IAN-Gの無謀旅日記
ヨーロッパ大周遊 〜イングランド→スコットランド編〜

期間 2009年9月23日〜2009年9月30日
(行ってきた人、文、写真=IAN-G 同行者=いません)
←青空に描かれたセントアンドリュースクロス.。この色の通りの国が、スコットランド。


9月23日(水)
今日も6時半には起床。今日でいったんロンドンを離れるから荷物をまとめてから早めに朝飯を食べる。さすがにこれだけ時間が開くと腹もペコペコなので迷うことなくイングリッシュブレックファーストを頼んで速攻で完食。8時過ぎには宿をチェックアウト。ハマースミス駅からはほとんどの主要な鉄道駅まで地下鉄一本で行ける中、選んだのはユーストン。ここから一気に北イングランドに向かう列車に乗ることにした。決め手となったのはもちろんヴァージントレイン。飛行機であれだけのサービスをしているのだから電車もさぞかしすごいものだろう、というわけだ。チケットオフィスですでに日本で入手しておいたブリットレイルパス(一等)の使用開始手続きをしていざホームへ。

(左)ユーストン駅。ロンドンのターミナル駅では珍しい現代的な駅舎です。
(右)ヴァージン・トレインご自慢の”ペンドリーノ”と”スーパーボイジャー”。外見もすごいが中身はもっとすごい!


 ちょうどよく同じ時間帯にリバプール行きとマンチェスター行きの電車が発車するらしい。今日はすでにリバプールで宿をとっているので着くのは夕方でいいから、と先にマンチェスターから見て回ることにしてホームを確認するとこれが待てど暮らせど確定しない。ようやく決まったのは出発予定時間になってから。
 勇躍車内に向かうと。一等車は実に広々といている。利用客もこの時間は少ないのか車両に自分ひとりだけで必要以上にリラックスした状態で電車は動き出した。動き出すと飲み物食べ物を運ぶワゴンが頻繁に通りかかる。これが無料のサービスというのがヴァージンのすごいところ。さすがにまだ腹は減ってなかったのでビールだけ頼んでゆっくりと窓の外を眺める。前回パディントンから電車に撮ったときはロンドンを出るとすぐに田園地帯になった感じだったがこちらはところどころ牧草地はあるものの建物が続く。電車は2時間半ほどでマンチェスター・ピカデリー駅に到着。レフトラゲッジで荷物を預け、右も左もよくわからないままとりあえず街に出てみることにする。

↑マンチェスターの町並み。チャイナタウンもほかに比べてあまり垢抜けてません。

 産業革命から発展した街だからか他に比べ区画が広く歩くには少し骨が折れるわりに裏道や露地が少なく歩き甲斐という点では少し微妙なところ。頼みの路面電車は工事で全面運休、バスでの代替輸送で、渋滞の中をかき分けて進んでいる。
 となれば残る楽しみといえば早くもパブのビールということになる。これだけは地元メーカーのリアルエールがたくさんあって目移りするほど。しかもロンドンよりも安い。1/2ptなら1ポンドもしないのだ。下手するとミネラルウォーターよりも安い!特に日本でも愛飲していた”Boddingtons”のリアルエール版を見つけられたのは嬉しい限りだった。
 そこから先はパブをはしごして3時過ぎには駅に戻り、リバプールへ向かう。ここでも電車は遅れたうえに急にホームが変更された。どうやらこの国の鉄道にはまだ好かれていないらしい。しかし、乗ったら乗ったで順調に進み目立った遅れもなくリバプール・ライムストリート駅に到着した。さて、宿はどこら辺かな、と駅の外に出て軽く見まわそうとしたら、なんとすぐ目の前にあった。レセプションに行くと既にチェックインの手続きは完了していてすぐに部屋に入れた。


