IAN-Gの無謀旅日記 スペインGP&モナコGP観戦編
~アンドラ→トゥールズ移動編~
期間 2010年5月5日~2010年5月9日
(行ってきた人、文、写真=IAN-G 同行者=いません)
↑雪残るピレネーから青空のコート・ダジュールまで。グランプリを追ってヨーロッパを東に進む。
5月10日(月)
昨晩十分に寝たので体力はすっかり回復した。今日はバルセロナを発つ日なのでまずは荷物をまとめることにする。何も買っていないのでいたって簡単に終了。後は11時半までにサンツ駅のバスターミナルに行けばいいのでそれまで宿でグダグダしていてもいいのだが、あまりにもいい天気だったので外に出ることにする。熱狂のグランプリウィークが終わり、街中にあれほどいたアロンソマニアの皆様も全くと言っていほど見なくなってしまった。今日からはまた普通の一週間が始まったようだ。
旧市街方面はすでに歩いたので、サンツ駅から歩いていける範囲内をカメラ片手に進む。エスパーニャ広場も今日は観光客が少ない。そこから地下鉄の駅沿いをぶらつき適当なところですっかり気に入ってしまったボカディーリョとエスプレッソの朝飯を食べる。フランスもそうだったが、スペインもシンプルなものがうまい。
↑太陽がまぶしいバルセロナの朝。一週間がまた始まる。
朝日がさんさんと降り注ぐ街を3時間半ほど歩き続けてからサンツ駅に戻る。スペイン国内行き、ポルトガル行き、フランス行きと長距離バスの行き先は様々だが、その中で選んだのは仏西国境にぽつんとあるアンドラ。モナコ、ルクセンブルグ、リヒテインシュタインのような中世の名残で現在まで続くミニ国家だ。
チェックインを済ませ、バスに乗り込む。自分のように一つでも多くヨーロッパの国を制覇したい!と息巻くバックパッカーから仕事の電話がひっきりなしにかかってくるビジネスマンまで乗客も様々。あまりにもきれいな青空の下バスは走り始めた。最初こそハイウェイを飛ばしていたが途中からはバスに似つかわしくない細い山道を進み、かすむほど遠かったピレネー山脈がどんどん大きくなってくる。まるで日本の峠のような山道にぽつぽつと集落があった風景が一気に変わったのは目的地のアンドラについてから。国境で警察のセキュリティチェックを経て四方を山に囲まれた都市が出現した。バスを降り、予約しておいた宿で荷物をおろして街を探検することにする。
↑大自然と高級ブランドの看板がミスマッチのアンドラ。免税ゆえにこんな僻地でも物価は安いのだ!ビール一杯1.2ユーロはUK並み。
アンドラは小国ゆえタックスヘイブンを採用していて、そのため買うものすべてが免税品となる。そのためメインストリートは酒、たばこ、香水、化粧品、電化製品の店が並び、商品の並べ方も空港で見かける免税店を彷彿とさせる。香水がどれだけ安いのかは全く分からないが電機屋に行くとデジカメやらノートPCがかなり安くなっている。必要ないものでもついつい衝動買いしてしまいそうだ。
↑新商品ももちろん充実。コレもさっそく売ってました。長居するとあっという間に散財しそう。
そんな買い物天国のアンドラだが、飯となると食道楽国家に囲まれている割にそれほど目立ったものがない。さすがにこの地理条件ではそれもうなずける。バルの定番プラトス・コンビナートスを食べて一休みしたのちもう少し歩くが突然雨が降ってきたのでいったん宿に戻る。こういう天気が変わりやすいところはやっぱり山の中だ。腹はいっぱいだがもう少し飲みたいので再び外に出ると宿のカフェテリアはスペインから来たと思われるジイサンバアサンに占拠されていた。それを横目で街に出ると暗闇からマネキンがふいに姿を現すので少し怖い。治安は良くなりそうだが。バーを見つけて飲み直していたところでいったんやんだ雨がまた降ってきたので宿に戻ることにした。
←アンドラが山の中であることを思い出させてくれるのが川。かなりの急流。
5月11日(火)
