IAN-Gの無謀旅日記 スペインGP&モナコGP観戦編
〜バルセロナ編〜

期間 2010年5月5日〜2010年5月9日
(行ってきた人、文、写真=IAN-G 同行者=いません)

↑太陽と緑に囲まれたカタロニアサーキット。大盛況でした。

5月5日(水)
 ここのところすっかり季節の変わり目に弱くなった。ゴールデンウィークの暖かさに気を抜いていたら、朝猛烈な頭痛とともに目が覚める.確かに昨日はそこそこの量の酒を飲んだが、睡眠時間を考えれば二日酔いするとは到底思えない。念のため風邪薬を飲んで、戸締りをこれでもかというくらい用心深く徹底して家を出る。前回は家のすぐ前にお迎えの車が来たから成田エキスプレスで空港へ向かうのも1年ぶり。いつの間にか新型車両に置き換わっていた。体調を刺激しないように静かに座り続ける。成田へ着くころにはだいぶ落ち着いてきた。これなら飛行中も寝ていれば大丈夫だろう。

 第1ターミナルの人の流れはまばら。いつもなら「休日を海外で過ごす人々」として連休初日に行くことが多いのだが、帰国ラッシュの真っただ中に出かけるとあって出発ターミナルは今までとは違った落ち着いた空気が流れていた。チェックイン待ちの行列もないし、出国のための荷物検査もスムーズに流れていた。早速チェックインを済ます。
 今回は往復ともにマイルの特典航空券を使い、行きはチューリヒ経由でバルセロナへ。航空会社はスイスインターナショナルエアラインだ。スターアライアンスのエアラインでヨーロッパと言えばルフトハンザが真っ先に思い浮かぶが、選択肢が広いのだからと往復で航空会社を変えてみた。出発前の準備も両替だけで搭乗時間までゆるく過ごしてから、赤地に白十字が誇らしげに尾翼にあしらわれたA340-300に乗り込む。昨年の香港旅行でA340に乗ってからというものマン島〜ダブリン間でATR42に乗った以外はずっとエアバス機が続いている。最後に乗ったボーイング機がJALのクラシックジャンボだから、B777の記憶なんかはもはや遠く彼方だ。

↑スイスインターナショナルのA340-300。12時間かかったものの快適なフライトでした。

 さて、機内を見渡すと当然というべきか空席がいつもより目立つ。席はいつもの「中央左通路側」だし余計な気遣いは無用。出発時間が来るとスイス名物の腕時計の如くしっかりと時間通りに、そして精密なコントロールのもと大空へ旅立った。
 水平飛行に移ってからも何度か乱気流に入ったものの終始落ち着いたフライトとなった。いつもの流れで機内食を食べていい気分になったところで一眠り。起きてからはPCを開いて書き仕事をこなす。機内エンターテインメントが故障して映画その他は見られないが、PC&iPodがあるから退屈しのぎには困らない。周りがほとんど眠ってしまっている中、一人ビール片手背中を丸めてキーボードをたたく。フライトは順調に進みいざ着陸となったのだが、窓から外を眺めると一向に雲のただなかから出る気配がない。地上が見えたのは本当に着陸寸前で、チューリヒ空港は冷たい雨がしとしとと降っていた。

(左)チューリヒ空港。とにかくキレイでオシャレ。乗り継ぎも便利。
(右)ヨーロッパ路線で大活躍のA320ファミリー。単通路機にもだいぶなれました。


 バルセロナ行きの便は1時間後なのでしばし空港内を探検してみる。免税店は当然のごとく高級な時計が多数ディスプレイされ、飲食店もシャンパンバーだったりと高級感がにじみ出ている。隣国ドイツのうまいビールを一杯飲んでから再び機上の人に。
 スイスのヨーロッパ路線の機材はA320ファミリーが活躍していて、今回乗ったのは長胴型のA321。ターミナルからバスに乗り、沖止めされた機体へ向かう。小さい分体感速度は速いが安定性はなかなかのもの。さっき突っ切ってきた分厚い雨雲に再び入り込み上空へ。バルセロナまで1時間半の短いフライトは安定した挙動の下終始した。着陸、ボーディングブリッジが渡され、空港に降り立つ。

