなどにも足を向け、先々でパブに入ってはエールやサイダーを飲みながら回復していったものの、さすがにここで疲労の限界。ハマースミスに戻り駅前のパブで晩飯を食べ、宿でもう一杯飲んでから寝てしまった。今日の成果は両腿の筋肉痛、足裏の靴ずれが2か所だった。
←夕暮れのオックスフォードストリート。人も車もまだまだ忙しい。
9月22日(火)
夏から秋にかけてのロンドンは思いのほか天気がいい。日本のように季節の変わり目に雨が多いなんてこともないらしい。朝晩は結構肌寒いが昼間は半袖でも大丈夫。今日も一日いいことがありそうだ。
朝飯は昨日より少し軽めにキッパーを食べる。「ニシンの開きの燻製」のことだが、なるほどこれは日本人の口にも合いそうだ。腹を満たしてから街に出ることにする。昨日あまりにも歩き過ぎて両足が筋肉痛なので宿から駅の短い道のりもバスに乗ることにする。ちょうど宿の目の前がバス停なのだ。
地下鉄に乗ってまず向かったのはエンジェルの駅。カムデンパッセージに代表されるアンティークショップや小洒落た店が多数並んでいる地区で、地下鉄駅にはロンドン地下鉄で最も長いエスカレーターもある、またこれが本当にびっくりするほど長い。3〜4階分はゆうに移動しているはずだ。で、地上に出る。まだ朝が早いからか開いている店はまばら。しかし、裏に入ると露店がている一角もあり、冷やかしついでに見て回る。しばらくするとここでも鰻屋を見つけた。昨日食べたところと同じ名前だが、ロンドン近郊にある2つの支店とはどうも違う店らしい。しかし、せっかく見つけたのだからここで食べなければ損だ。ここではジェリード・イール。つまりウナギの煮こごりを注文。ゼリーの部分はうす味が基本のイギリス料理としては飛びぬけて塩味が強いがバランスよくウナギ本体と食べて行くとちょうどいい塩加減になる。まあ、そうすると圧倒的にゼリーが残るわけだ。ロンドンのウナギ料理は個人的にはうまいものだということがよくわかった。
↑歴史あるシティにはこんな細い道や路地がたくさん。昼間っから商談の名の下にパブで飲んでいるビジネスマン多数。
午後はそのまま地下鉄で南下してシティへ。日本でいうところの丸の内に近い感じだが、歴史的建造物も多く、これとスーツ姿のビジネスマンがなぜか非常にマッチしている。そこに観光客が混じっても全く違和感がないのが古い町の懐の深さか。入り組んだ味のある路地もあるし、もちろんパブもしっかりとある。しかも真昼間からビール片手に話している人たちの実に多いこと。自分もその中に混じってビールをいただく。経済の中心というとどうも堅苦しいイメージがあるが、ことここに関しては結構楽しんで散策ができた。
↑道に迷った成果はこんな感じ。 |
今日は夕方に一度宿に帰る予定だったので帰る道すがらパブめぐりをしたのだが、ビクトリア駅周辺を歩いていたらものの見事に道に迷ってしまい、気づいたらウエストミンスターに逆戻り。ここから再び近くの地下鉄駅まで歩く気力もなく偶然やってきたハマースミス行きのバスに飛び乗った。しかし乗ったはいいが、これがなんと終点まで行かず、途中の停留所どまり。とりあえず終点は地下鉄駅の前だったのでそこまで向かう。ついた先はフラム・ブロードウェイ、サッカーでおなじみのチェルシーの本拠地、スタンフォード・ブリッジもすぐ近くに見えた。。幸いディストリクト線の駅だったので地下鉄でそのまま宿に戻れた。生活感あふれる郊外の魅力的な街並みをバスの二階からゆったり見られたのでまあよしとしよう。実はもう少しさまよっていてもよかったのだが、時間が少し足りなかった。
宿に戻って一杯飲んでシャワーを浴びて再びロンドン中心部へ。前回来たときにも見た「We
will rock
you」をまた見に行った。前回は格安チケットで列のまん真ん中に座る羽目になったので、今回はボックスオフィスで通路沿いの座席を確保。足元も広いし、前の人の頭も邪魔にならないが、公演中しきりに席を立つ人が多かったのがちと残念。2年もたっていたからキャストが変わっていたり曲も微妙に変わっていたりして、2度目でも十分に楽しめた。いや、これは何度でも見ても飽きないだろう。
10時過ぎに公演が終わって地下鉄で帰ると、車内が真っ赤に染まっていた。よくよく見るとアーセナルのサポーターたちだ。今乗っているピカデリー線の路線図にもアーセナルという駅があるし、街で配っているフリーペーパーを読むと今夜ホームのエミレーツスタジアムで試合があったようだから、皆そこからの帰りというわけだ。ただでさえ小さい地下鉄車両のすし詰め状態は日本のそれよりもキツイ。やっとのことで宿に戻る。カウンターでエールを頼むついでに飯も頼もうと思ったら、もう終了してしまったとのこと。酒だけ飲んで、シャワーを浴びて今日は終了。4時頃にパイ&チップスを食べたっきりで晩飯は食い損ねてしまった。ま、いいさ。明日の朝しっかりフル・イングリッシュ・ブレックファーストにするから。
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