いつもよりゆっくりの8時半に起きる。すでに太陽は顔を出し、青空が気持ちいい。ジイサンバアサンが歓談するダイニングルームの隅っこで朝飯を食べ、宿をチェックアウトする。今日乗るバスは午後の2時発なのでそれまではフリーだ。今日もピレネーの雄大な風景をカメラに収めようと思ったら、デジカメの液晶が割れていることに気づいた。そろそろ潮時かな、とは思っていたが急に買い替え時期が来てしまった。しかし、幸いここは免税店国家、アンドラ。新しいカメラを新調する千載一遇のチャンスとも思ったが、ファインダー越しに撮れば全く問題ないし、いかにアンドラが買い物天国とはいえ品ぞろえに関しては日本に、いやアキハバラに勝る場所はないだろう。何とか思いとどまり帰国するまでは今のを我慢しつつ使うことにする。実際液晶以外はいたって快調なのだ。
↑移動日がいい天気だと、それだけでこちらのテンションも上がってきます。
途中何度かビール休憩をはさみながら歩きまわり、次の目的地に向かうべくバスターミナルに向かった。行き先はピレネー山脈のフランス側の玄関口、トゥールーズ。バルセロナから行くのと同じ3時間のドライブだ。ただ、大きく違うことがあって、バルセロナから行く時は快適な大型バスだったが今回はワンボックスに毛が生えた程度のマイクロバス。乗客は自分を含め、孫に見送られたおばあさんと、この路線を使い慣れている感じのオッサンと、バックパッカー風の一眼女子のたった4人。いたって軽快に走り出した。
↑トゥールーズへ向かうバスはこのサイズ。フランスへ行く需要はあまり無いようで。行く手に待ち受けるのはピレネーの万年雪。
フランスに行くためにはピレネー越えは必須。アンドラ市内を出てしばらくすると道のあちこちに雪が見えて来た。山の方を見てみるとスキーくらいは余裕でできるくらいの雪が残っている。昼はスキー、夜はショッピングというのがアンドラの基本パターンということらしい。しばらく真っ白な中を走り続けるとそれまでスペイン語だった標識がフランス語に変わった。休憩で山の真ん中に突然現れたドライブインに止まった後しばらくすると幹線道路に入り、時間通りにトゥールーズに着いた。宿は駅のすぐ前だし、ストレスはゼロ。明日のニースまでのチケットを手配してから少し街を歩きまわる。旧市街の街並みがきれいなのはヨーロッパではお決まりだが、なんと言ってもここはエアバスのお膝元。街の光景にテスト飛行のA380や、部材を運んできたのだろうベルーガがガロンヌ川沿いを行き来している。何も考えずに来てみたがいいものを見させてもらった。
ひとくされ歩きまわってから晩飯を食べる。そのあとさらにもう一杯とバーを探すとアイリッシュパブがあったのでついついフラフラと入ってしまう。店の性格上、英語が通じるのが何より助かるし、ギネスやキルケニー、マグナーズのサイダーを片手にテレビのクリケット中継を見ているととにかくホッとする。ホッとしたところで宿に戻って今日はこれで終了。明日は少し早起きだ。
5月12日(水)
今までもバスや電車での移動は幾度となくしてきたし、少しくらいの遅れなら「これも旅の楽しみのうち」と思ってきたが、さすがに今日はうんざりしてしまった。
トゥールーズからニースまで11時間の旅である、何も無かったら6時間ほどで終わるはずの。
↑地獄行き電車がマタビオ駅に滑り込む。1時間ほどで着くはずのマルセイユまで5時間かかりました。
朝の6時には起きてさっさと荷物をまとめてすぐ向かいにあるマタビオ駅に行く。いつも移動の日となれば快晴続きの旅なのだが、今日だけは珍しく雨で幕を開けた。これを不吉の予兆ととると今後ロクなことがないのでそれはやめておこう。