 もちろんこの間フレディー・マーキュリーとモンセラート・カバリエによる「Barcelona」は頭の中で流れっぱなしである。

 バルセロナ空港のターミナルは床に照明がクッキリと映るほどピカピカに磨かれて非常に印象が良かったが、荷物を拾おうとラゲッジクレームに行くとこれがなかなか動き出してくれない。世界中の観光客が集まり、ロストラゲッジの不安に襲われ始めたところでようやく荷物が出てきた。すぐに確保し晴れて入国。今回の宿はターミナル駅のすぐ近くに取ったので電車で向かうことにする。駅まではシャトルバスに乗り、さらに歩いたところにあるので、使いやすいかといえばそんなことはないが、3ユーロという安さは魅力なので利用者は多い。ここでも乗車待ちの人たちでホームが埋まるまで静寂は続いた。こういうのもラテン気質というべきなのだろうか。確実に満員で運行できるだろうが、ただでさえ大荷物を持って移動するのに満員状態というのは少しキツイ。大部分の人は自分もお目当てのサンツ駅で降りて行った。
 滞在中の週末3日間は毎日カタロニアサーキットまでサンツ駅から近郊列車に乗ることになるので駅の近くを選択。規模が大きく、設備を見るとデザイナーズホテルのような趣をしている。それでいてシングルルームもあり、設備も今まで泊まった同程度の値段の宿に比べれば格段にいい。これは幸先がいい。もう日もだいぶ傾いてきたが、街の空気を感じるために軽く宿の周りを歩いてみる。駅の近くで他にも規模の大きい宿もあるので飯屋も多い。今日一日機内食ですっかり腹一杯だったが、今後の展開を楽にするため早速バルで酒を飲む。使った言葉は”Ola”(やあ!)"Uno Cerveca Porfavor"(ビール一杯ください。)"Est Porfavor"(これください。)"Gracias"(ありがとう。)のみ。これだけでもなんとかなってしまった。飛行機の中でもずいぶん飲んだが、地に足の着いた状態で飲むビールはまた格別にうまい。一度敷居をまたいでしまえばこっちのもの。これで明日以降も臆することなくバルに入り込めるというもんだ。一仕事終えて満足したので今日は終了。13時間のフライトの疲れをとるためにも早めに寝ることにした。
←セルヴェッサ(ビール)とタパス(つまみ)があればどこでもハッピー

5月6日(木)
 夏至が近づきサマータイム真っ盛りというのも好都合なことばかりではない。日本で夏というと朝もはよから太陽がさんさんと輝くが、バルセロナでは地味に日の出の時間も遅く、7時近くにならないと明るくなってくれない。日記を書いてシャワーを浴びているうちにようやくお天道様が顔を出しほぼそれと同時に行動開始。今日は事実上の初日だからもちろんいつも通りに動くことにする。いつも通りと言うのはもちろん足の赴くままに歩きまわることなのだが。
 最初に向かったのは旧市街の目抜き通りであるランブラス通り。まだ観光客が行動開始する時間ではないから人の流れはまばら。キオスクの開店準備をしている人、道路の掃除をしている人、一杯のコーヒーを買ってオフィスに向かう人、この街の素の姿を垣間見ることができる。細かい路地を軽く歩いてからこの通りの真ん中にあるサン・ジュセップ市場に入ってみる。この時間帯は主に近所の飲食店の人たちが仕入れに来るあたりで人の入りもそこそこ。市場内にバルもあり買い物を終えた人たちがひと息いれている。それに混じって自分も朝飯。ただチョリソーをはさんだだけのシンプルなものなのに異様にうまいサンドイッチと、どんな眠気も一発で覚める特濃のエスプレッソをいただく。
 市場を出て少し歩くとまた市場があった。こちらはサンタカタリーナ市場というらしい。先のサン・ジュセップが昔ながらの青空市場なのに対しこちらは現代的な建物の中に入っている。床もきれいだし店の並びもまとまりがある。こちらも軽く店を見てまわってから次の目的地へ向かう。
 バルセロナに来たからには見ておかなければいけない場所、サグラダ・ファミリアへ。
 市内の地下鉄にも同名の駅がある。そこまでするのであれば相当駅から近くにあるのだろうと期待しつつ出口を出て振り返ると目の前に巨大な建物が飛び込んできた。どうやら駅の名前に偽りはないようだ。
 この偉大なる未完成品、当然のことながらいまだ工事中で観光客の合間を縫ってはたらく車が動きまわっている。聖堂内にも入れるようだがチケットオフィスに長い行列ができていたのでパス。それに少し離れていた方が全体を見渡せていい。これが石で造られたとはにわかに信じがたい優雅な曲線で作られたその姿にはただただ感動するのみだった。曇りがちだった空の隙間から青空が顔を出して来たので、好機とばかりカメラにその姿を収めてから街歩きを再開した。

