IAN-Gの無謀旅日記 スペインGP&モナコGP観戦編
〜モンテカルロ編〜

期間 2010年5月13日〜2010年5月16日
(行ってきた人、文、写真=IAN-G 同行者=いません)

↑ガードレールに囲まれたモンテカルロ。年に一度の特別なウィークエンドが始まる。

5月13日(木)
 ニースの宿で目が覚める。今回の宿は窓こそあるものの光はあんまり入り込んでこないので時間の感覚をつかめないまま朝のひと時をぐだぐだと過ごす。ま、最終的にシャワーを浴びて行動開始としたのが7時半で、朝飯が付いているので一階の食堂、兼ロビーでフランスパンのみのこれ以上ないシンプルな朝飯を食べる。宿のおやじのテンションの高さは今日も相変わらずで、「コーヒーでも紅茶でも、ワインでもウイスキーでも日本酒でもなんでも用意するぞ」なんて言ってくる。これが果たして冗談なのか本気なのかは測りかねる。それにそんなこと言ったらこっちだって普通に「じゃ朝っぱらだけどビール!」と返したくなってしまうが、まあそこは無難に紅茶をリクエストした。フランスのフランスパンはとにかくうまい。とりあえず腹ごしらえを終えて、勇躍モンテカルロへ向かうことにする。すでに行ったことのある土地だけにサクサクと行きたいところだが、券売機が硬貨か、ICチップのクレジットカードしか使えない上に、あいにく小銭が切れていたので窓口の列に並ぶ羽目になる。しかし、このニース→モンテカルロ間はロンドン地下鉄並みの頻度では運行されているのでバルセロナの時に比べればかなり余裕のある車内だ。
 真っ青な地中海がトンネルに消えてモンテカルロの駅に着くのも了解済みだったが、いざ降りてみると普段と違い交通規制の連続となっていた。地下通路からタバコ屋コーナーに抜けられる通路なんかはもちろん閉鎖。というより海岸沿いへ向かう道は軒並み通行止めになっている。結局客席まで歩かされることになるのだがそこは国の首都のメインストリートをコースにするだけに歩いていても飽きることはない。

(左)狭いモンテカルロだからスタンドが橋の上に作られるのも当たり前。一番上は怖そう。
(右)サーキットに向かう道にある店は大忙し。優雅なランチを期待するのは難しいかも。


 チケットを手に入れて早速サーキット、というより市内に向かう。モナコは三日間の通し券ではなく木、土、日と単独で買うので週末を通じていろいろなところから見ることができる。今日はタバコ屋コーナー入口の立ち見席、ガードレールギリギリを通るところで、マシンを目の前で見られるだけでなく周囲の空気を切り裂き、排気音が五臓六腑を直接刺激するのまで感じるこができる。その反面あまりに近いので金網が二重になっていて写真を撮るのにはちょいと不都合。それでもデジカメを金網の向こう側に通してなんとか撮影をする。さすがにファインダーをのぞけないので失敗が多いがなんとか絵になりそうなものが何枚かとれた。

↑モナコの最前列とマシンの距離はこんなに近い!すぐ後ろはカフェで食事も酒も移動なしでOK.

これに調子を良くして午後も撮りまくったが、P2終了間際からポツリポツリと雨が降り始めセッション終了後早い人はもう帰ろうかというときに雨が本降りになった。雲の流れは速く隙間からは青空が見えていたのですぐに止むと踏んで雨宿り。はたして30分ほどで青空がモンテカルロに戻ってきた。もう少し歩きまわってからニースへ帰ることにする。

↑客席の向かい側はクルーザーの品評会状態。金網が邪魔しない特等席でもあります。次回はぜひアッチ側から見たいもんです。

 夕方はまず来週月曜の移動の手配から手を着ける。しかし行動が遅かったか、午前のTGVは全部満席。午後一発目、1時台の席がなんとか取れたが、その日のうちにロンドンに行くとなるとちょっときつい。最短の乗り継ぎで行けなくはないが着くのは夜だしパブもすぐに終了の鐘が鳴ってしまう時間になってしまう。急ぐあまりまたしてもフランスにしてやられるのも癪だ。どうやらパリで一泊は覚悟しなければならないようだ。
 ロンドンでの過ごし方をシミュレーションしつつ晩飯を食べることにする。海岸沿いの飯屋は海の幸てんこもりで、前回は電車の時間がギリギリになってしまいブイヤベースをマッハで食べざるを得なくなり十分に楽しめなかった因縁の場所だ。今日は十分にある。前菜はもちろん生カキ。まるっきり季節外れではあるがここまでマテ貝を食べ、ムール貝を貪ってきたのであればこれはやっぱり外せない。”R”がつかない月でも生カキって本当に素晴らしいものですね〜。と悦に浸ってからメインのエビのグリルがきて、さあ食うか!と息巻いたところで隣の席から「それなに?」と声がかかってきた。オランダ人ということで英語は問題なく通じるから話し始めるとモータースポーツ関係の仕事をしているらしく、レース談義に花が咲いた。はっきりいってこれまでこの関係の話を深くできることはまずなかったのでついつい話し過ぎてしまった。まあちょっとはしゃぎ過ぎてしまったかも。今回の旅行は今までになく人と話すことが多い、これはこれで楽しいもんだ。宿に着いたのは10時半。今週末も面白くなりそうだ。
5月14日(金)
 今日も気持ちよく目覚めて朝飯を食べに行く。と、宿の親父が「昨日海岸沿いレストランでお前さんを見たけど隣で一緒にしゃべっていたのは誰だい?」といきなり訊いてきた。このオッサン、どれだけアンテナが高いんだ?