ニース行きのチケットは直行こそ取れなかったもののマルセイユで1回だけ乗り換えするというもので、万が一4人掛けの席の窓側になっても途中でリフレッシュできるからいいや、くらいの考えであまり考えずに列車に飛び乗った。初めこそ順調な旅のはずだったが最初の停車駅のところで乗客がみんな降りる準備を始めた。時刻表を見てもその時間に止まる駅なんてないし、少し様子を見ることにする。着いた駅はモンペリエ。みんなさっさと降りて行ってしまい車内の照明すら消えてしまったのでさすがにこれは怪しいと自分も降りてみたら電車は急にモンペリエ止まりに。ホームは途方にくれる人たちでごった返した。
向かいのホームにマルセイユ行きが来るのは30分後、しかしその30分前の時点ですでに「40分遅れます」と表示され うなだれる。それでもこういう緊急事態だから少しは早く来るのでは、と甘い期待をかけてはみたがそれもなく、フランスの鉄道特有のけだるそうな動きでホームに滑り込み、当初の40分よりさらに30分遅れでようやく出発した。もちろんこの駅から普通にマルセイユに行く人もいるので乗客が入り切るわけがなく窮屈な車内を避けてデッキに座り込む人たちも自分も含めて相当数に上った。聞くと皆ほとんどがニースを目指しているということだったが、中には今日中にミラノまで行くというつわものもいた。言葉はあまり分からないが和やかな雰囲気がデッキに流れる。しかし、出発から30分くらいでまたしても電車がストップ。周りはブドウ畑しかないただなかにポツンと停車する羽目になった。明るい雰囲気が一気に沈み始める。
「どうやらアビニョンの駅で電気トラブルがあってその影響みたい」と同じデッキにいたフランス人のオネーチャンが英語で教えてくれた。こういう状況になると乗り合わせた人たちで連帯感が生まれるというのはどうやら本当のことだった。さすがにこの閉塞感の中で黙っているのも無理な話だ。結構話がはずむ。まあ、止まっている間にそんなこと冷静に考えられたわけもないが。
←マルセイユのこんな風景を撮れたのがせめてもの救い・・・だと思っておかないと。
再びここでも1時間足止めを食らい最終的にマルセイユに着いたのは本来ならとっくにニースについているはずの3時。もうここまででウンザリなのだが、さらにここで30分待ってようやくニース行きの電車に乗り換え。もちろんこの電車にもマルセイユまでの道中で足止めを食らった人たちが大勢乗り込み、さながら帰省ラッシュの新幹線のよう。しかもこの列車がブリュッセル発ということもあり長旅用の特大サイズのスーツケースを引く人が多く混雑に拍車をかけていた。それでもカンヌでかなりの数の人が降りたのでデッキに座り込んだままで終始することだけは避けられた。最終的にニース駅に着いたのは6時半。予定より3時間遅れの到着だった。ま、これも半年経ったらいい思い出かな。なればいいけど。
で、二度目のコート・ダジュールである。宿はバルセロナの時と同じく駅へのアクセスが良好な所を選んだ。すでに観光客が来るようなロケーションではなく、バックパッカーのような感じのところ。部屋の鍵もファンタジー映画でおなじみの山が三つだけのものだった。しかし、宿の親父は気さくで、英語も通じるし、こっちの言うことに「ワカリマシタ」「アリガトウゴザイマス」と日本語で返してくれたり、「夜遅くなってカギが閉まっていたらドアをドンドンやってくれ、すぐ開けに来るから」と言ったりで、つまるところ崇高なアナクロニズムで成り立っている宿なのだった。そうでもなければこの超ハイシーズンに普段と変わらない一泊40ユーロを貫き通すことはまあ無理だろう。
早速腹も減ったことだし晩飯を求めに街に出る。さすがに市内中心部までは結構あるが、青く輝く地中海を見ながら歩けばその距離は苦痛にならない。まずはビールを渇いた喉に流し込みムール貝とイモを無心でむさぼる。それでも少し足りなかったのでパスタも食べてようやく満足。部屋にはテレビも無線LANもないので日記を書いてから寝ることに。
↑この疲れを癒すには貝をむさぼるしかない!というわけでムール貝を。イタリアに近いからパスタもうまい。