(左)サグラダ・ファミリア。実物はやっぱり大迫力!そして本当に未完成だということを納得させられました。
(右)ポルト・ベイからモンジュイックの丘をのぞむ。空も海も突き抜けるような青色。


 少し歩いたらまた市場を発見!どうやら香港の街市のように地区ごとに作られているようだ。都市部の中心とはいえ住んでいる人が多く、小規模のバルも多いから重宝するのだろう。何軒寄っても飽きることがない。気づいたら結構な距離を歩いてしまった。今どこにいるかも見当がつかないので、最初に見つけた地下鉄の駅から市内中心部に帰る。自分では徐々に中心部に向かっていると思ったのだが実際にはその逆でどんどん離れていた。生活観あふれる街並みを楽しめたのでまあよしとしよう。
 市内に戻ってからはモンジュイックの丘、ポルト・ベイを練り歩き、昼飯を求めて再びランブラス通りへ。お昼を過ぎたこの時間になると人の量は一気に増え、テラス席を作るレストラン、似顔絵描き、ハナ肇の銅像の人で通りが埋まっていた。少し裏道のバルでも入るかと表通りを外れてみたらこんな明るいにもかかわらず角々に客待ちのオネーチャンがたむろしていてこれではたまらないと再び大通りに。どんな商売も人通りの多い方がよろしいようで。
 しばらくしてサン・ジュセップ市場に戻ると店は多くが片付けを始めている時間帯だったが飲食店はまさにかき入れ時のただなかで、どこも混んでいるがその中で空いてる席を見つけ昼飯に。店先に海産物がたくさん並んでいるので指さし注文でマテ貝を注文。スペイン滞在初日で早くも貝をむさぼるという至福を得ることができた。あまりに堂に入った食いっぷりだったのか、隣に座っていたオッサンに地元の人と思われたのはご愛敬。すでにポルト・ベイでも「地元の人ですか?」と間違われたのでこれで2度目。どうやらラテン系の顔つきに見えるらしい。

(左)サッカーファン垂涎の聖地、カンプ・ノウ・スタジアム。試合は無いので閑散としていましたがサッカー場としては破格の大きさ!
(右)バルセロネータのビーチ。こんなに明るいけどもう夜の7時。


 ここまでひたすらに歩き続けて、夕方5時ごろにいったん宿に戻りシャワーを浴びて再び外へ。市民の憩いの場、バルセロネータのビーチに繰り出す。飯屋くらいはあるだろうと行ってみたのだが表通りは客引きのうるさいところばかりでゆっくり歩くどころの話ではない。ただ、ここも普通に人が住んでいるので裏通りのバルにいい味のところを見つけることができたが、酒だけ飲んで晩飯はお預け。もう少し市内に戻ったところで適当に入ったバルでようやく落ち着く。ここではエビのオイル煮と「アロス・ネグラ」と呼ばれるイカスミパエリアを食べる。バルセロナのパエリアは一人でも食べきれる量なのが素晴らしい。ここも旧市街の中心部にありながら地元の人が大勢を占めるところで実にいい選択をした。腹もいっぱいだし、ビールも飲んでいい気分なったので今日はこれで終了。ナイトライフがない、というのもサマータイムの泣き所だと思う。
5月7日(金)
 バルセロナも週末を迎えいよいよバルセロナに来た目的目的であるスペインGPが開幕した。しかし、そんなことを言いながら今日は見に行くかどうか決めかねていた。テレビ桟敷で見ている人間の悪い癖で「金曜フリー走行はいいだろう」と思っていたからだ。いつものように夜明け前から日記を書いてテレビで天気予報を確認すると週末が雨と言っているではないか!ということはドライコンディションでF1マシンを見ることができるのは今日しかないかもしれない。それにこのイベントのチケットは現地でもらうので土曜日に行って雨の中道に迷うのも避けたい。まあ、軽く下見の意味を含めて行ってみることに決めた。