 荷物をほどき、軽く街の様子を知るべく外に出てみる。港沿いが世界遺産だったり、プレミアリーグのリバプールFCとエバートンの本拠地だったり、テート・リバプールなんてのもあるが、なんといってもここはビートルズ発祥の地だ。記念館もあるし、初ライブを行ったキャバーン・クラブのあるマシュー・ストリート沿いにはグッズショップにライブハウス、全面ビートルズがテーマとなっているデザイナーズホテルなんてのもある。一般教養レベルでしか知らない自分のような人間でもついつい深入りしてしまう。
 パブの数も市内中心部ではマンチェスターより多い。海を隔ててアイルランドが近いからかアイリッシュパブも結構ある。マンチェスターとはそれほど離れていないが、リアルエールの種類はほぼ完全に様変わりしている。街の地理を把握しながらパブをはしごしていたらいつの間にかもう夜。昼間に食べたケバブの量があまりにも多かったのでこの時間になっても腹は減らなかったのだが二日つづけて晩飯抜きでは悲しいのでガモンステーキを半ば無理やりに押し込んで宿に戻った。そのまま9時過ぎには寝てしまった。
←日没にいたるまでの深い青空。高緯度+雲の多いUKならでは。

9月24日(木)
 ここのところ夜寝るのが早いから当然朝目が覚めるのも早い。4時、5時なんてのはざらにある。なにをしているかといえば、この日記を書いていたりその日の予定を考えていたりしているわけだ。で、夜明けすぐの街を歩き回り夜のためにさらにパブを探しておく。町の東側、いわゆる観光名所とは逆の方向に結構密集していた。これで夜も万全。

↑これだけ下調べしておけば大丈夫だろうと思っていたら・・・思わぬ落とし穴が!

 さて、今日はここからどこへ行こうか迷った挙句リバプールから比較的近いチェスターに行くことにした。早速宿の目の前のライムストリート駅に向かいチェスターに行く電車を確認すると近郊列車で行けるところらしい。地下のホームから3両編成の電車に乗る。通勤電車の役割もあるのか結構頻繁に運行されているらしい。もちろんレイルパスは使えるのだが、自動改札なのでいちいち駅員に見せて通してもらわないといけないのはちと面倒。車窓からの風景はあっという間に田舎のそれになる。途中接続でプラットホームに降り立ったが緑が生い茂り、周りに建物らしい建物もない。

↑リバプール近郊を行くマージーレイルの車両。でも駅はすっかり田舎の雰囲気。なんとなく西武電車にも見える・・・

 チェスターへは1時間もしないうちに到着。市内まで無料バスで向かい、降りた先は中世の木枠の建物が立ち並ぶ街並みだった。この古い町並みは観光の中心でもあるから古い家々といっても入っている店は都市部でおなじみのショップ。中をのぞくと自動扉などのハイテクも駆使されている。古いからといってただ保存するだけではなく、積極的に活用するというのが英国流だ。

↑パブも飯屋も、銀行に携帯ショップもチェスターでは木枠の伝統的家屋で営業中。

城壁に囲まれた街だから街の中心部はその中におさまっていてちょっと物足りなかったので今度はその街を囲っている城壁を歩いてみた。中世の城壁がほぼ完全な形で残っている場所というのも珍しいようで、観光客から地元の人たちまでウォーキングを楽しんでいてなかなかにぎやかだ。街の中心部から教会の脇、川沿いに出たかと思えば競馬場まであって実に表情豊かな風景だった。一周するのに1時間ほど、さすがに疲れたので中心部のパブで昼飯を食べる。腹も減ったのでここはステーキにした。エクストラコールドのカーリングをを飲んで一息ついて周りを見回すと地元のジイサンバアサンで大いににぎわっている。しかもみんな結構ボリューム満点のパブ飯をきれいに平らげている。この国の年寄りの元気の源はこういうところにあるのかと感心してしまった。
 駅までの帰り道は歩いていくことにした。大した距離でもなかったしバスの車窓越しにパブを何軒も見つけていたからだ。中心部のパブは観光地ゆえなかなか味のあるパブは多くない。逆に地元密着のパブは入ると客は地元の人しかいないのがほとんどで、日本人が一人で入ってくると注目の的になる。地元のリアルエールを堪能してから電車に乗りこむのだが、そのままリバプールに戻るのもあれなので少し遠回りにクルウの駅を経由していくことにした。クルウはロンドンやバーミンガムから来た電車がマンチェスター、チェスター、リバプールへと分岐する駅でそれほど大きくないが駅舎はヴァージントレインの鮮やかな赤で彩られている。駅の外は商店も多く、車の通りもそれなりだが、人の気配は少ない。町はずれに見つけたパブでとりあえず一杯と入ったところが見事に大当たり。こういういいパブとの遭遇があるからいくら疲れても街歩きはやめられない。よく冷えたボディントンが実にうまい!
←パブの名前は”The Express”。交通の要所Crewらしい名前ですな。