 モナコGPが木土日開催というのは世界の常識なので今日はゆっくりしようかと思ったのだが何も無いのであれば普通にレーストラックを歩けることを思い出して今日もモンテカルロに行くことにする。GP2の第一レースがあるのでコースが解放されるのは1時半からだから午前中はのんびりとコート・ダジュールの太陽を浴びて午後からモンテカルロに向かうことにする。駅に着くと今日は出口も閉鎖されておらずどのスタンドも自由に入ることができた。ガードレールがところどころ外されレーストラックにもアクセスができる。道路沿いのカフェはトラック上にテーブルを出して商売にいそしんでいる。以前もなんでもない平日に歩いたことがあるが、看板、金網、ガードレールがあると雰囲気がまったく違う。改めて一周してしまった。
↑金曜日ならピットロードだってパドックエリアだってズンズン入り込めます。レッドブルのホスピタリティブース”Energy Station”は超豪華。
 実はコレ、浮島の上に建っています。中に入るにはもちろんパスが必要なので入れませんでしたが・・・


 またこういう自由な日ならではの楽しみとして、土日のチケットを提示することでピットロードに入ることができた。どのチームもメンテナンスで忙しい。夕方になると車検やタイヤ交換の練習などでガレージからマシンが出てくるのでどこも人だかりができている。動いていないとはいえ間近でF1マシンを見ることができるのは感涙もの。写真も相当数撮ってしまった。

↑金曜日もスタッフの皆様はお仕事。フォースインディアはタイヤ交換の練習。ルノーは車検のためにマシンを運び出す。

 とにかくサマータイムでいつまでも明るいから時間が過ぎるのも忘れてしまう。フェラーリ、ヴァージンあたりのピットクルーが仕事を終えて帰る頃ようやく自分もニースに帰った。決勝日よりも長居してしまった。
 カジノスクエアのカフェ・ド・パリで昼飯を食べたのが遅かったので晩飯をどうしようかと考えた末に宿の近くで見つけたいい感じのブラッスリーでニース風サラダを食べつつ、テレビでやっていたラグビーを見る。今日も実に充実した一日だった。
5月15日(土)
 この二週間でこれでサーキットに足を運ぶのは6回目。そろそろこのサーキットのある風景が当たり前になってきた。というより観客としているのには疲れてきた。このペースでF1サーカスを追うのならばいっそこの世界の住人になってしまいたいくらいだ。
←予選を観戦したKスタンドの下はこんな感じで鉄骨のジャングルが広がります

 そんなモナコの週末だが、今日は予選日だから是非ともみなければなるまい。しかし、ニース駅は朝も早くから大混雑。モナコ行きの電車だけは係員がホームに誘導している。もちろん車内も満員なのですっかりフランスの鉄道では一番のお気に入りになってしまったデッキの補助椅子に座る。この席、4人向かい合わせ席に座るよりも遙かに気を使わずにすむし、閉塞感もない。ただ、ここが一番いいと思われるのもSNCFとしては不本意だろうなぁ。比較的快適にモンテカルロに着いたが、やっとサポートイベントのルノー3.5の予選が始まったばかりだというのに続々と人が入場していく。今日は木曜日見た席から少し先のところのスタンド席。タバコ屋からプール前くらいまで見渡せるが、肝心のスタンド目の前は壁際がレコードラインで死角に入ってしまう。レーシングカーをすぐ近くで感じることができる代償とも言えなくもない。まず午前中のルノー3.5でカメラポイントを探る。手持ちのデジカメでは金網のかからないところは小さく、大きく写せるところは金網がかかってしまい妥協しつつ撮ってみる。そうしてまずはP3を観戦。相変わらずファインダー越しで見ることがつづくが、これが楽しくて仕方がないのだ。すぐ下で撮っているカメラマンをうらやましがりつつ自分の視界を切り取っていく。

↑ジャングルを抜けると開放感抜群のスタンド席へ。見晴らしもよく、マシンもかなり近くを走ります。金網はやっぱり邪魔ですが・・・


 午前のセッションを終えてお昼の時間。しかし、この時間はどの店も満席。その場で立ち食いできるものといえばフランスパンだけ。スペインでうまいうまいと言っていたボカディーリョもフランスに来るにいたってさすがに飽きた。セレブの街モンテカルロにはマクドナルドもバーガーキングもKFCもないので通称飲むパンだけで済ます。ビールのことですけどね。さすがに空腹にいきなりビールはきついので飲む前に仁丹を適量かじってから。これが結構効くんだ。
 元気を取り戻したところでいよいよ予選。午前のクラッシュでアロンソが走れないということでお楽しみが一つ減ってしまったが、その分クビカが気を吐き、あわやPPかと思ったところでやっぱりウエーバーがトップタイムを塗り替え終了。今年ここまで全戦レッドブルがポールだ。
 