 朝のサンツ駅は通勤客などでいつも混雑しているが、今朝は赤い帽子に赤い上着の人たちがひときわ目立っていた。みな目指すところは同じらしい。駅の自動券売機にもサーキットの最寄駅行きまで買える専用ボタンが追加されていて切符を買うことには不自由しない。切符を手に入れ、朝飯を食べていざ出発。しかし、バルセロナの鉄道はまさかの観光客泣かせの路線だった。
 スペイン国鉄RENFEの近郊路線は結構な数が運行されていてサンツ駅はそのほとんどが停車する。しかし、路線名がちゃんとついているのにホームには何の表示もないし、時刻表も目立たないところに分かりづらいのがひっそりとあるだけ。電光掲示板もメインのものは全路線をごちゃまぜに表示するだけで、とにかく途中の停車駅がわからない。さんざん迷った挙句お目当ての電車を見つけてようやく乗り込む。明らかにアロンソ応援団風の人が結構多いが普通に席が埋まるだけで立っている人はいない。
 途中駅で乗ってくる人も少なく30分ほどでサーキットに最寄りのMontmello駅に着いた。乗客の9割9分強がここで下車したようでホームはもちろん大混雑。帰りの混乱が容易に予想できてしまうような小さな駅だった。ここからは徒歩にて目的地へと向かう。駅前はそこそこ開けていてこのかき入れ時のためにバルがテラス席を用意したりしている。さらに進むと今度はグッズショップが立ち並ぶ。ここらで売られているのは非正規品だろうから皆ここは素通りしている。そしてサーキットが近づくと道は一気に未舗装路に変わった。ここからはちょいとしたハイキングだ。朝の涼しさに合わせた服装では暑すぎる。テレビに映る人たちの服装がアウトドア然としているのはこういうことなのかと納得。それでもひたすらに足を前に出していると徐々にエゾーストノートが聞こえてきた。

↑カタロニアサーキットまでハイキングコースが続く。道のりは遠い。

 ようやくサーキットの入り口に到着。チケットを手に入れいざ入場。ここまでも結構な距離を歩かされるがそれも歩き切りスタンドへ入ると早速すぐ目の前をウエバーが通り過ぎて行った。間髪入れずにミハエル、バトン、ハミルトンも続く。生で見る走るF1はとにかく迫力が違う。特にエキゾーストノートはあまりの甲高さで比喩ではなく鼓膜を突き破りそうな勢いだ。以前ゴールドコーストでCARTを見たときは耳栓なしで大丈夫だったのでそういう準備をせず来たがそれは少々甘かった。
 午前のセッションを終えビール片手にサーキット周辺を歩いてみる。コース上ではGP2の予選が行われいて熱心なファンがカメラ片手で観戦している一方でオフィシャルのグッズショップは大盛況。土地柄フェラーリが幅を利かせているほか、マイルドセブンやING時代のルノーのグッズも見ることができる。そのすぐ脇はメインのグランドスタンドだが金曜日だからなのかセキュリティはゆるく、空席も多いので普通に入って見ることができた。カメラのズームを使えばピットの様子も見られるが、その上のパドッククラブがうらやましくなる。そんなことをしているうちに午後のセッションがスタート。耳栓を用意してスタンド最前列でカメラを構える。相変わらず下手だけどピットから出ていくスピードの乗らないうちを狙って撮っていく。どちらかといえばファインダー越しでばっかり見ていたが初日は存分に楽しむことができた。

↑官能的なエキゾーストノートを奏でつつF1マシンが走り抜ける。ファンのお目当てはもちろん、スペインが誇るフェルナンド・アロンソ

 P2終了と同時に帰途につくことする。予想通り駅は人であふれかえっている。それでも乗車率は120%くらいで座って帰ることはできた。この時点でまだ5時、空はまだまだ青空でこのままバルセロナに戻るのはもったいないのでサンツで降りず、更に30分乗って海沿いの街シッチェスへと向かった。魅力的な街並みで観光客も多いがそれ以上に地元の人たちが家族連れで週末の午後を楽しんでいる。ここまでの疲れをいやすためにバルでビールを飲んだが、当然日本人が一人で乗り込んでくるものだから好奇のまなざしが突き刺さってくる。
 「見せもんじゃねえ」と心の中でツイートしつつピンチョスをいただく。