  クルウからリバプールまで戻るのだがその前にマージー川対岸のバーキンヘッドも軽く歩いて回る。セントラルやライムストリートまでは3駅程度のところ。完全な住宅地というわけではないが、それでも観光客が歩いているのを見ることはほとんどない。川一本隔てただけで随分と静かになるもんだ。
 そしてようやくライムストリートに帰り着く。これが午後5時くらい.ちょっと飲みすぎたし、すぐ目の前だから、と宿に戻り、夜に備えるべく軽く横になったのがいけなかった。気がつくとあたりがもう真っ暗。時計を見るともう11時になっている!パブはもうそろそろ店じまいという時間だ。せめて晩飯だけでも…と思ったが諦めてそのまま再び寝てしまった。

9月25日(金)
 というわけで不本意ながら昨日はたっぷり寝られたので幾分か調子がいい。リバプールは最後の最後まで楽しみ切れなかったがまあいい。気持ちははや次の目的地だ。とりあえずヨークの鉄道博物館だけは行きたいので東に向かう電車に乗った。3両編成とこじんまりとしているが先頭にはしっかりと一等車が連結されていた。途中マンチェスター、リーズと大都市を通るがパスして一目散にヨークに向かう。駅に着くとすぐとなりにお目当ての鉄道博物館があるというので、荷物だけを預けてそのまま直行。

(左)ヨーク鉄道博物館の目玉の一つ。世界最速の蒸気機関車、マラード号。
(右)ネームプレート、ポイント切り替え機、マイルポスト・・・鉄道発祥の国の歴史的財産がズラリ。


さすが鉄道発祥の国の鉄道博物館だけにとんでもない量のSLやその他機関車が展示されていてそのほとんどが動態保存らしい。しかも列車だけじゃない。関連した部品や駅の看板、ネームプレート、食堂車で使われた食器、券売機、ミニチュア模型などなど・・・古いものはいいものという考えのあるこの国だからこそできるコレクションも見ごたえがある。じっくり見ていたらそれだけで一日かかってしまいそうだ。結局かなり駆け足で2時間半かかって全部見終え、再び駅へ。陽が高いうちに今晩の宿を決めなくてはいけない。このままヨークで一泊するか、それとももう少し北に、せいぜいダラムあたりまで移動してからにするか。とりあえず一杯飲んで考えるかと駅から一番近いパブで、樽から直接注がれたサイダーをのんで即決。
「ヨークで泊まろう!!」
 それほどこのサイダーがうまかったのだ。パブの雰囲気も申し分ない。早速駅の観光案内所で宿の手配。駅から徒歩15分のところで一泊45ポンド。平日なら30ポンドだったのだが、週末だから少々高くなるのは仕方がない。その足で宿に向かう。
 長屋風の民家を改造した典型的な英国都市部のB&Bだ、荷物だけおろして市内にとんぼ返り。ところどころ石畳も残る入り組んだ街並みにヨーク・ミンスターをはじめとする歴史的な建造物が目白押しでいくら歩いても飽きない。パブだって探すまでもなくそこかしこにある。マンチェスターやリバプールに比べて少々高いのは観光地価格だろうか?地元ヨーク市内にあるブリュワリーのビールも味わえるとあってどんどん杯が進む。
←ヨークといえばヨーク・ミンスター。夕日で黄金色に輝きます。

 しかも今週末はフードフェスティバルと称して、ヨークシャー各地から名産品が集うイベントが行われていて地元の人と、観光客が入り混じって賑わっていた。農産物に、肉、乳製品だけでなく、ここでもエールやサイダーが売られていて、ここでも一人酒盛り。そんなこんなで酒ばっかり飲んでいて気づいたらもう夜。店の大半は5時過ぎには店じまい。どんどんと町が静まり返っていくなか、活気であふれているのはやっぱりパブ。宿への帰り道を地元密着のパブを探しながらぶらぶらと行く。とりあえず晩飯はヨークに来たからには、とヨークシャープディングを頼む。メインサイズのそれにはローストビーフとたくさんの野菜が入っていてボリューム満点。エールはなぜかオックスフォードのホブゴブリン。どうやらハロウィンが近くなるとどこのパブもゲストエールとしてこれを選ぶようだ。なにもヨークに来てまで東京で飲めるエールを飲むのもなぁ、飲んだけど。さすがに金曜日の夜ということだけあって。どこに行っても大盛況。それにつられてこっちも少々飲み過ぎてしまった。