↑地中海に面した街、シッチェス。白壁の建物は青空だともっと映えるんでしょうね。

 結局なんだかんだでバルセロナに戻ったのは8時頃。パセジ・ダ・グラシア駅周辺のおしゃれなバルでワイン片手にタパス三昧の晩飯を食べてから宿に帰り着いた

5月8日(土)
 朝起きてしばらくすると夜明けが来るのだが、今日はひときわ明るい。天気予報ではアンダルシアをのぞくイベリア半島全土が雨のはずだったのだがそんな気配は微塵もない。むしろこの太陽おおかげで気温がグングンと上昇している。心の中で「今日雨だなんて予報出したの誰だよ?」と叫びつつもこのお天道さまに感謝しつつサンツ駅へ向かう。昨日より明らかに赤い服を着ている人口が増えている。駅員の数も多いし、分かりにくかったプラットホームも「モンメロ駅は○番線から」などの表示が徹底されていて完全なF1シフトになっていた。

 満員電車に乗り続けモンメロ駅へ。人の波は昨日の倍くらいだろう。山の中にあるサーキットだから全方位日差しと青空に包まれる。こんな気持ちいい環境の上にすぐ前をF1マシンが駆け抜けていく。これは筆舌に尽くしがたい幸せだろう。スタンド席は入り口に係りの人が立ち、昨日のように自由にどこでもいけるというわけではない。今日も各マシンが他と競うことなく単独でタイムアタックするからこの日もカメラに収めることをメインにすえて自由席で一日過ごすことにする。スタンド席買ったのにね。とにかくこんな開放感たっぷりの中で人に囲まれて自由に動けないのは避けたいのだ。
 自由席はたいていマシンを近くで見られるため撮影には絶好のポイントが多い。反面レースの流れがつかみにくいというわけだ。この辺でカメラを構えている人は本気の人も多くそのすぐ下で仕事中のプロのカメラマンと比べても遜色ない機材を持ち込んで撮影している人も多い。自分もそれに混じってじゃんじゃんシャッターを切りまくる。

↑手にするはカメラとビール。芝生の上、思い思いのスタイルでマシンを追う。サーキットには楽しみ方がいっぱい。

 午前のP3セッションのあとはビール片手に撮影ポイントを探しに行く。自由席は午後になってさらに人が増えたためカメラを構える隙間がないほど混雑している。ホームストレートから見て左奥の辺りがそこそこ見晴らしも良く予選はここで見ることに決定。Q1,Q2,Q3とこの周辺で場所を変えつつ写真を撮る。
←予選が開始。サーキット中が注目する中でのアタック。

 予選も大盛況のうちに終わり、一気に帰宅ラッシュが始まる。通る道通る道人で埋まっていて大渋滞を引き起こしている。車で来ている人やツアーなどで大型バスで移動する人が多いので駅までの道は普通の速度で歩けるが、駅に着いたらやっぱり大混雑だった。結構な数の人がやっているように駅前のバルでピークが過ぎるのを待つという手も考えられるくらいの混みようだったがそのバルも満席なのでおとなしく駅構内に向かう行列に並ぶ。臨時の改札口も作られてすぐに入れたが電車に乗ってら乗車率180%強の満員状態で疲れは倍増。さすがに今日はそのままどこかに行くのは無理、という結論に早々に達したので宿に一直線に戻りシャワーを浴びてひと眠りする。炎天下の東南アジアの都市で一日歩きまわって夕方宿に戻ってエアコンがガンガンに効いている部屋で一息入れるのとおなじ気持ちよさがあった。