9月26日(土)
 B&Bでの楽しみといえば朝ごはん。味もさることながらダイニングルームの雰囲気、食器や調度品などを眺めているだけで結構おもしろい。ホテルのダイニングルームのような派手さはないが、隅々まで手入れが行き届き、宿の主人の趣味がよく現れている空間で、リラックスして飯が食べられる。本来朝飯などほとんど食べなかった自分もこの国に来てからこういった雰囲気にも押され、毎日のようにイングリッシュブレックファーストを食べているうちにすっかり慣れてしまい、この日もしっかり完食。むしろ足りないかな?と思ってしまうくらいになってしまった。順応というのは恐ろしい。 
 さて腹が膨れたところで早速今日も行動開始。荷物をまとめ宿を出て一直線に駅を目指す。遅れてきたエディンバラ行の電車がちょうどホームに滑り込んできた。これは運がいい。すぐに乗り込む。緑豊かな田園地帯を英国が誇るインターシティ225は高速で駆け抜けていく。一時間ほど経ったところでニューキャッスルについた。ちょっと時間も早いのでいったんここで途中下車。
 ニューキャッスルという地名は英国中にたくさんあるが、その後ろに「アポン・タイン」とつけば北イングランド最大の都市を指す。タイン川にかかる様々な種類の橋で有名なところなので早速川沿いから歩き始めることにする。そのほとんどが鉄道や自動車のための橋だが一番下流のミレニアムブリッジは歩行者専用の橋で、その美しさでも群を抜いている。形状としてはアーチからワイヤーが伸びて橋を支えるつり橋だが、アーチは一本だけで、橋本体も同じ形で湾曲している。優雅な曲線で構成されているだけでなく跳ね橋としても優秀な機能を持っているらしい。橋の下にあるパブで一杯飲みながらじっくりと眺める。今日は土曜日で昼真っから飲んでいる人たちはたくさんいるから最初から飛ばしていける。川沿いで少々風が強いが青空が広がっていて気分は最高!

↑ミレニアムブリッジ。渡ると結構揺れます。橋が上がるのを見られるかは運次第。

 一方市内に足を運べば重厚な建物が立ち並ぶ。坂が多いので歩きまわるには骨が折れるが起伏に富んだ街は歩いていても楽しい。中心部には常設市場もあり冷やかしながら歩く。魚屋が結構あったがそういえばまだろくに魚を食べていないような気が・・・まだフィッシュ&チップスとキッパー、あとウナギくらいか。
 常連しかいない感じのパブを怪しまれつつ3軒ほどはしごして、午後一時には駅に戻る。またしても駅に着いた直後にお目当ての電車が到着。しかもあとで確認したら10時ちょうどにキングスクロスを出発したフライングスコッツマンだった。またしても運がいい。一路エディンバラへと向かう。車窓の風景も畑よりも牧草地帯が増え、牛、馬、羊の放牧がそこかしこで見られる。フォース湾が見え、所々ではためく旗がセントアンドリュースクロスに変わっていく。いよいよイングランドを出てスコットランドに足を踏み入れた。そしてその首都であるエディンバラの中心、ウェイバリー駅に電車が滑り込んだ。谷底に作られた様な駅で建物がはるか上から見おろしている。この駅からの風景でまず圧倒された。
←駅を出るとこの絶景がお出迎え。さすが世界遺産の街。

 とりあえず観光案内所で宿を手配する。市内に近いところということで中心部まで歩いて10〜15分程度のところにあるゲストハウスに決定。少し豪勢に行こうと「一泊£70までなら出す」といったのだがどこでどう間違えたのか二泊合計で£70のところを紹介される。まあ、安いに越したことはないし、地図で見る分には近いからいいや、と決めてしまった。こういう細かいディテールが伝わらないことを気にしないから英語力も頭打ちになるんだよなぁ。
 気を取り直して早速向かったのだが、石畳でカバンは轟音を立て、世界中から観光客が着ているからその人波をかき分け、そのうえひとくされ道に迷ってしまいようやく宿に到着。中心部とはいえむしろ隣のヘイマーケットの駅の方が近いくらいで道すがらにパブもない(その代りブリュワリーがあった!)。「結構遠いんじゃないか?」と一抹の不安を抱えながら荷物を置き一息ついて市内に引き返す。しかし、大通り沿いに行けばなんてことはなくすぐに着いた。
 自然の起伏を利用した街並み、エディンバラ城に代表される歴史的建造物、そしてそれを取り囲むたくさんの緑。これが合わさるとどうなるか、月並みで申し訳ないが美しいの一言に尽きる!ヨークの宿のオバチャンが「ヨークも綺麗だけどエディンバラはもっと綺麗よ。」と言っていたが、想像以上の美しさだ。さっそく街歩きというわけで定石通り旧市街のロイヤルマイルから始める。エイディンバラ城からホリールード宮殿までを結ぶ1マイルのメインストリートだ。先々でストリートパフォーマーがバグパイプを演奏し、雰囲気は満点。通り沿いのパブも大盛況だ。スコットランドといえばウイスキーだがどっこいビールも大人気のようだ。ハンドポンプは国境を越えても健在だった。
 ロイヤルマイルを歩いた後は新市街へ。”新”、といっても18世紀のものだからリバプールやマンチェスターなんかよりもはるかに歴史がある、ロイヤルマイルには複雑に入り組んだ路地もあったがこちらは整然と建物が立ち並ぶ。道幅が広く開放的だ。飯屋もこちらに集中している。この日の晩飯はもちろんスコットランド名物のハギス。グリーンピースと香草のペーストとスライスされたベイクドポテトという変わった取り合わせだったが、これが結構うまい。腹一杯食べて満足したところで日が暮れてきた。さすがにここまで高緯度になるとロンドンよりも若干日没が遅い。8時近くになってようやく真っ暗に。帰り道はパブがないから代わりにスーパーを冷やかしつつ宿に戻り寝たのは10時過ぎだった。

9月27日(日)
 目が覚めると時間こそ6時半だがいつもよりよく眠れた。早速朝飯を食べるべくダイニングルームに向かうとビュッフェ式のスコティッシュブレックファーストとなっていた。これには調子に乗って食い過ぎて一日中腹が減らなかったという苦い思い出がある。でもこれが結構うまいのだからしょうがない。パンやシリアル、ベイクドビーンズといった炭水化物は避けて目玉焼き、ベーコン、マッシュルームソテーなどを多めにしてなるべく腹にたまらないようにする。
←谷底にあるウェイバリー駅のひと工夫。プラットホームのすぐ横まで車が入れます。

 昨日とは打って変わっての曇天模様だ。今日の最初の目的地はクイーンズフェリーというところ。フォース湾に鎮座する巨大な鉄橋、「フォース鉄道橋」を見に行くことにする。今回の旅行で鉄道を多用することに決め情報を集めているうち出てきたものでエディンバラからもそう遠くないところにあるというので早速ウェイバリー駅から列車に乗り込む。件の橋はダルメニーとノースクイーンズフェリーという駅の間にかかっている.。ウェイバリーからはたったの3駅だ。市内を出るとあっという間に風景が田園地帯にかわり、エディンバラ空港も車窓から見える。そして、ダルメニーの駅を過ぎるといよいよフォース湾。周りが急に開け眼下に海が見える。しばらくこの状態が続いたのちいきなり真っ赤な鉄骨のジャングルに入り込んだ。今まさにフォース鉄道橋を渡っているところだ。一体全部渡り切るのにどれくらいかかっただろう。対岸のノースクイーンズフェリー駅で下車。日曜日だということも併せて怖いほど静かな場所だ。人もまばらだし空いている店といえば駅の近くのニュースエージェンシーくらい。そんな静寂の中を海岸線に向かって歩くと徐々にその巨体が姿を現してきた。

(左)フォース鉄道橋正面から見るとこんな感じ。遠近法はあってますよ。異常なまでの巨大さ。
(右)北岸からの眺め。かなり近くまで集落が来ているので建物や木々と一緒に撮りたい時はこちらがオススメ。