 さて、ここから晩飯を求めて外に出るわけだが、市内中心部のおしゃれバルはやっぱり一人ではいづらいので駅の近くのまさに地元の人のための店を探していたら、街角からなにやらご機嫌な音楽が聞こえてくる。音楽につられてフラフラと、これではまるでハーメルンの笛吹き状態だが、すれ違う人の服装が普通ではないところを見るとどうやらお祭りらしい。交差点のところで人々が集まり、組体操のようにタワーを作っては別段そこから飛び降りるというようなことはなくそのまま静かに降りるだけという、凄いのか凄くないのか判断付きかねる祭りだ。村人総出で牛を追いかけたり、トマトをこれでもかと投げつけたりする祭りばかり有名なスペインだが中にはこんな地味なものもあるようだ。一体どんなクライマックスが待っているのだろうと晩飯さがしも忘れてついつい見てしまった。結局ずっと同じタワーづくりをしていて、この祭りの趣旨が何なのかもわからないまま急に周りが拍手喝采に包まれた。どうやら終わったらしい。

↑やっていることはすごいけど、ものすごく地味。実際のところこれが本当に祭りなのかどうかも怪しいところ。

 結局、晩飯はめんどくさくなったので宿併設のバルで食べることに。食べ終えて部屋に戻ってそのまま寝てしまった。
5月9日(日)
 ここまでの連日のハイキングで疲れがかなり溜まってきている。しかし、今日は決勝日。これだけは何としても見逃すわけにはいかない。いつも通りの朝を過ごして駅へ向かう。と、その前に隣接するバスターミナルでバスのチケットを確保する。明日にはバルセロナを後にして早モンテカルロを目指すことになる。一直線で向かうのはさらに疲れるだけなのでまずはアンドラまで行くことに決定。一仕事終えカフェで朝飯を食べて今日もいざ出陣。
 行きの電車は拍子抜けするくらいに空いていて楽々座って行けたが、駅についてみれば相も変わらず大混雑。サーキットについてもそれは変わらなかった。自由席は少しでもいい場所を得ようとした人たちでほぼ立錐の余地なし。決勝はスタンド席で見ることにする。しかもそこそこ空席の目立つスタンドを選んで買ったらその後も売れ行きが芳しくなかったのか特に下段席がガラガラで、これならわざわざチケットで指定された列のまん真ん中に座ることもなく伸び伸びと観戦できる。下段スタンドでもその再上段まで行けば見晴らしもいい。GP2、ポルシェカップと決勝レースが行われ、ドライバーパレードを経て一時半ごろにマシンがスターティンググリッドに着くべくコースイン。こっちもビールを買い決勝に備える。天気は昨日よりは雲が厚いもののおおむね晴れ。サーキットがフェラーリの旗とスペインの旗で真っ赤に染まる中、午後2時に決勝がスタートした。
 
↑アロンソマニアで自由席はビッシリ。しかし彼らの応援もむなしく、ウエバーが独走で今季初勝利。

 1コーナーにマシンが殺到して、ここでトップをキープしたウエバーがあっという間に独走態勢に入っていく。各チーム冬の間テストで走り込むためか、全グランプリ中最も番狂わせが起こらないのがスペインGPだが、今年も例年通りの展開になった。序盤の見どころはタイヤ交換直後にベッテルをハミルトンが毎度のように無理目にオーバーテイクしたことと、ミハエルがバトンを抑え込みようやく7タイムスチャンピオンらしい走りを見せたことくらい。展開的にはバーレーンのような淡々としたレースとなった。観客の期待を一身に背負うアロンソは終始単独の4位走行を続けていて地元のファンも一向にテンションが上がらないまま終盤へ。ここでまずベッテルがブレーキトラブルで緊急ピットインをしたところで軽くスタンドが沸き、残り2周でハミルトンがリタイヤするとファンは総立ち。結局2位フィニッシュでファンも満足。1年に一度のお祭り騒ぎは今年も大団円となった。

↑レースのあとに待っている帰宅への苦難の道。これを乗り切れば心地よい疲れが待っている。

 レースが終わり帰宅ラッシュが始まる。駅に戻る人の波はこの3日で最も多く、駅構内は入場規制を行うほど。おかげでそこそこスペースが確保できるほどの混雑具合でバルセロナまで帰りついた。すぐにバルへ駆け込み一人打ち上げを行ってから宿に戻る。明日の行き先も決まったので宿を予約したらもう動きたくなくなくなりまだまだ明るい8時過ぎには寝てしまった。もったいない気がしたが、腹も減っていないし、日本でテレビの前で見る時も同じようなものだということで良しとした。それに、もうどこかへ出かける気力もない。スペインで過ごす最後の夜は暗くなる前に終了した。
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