 とにかく巨大。鉄骨が複雑に組み合わさった、3つの山のような重厚なその形状はゴジラの背びれのようでもあり、まさに「鋼鉄の恐竜」と呼ぶのにふさわしい。これが19世紀の建造物ですでに100年以上現役でいるのだから恐れ入る。保守点検のためか橋のいたるところに足場が組まれ、シートに覆われてしまってはいるがそれもこの橋の歴史に重みを与えている。街の至る所からこの橋を眺めてカメラに収めてから、今度は南岸のダルメニー駅で下車する。橋見物の観光拠点はこちらにあるようでお土産屋もあればパブもある。フォース湾を遊覧する船も出ている。そしてフォース鉄道橋もより近くでその姿を拝むことができた。絵ハガキも売っていてこれには足場も何も無いきれいな姿が収められていた。一体何年前の写真なのだろう。こちら側でもたっぷりカメラに納めた。スコットランドまで来たかいがあったというもんだ。 

↑純粋に橋見物なら南岸へ。港からは遮るものなく思う存分その巨体を堪能できます。

 午後にはエディンバラに戻ることにする。休憩のためパブでシンガポールGPを観戦しながら昼飯。今日も懲りずにハギスを注文。今回は教科書通りのじゃがいもとターニップのマッシュが付いてきた。そのあとは腹ごなしのために街の東、カールトン・ヒルを軽く散歩。大した高さは上っていないがもともと高い所にあるのかてっぺんまで行くとエディンバラ市内が一望できる。実に雄大な光景だが、遮るものがないため風が容赦なく吹き付けてくる。周りの人も無い人は除いて全員髪の毛がボサボサになっている。カメラを構えていると風でふらつくこともあるし、地面から生えている草はその強風でみな同じ方向に寝てしまっている。スコットランドという土地の美しさと厳しさをいっぺんに感じた気がした。「下界」に降りたら精進落としの如くパブをはしご。さらにせっかく来たからにはとスコッチウイスキーも買うことにした。エディンバラ城の隣に「スコッチ・ウイスキー・エクスペリエンス」なるアトラクションがあり、そこに併設するショップで物色。売る方も心得たものでどの銘柄にもミニチュアボトルが用意されている。ことウイスキーに関しては素人なので綺麗なラベルのやつを4本ほど購入。荷物にならないしこれはいいや。

↑カールトン・ヒルから「下界」を見下ろす。天気がよければはるか向こうにフォース鉄道橋も見えます。

 今日の晩飯は待ってましたの海産物。ニュータウンの方にシーフードの専門店があったので勇躍乗り込む。店内見回してみると一人の客もかなりいる。これなら気兼ねなく食えるというもんだ。頼んだのは生カキ1ダースと蒸したムール貝を1kg。ソースがいろいろ選べるが、シンプル・イズ・ベストなので何もつけずにどんどん食い進む。何も考えずに貝を開けて食べていたいからむしろ一人の方がいいのだ。大満足で外に出るともう夕暮れ、昨日に比べて人がかなり少ない。パブもほとんどの所がガラガラの状態。これが日曜日の夜というものなのだろう。おとなしく宿に戻り明日の宿を予約してからベッドに入った。

9月28日(月)
 ここの枕はよっぽどあっていたようだ。この日も実にすがすがしく 目が覚めた。時間も6時半とちょうどいい。朝飯までに荷物をまとめて日記を書いて今日どこまで行くかを決める。すでに宿はグラスゴーで取ってあるからそこまで日帰りで行けるところ。と来ればとりあえずインヴァネスはなし。電車で2時間くらいがちょうどいいからと、アバディーンを目指すことに。朝飯のあとで時刻表を確認するとあと1時間しかない。速攻で宿をチェックアウトして早足でウェイバリー駅へ向かう。なんとか10分前には着いたので売店でスコットランド名物アイロンブリューを買って、いざアバディーンへ。昨日同様フォース鉄道橋を渡ってからはスコットランドの風光明媚な景色が広がる。途中からは眼前に北海が開けてきた。天気が良ければスカンジナビア半島ぐらいは見えるのだろうか、

↑工業都市かと思いきや、石造りの町並みが美しいアバディーン。これくらいの規模がちょうどいいんですよ。

 アバディーンは人口2万人ほどの小さな港湾都市だが、近年は北海油田の開発拠点になっているらしく都市部の開発も急ピッチだ。街の中心部は港よりも一段高い場所にあり、そこまで上がるだけでも一苦労。ここもかつては城があったみたいでその時の名残でこういう街並みになっているそうだ。メインストリートが一直線に延び、脇道へは階段でアクセスする。何となくエディンバラのロイヤルマイルにも似ている。歩いているだけでも楽しいが、それに加えてこの街のパブの多いこと。2軒連なってあるなんてのはざらで、どこも月曜の昼間だというのに大盛況だ。さすがにここまで遠いとカスクエールはほとんど見られないが、そんなことはお構いなしだ。地元の人たちに混じって自分もグラスに入ったビールをじゃんじゃん空けていく。
 パブで酒ばかり飲んでいて気づいたらもう3時近く。明るいうちにグラスゴーにつくにはそろそろ出発しなければならない。急いで駅に戻る。大して乗降客も多くないのか駅の係員の人たちもみな自分のことを覚えていてくれている。アジア人が来るというのもよっぽど珍しいことなのかもしれない。電車に飛び乗りアバディーンを去る。次来る時には街のそこかしこで行われていた工事も終わり今よりも数段いい街になっているはずである。
←プラットホームのすぐ後ろがパブ。思わずつられて降りてしまいそう。

 午後6時前にグラスゴーに着いた。今回は宿まで迷うことなく行くことができた。街が碁盤の目状に整備されているので歩きやすい。クライド川沿いにある宿は窓からの景色もいいし、隣にはパブもある。晩飯を、と思い街に出るとこれがどの店も早々に店じまいしてしまいほとんど開いていない。頼みの綱のパブも夜まで食事を出してくれるところは少なく手詰まり状態。仕方なしに宿と同じ建物に入っていたレストランで食べることに。イタリアンなのだがもちろんパスタは避けて、サーモンのマリネとラムチョップを頼む。芋も豆もない食事は久し振りで新鮮に映る。大変満足して宿に戻った。
←グラスゴーの目抜き通り、ブキャナンストリート。エディンバラとはまた違った趣があります。

9月29日(火)
ここ数日深く眠れているからかすこぶる調子がいい。昨晩も結構酒を飲んだのにも関わらず二日酔いも全くなし。勇躍朝飯なのだが、ここの宿の朝食はコンチネンタルブレックファースト。これまでのことを考えると量の少なさに少し混乱してしまう。パンを2枚、バターとマーマイトを塗ったものとヨーグルトだけをとって手早く済ませる。これくらいの方が昼飯が入るからいいってもんだ。ネットでこれからの旅の手配をしてから出かける。今日は近場だけ回ろうということで、電車で30分ほどのスターリングへ行ってみることにする。中世の城がそのままの形で保存されている珍しい場所で、古い街ならばパブもいいのがありそうだと期待を膨らませる。ついてみるとここも城は高台にあり、絵に描いたような城下町だ。早速スターリング城まで歩いて行ってみる、結構上り坂がきつい。しかしこれもその後のうまいビールのためとせっせと足を運ぶ。到着すると街が一望できた。なかな壮観だ。気分を良くしたついでに城の中にも入ってみる。入場料は9ポンド。なかなか複雑な作りで歩いていて面白い。

↑スターリング城からの眺め。近所の小学生や鉛筆片手にスケッチにいそしむ人も。

 一通りまわってからはいつものように城下町のパブめぐり、というところで雨が降ってきた。今回この国に来て初めての雨である。まあ、細かいからすぐに止むかな、と意に介せずビールを飲み昼飯を食べていたら雨はますます本降りに。これでは街歩きどころではないと、そそくさと駅に戻り、いったんグラスゴーまで戻る。

↑グラスー地下鉄は車両も狭いがホームも狭い。柵も柱も何もないので混雑時は少し怖い。

こちらはまだ雨が降るそぶりすらなかったので地下鉄に乗り中心部より少し外れたところを歩く。スコットランドでも指折りの多民族都市だけに中華食材やイスラム食を扱う店も多い。学校帰りの中高生も歩いていて生活感は満点だ。町並みをカメラに収めながら歩き続けているとグラスゴーにも雨雲が立ち込めてきてあっという間に雨が降ってきた。これはたまらないと近くのパブに入り込み、そこからはパブからパブへと雨宿り。雨が弱まったのは7時近くなってからで、今度は晩飯探しで歩きまわり、その中で発見したオイスターバーに入る。「食事がしたいんだけど」とリクエストしたら通された先は格調高いレストラン。まさか2日つづけてこんなところで飯を食べることになるとは!とりあえず生ガキは忘れずに頼みそれに加えてウナギの燻製とアンコウのソテーをいただく。アンコウが予想外の身の締まり具合でかなりいけた。とりあえず満足して宿に戻りシャワーを浴びてそのままベッドへ。明日の朝にはスコットランドともお別れだ。
←多民族都市、グラスゴーでは多くのの肉屋が”HALAL”。

9月30日(水)
 朝起きると同時に身支度を整え宿を出る。今日はスコットランドから再びイングランドに戻る。目的地はランカスター。グラスゴーからは北西部の幹線が通っているので電車の数は多い、これなら気ままに途中下車しても大丈夫そうだ。しかもオペレーターがヴァージントレインと来れば2時間ほどの道中はそれほど苦にならない。一等車に陣取り、しばらくすると朝食をすすめられてきたので喜んで”ブリティッシュ”ブレックファーストを注文。さすがに2日連続のコンチネンタルブレックファーストは堪えられない、と今朝は宿で朝食をとらなかったのでまさに渡りに船状態。しかもかなり本格的だ。さらにこれでタダというのだから驚かずにはいられない。飛行機でも電車でもヴァージンのサービスは飛びぬけている。

↑かつての国境の町、カーライル。歴史ある街は歴史あるパブも多いのがいいところ。

 1時間ほどでイングランドとスコットランドの国境の町、カーライルに止まったのでここで途中下車。レフトラゲッジが見つからず、旅行鞄をひきずったままなのはまあ仕方ない。歩いてみると街の奥にはカーライル城がそびえたち、一方で街中にはパブ巡りのためのバイブル、”Good Beer Guide”に紹介されているハイレベルなパブが密集していた。ちょうど到着して少し経ったあたりでパブが開き始め、どこも地元のジイサンバアサンが集まってきた時間、早速絶妙に管理されたリアルエールをいただく。エールがうまいだけでなく建物自体が古いのもカーライルのパブの魅力的な所。途中頼んだ昼飯も、うれしいばかりのボリューム!この量にもだいぶ慣れてきた。ほんの数時間の滞在ではもったいなかった感じもするが、ランカスターで宿もとってしまったし、電車の時間もあるし再び駅へ。
 ちなみにヴァージンの一等車は無線LANもタダなのでここでメールチェックなどをしておく。ここ数日の旅の予定をすべてネットで予約したので詳しい道なども確認しないといけない。目的地のランカスターには1時間もかからず着いた。ロンドンに続きパブの上の宿を予約しておいた。

↑歴史ある街ということならランカスターも負けていない。石造りの建物が複雑に入り組んでいるさまは中世の町並そのもの

 荷物を置いて早速ランカスターの街を歩きまわる。古くは薔薇戦争からその名が出てくる歴史的な街だけに石造りの建物が立ち並んでいる。都会的なショップはほとんどが中心部のマーケットの中にあるので、街並みの中で見えるのは個人商店ばかりだ。ここがチェスターと違う。そして、ここも狭い街中にいい感じのパブが密集していた。広いラウンジバーで皆思い思いにくつろいでいるところもあれば、狭い店内で客が常連ばかりでバーカウンターを占拠しているところもある。どこもそのパブのもつ性格というもんなのだろう。
 パブを回り続けているうちに日が暮れてくるとランカスターも雨模様に。町中の商店はみな店じまい。人の波も数時間前とは比べるべくもない。こういうときにパブの上の宿というのは非常に助かる。しかもここは地元ランカシャーのブリュワリーが自信を持ってプロデュースしたパブでもあるので飯も酒も充実している。というわけで今晩はここで夕食。頼んだのは小エビのオイル煮とランカシャー式ラムシチュー。ま、乗っている香草がローズマリーというだけで、もしこれがパセリになるとアイリッシュシチューになるわけだが、これが本当にうまい。パブ飯というとそのクオリティは期待してはいけない場合も往々にしてあるが、ここは本当に大当たり!もちろん酒は地元のリアルエール。これだけ大満足した上に外に出ることなくそのまま部屋に直行して寝られる。グレートブリテン島での最後の夜は心地よく過ぎて行った。

↑運河の対岸からパブを撮る。真ん中にいるオッサンはこの後「キレイに撮ってくれよ!」とばかりに尻を出してくれました。
おかげでブレちゃいましたよ。ウワサには聞いていたが・・・恐るべし、UKの酔っ払い。


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