予選終了後も混雑回避のために少し時間を開けるべくモナコのマンションが立ち並ぶ地区を軽く歩いてみる。住んでる人と、その人に招かれた人が帰っていく。ベランダではみんなでパーティーをしている。F1を家のベランダからただで見られるのはうらやましいが、よくよく考えればそのマンションは万ではきかない値段なのだからこれくらいの特権はあって当然だろう。もしモナコで買うならクルーザーにするかマンションにするかしばし悩んでみる。絵にかいた餅にもほどがあるが。

↑モナコのマンション群。実際買うとなると万では効かない値段ですが・・・賃貸だと月3,000ユーロくらいから。

 そしてそのまま駅へ直行。混雑対策のため入口を一か所に制限し、入場規制までしいている。幸いピークは過ぎていてすぐにホームに行けて、すぐに電車が来た。帰りもやっぱりデッキの補助椅子に座ってニースに戻った。夕方はニースの街をぶらぶらしつつ晩飯を探す。海の幸が豊富なプロバンス地方においては魚を食べないと損なので肉を食べたい衝動を我慢しつつ今夜も魚。モンテカルロで寿司屋を発見してしまい、生の魚も食べたくなったのでまずはサーモンのマリネ。メインは日本人として感涙もののアンコウ。いやーうまかった。そのあともストリートパフォーマーを眺めながらぶらつき、ギネスを飲んでから帰る。ヨーロッパについてからというもの炭酸強めの生ビールばっかりで正統派のエールがそろそろ恋しくなってきた。グレートブリテン島に上陸する日は近いぞ!
5月16日(日)
他に悪いところもなくアレルギーというわけでもないのに鼻炎になってしまうことがよくある。周期的なものののような感じもするし、何かスイッチとなるようなものがあるのかもしれない。なぜそんな話を始めてかというと、まさに今日、それが出てしまったのだ。しかもよりによってモナコGPの決勝という大事な日にだ。朝起きてすぐこの症状が出てくるわけではないのが非常に困る。朝起きて、モンテカルロに着いて朝飯を食べるあたりから徐々に出てき始め、入場するころには一分間に5〜6回の割合でくしゃみがでるほどに。これを抑えるためには酒を飲んで鼻を詰まらせてしまうのが一番手っ取り早く抑える手段なのでいたるところでビールを飲み始めるがおさまることなく決勝レースが始まってしまった。
 今日はカジノスクエアのスタンドで観戦。すでに完売で、ということはこのスタンドが全部人で埋まるということ。席は見事に真ん中。ただでさえ列の真ん中の席というのは苦手なのにコレはつらい。うかつに動くことはできないからビールはもちろん極力我慢。それでもこの鼻の状態だから水分は取らないといけないので1・5リットルの水を買ってやややけくそ気味にスタンバイ、まあなるようになるさ。突き抜けるような青空は一つ間違えれば熱中症になりかねないほどだが、スタート直前に絶妙なタイミングで雲が直射日光を遮ってくれた。

↑決勝はカジノスクエア前で観戦。雰囲気は満点ですがマシンが見える範囲はやや狭い感じ。そして今回もウエーバーが見事なパーフェクトウイン。

いざスタート。ポールのウエーバーが今日も逃げる。序盤は最後尾スタートのアロンソのオーバーテイクショーで楽しみ、バリチェロがクラッシュした時はすぐ近くだったので煙が上るのを確認でき、自分が見ているスタンドのまさに目の前で可夢偉がマシンを止めてリタイヤした。
レースは4回のセーフティーカー出場で危うく2時間ルールが適用されるような展開。リタイヤが多く、バトルを演出する周回遅れも出ることはなくウエーバーがぶっちぎりでこの2連戦を連勝で終えた。こちらも何とかレース終了まで持ちこたえることができた。
 トロフィーを受け取り、オーストラリアとオーストリアの国歌が流れ、シャンパンファイトが始まると観客はぼちぼち帰り支度。高台の住宅地から見下ろしてみると港の方から駅に向かう道は完全に人で埋め尽くされているし、駅は当然入場規制をかけていて行列になっている。モナコにとどまるのも地獄なら、ニースに帰るのも地獄。それならばニースに帰る方がましと駅の行列に加わる。まあ、人々が殺気立っている、東京ビッグサイトで行われる某イベントに比べればこの程度の行列はなんてことはない。

↑帰り道は言うまでもなく大混雑。誘導がうまいので時間は思ったほどかかりませんでしたが、しばらく人ごみは勘弁です。

 無事ニースに戻ることができた。さすがに体力を消耗しきったので今日ばかりはプロバンス名物なんて言っていられない。エスカルゴと肉と赤ワインという南フランスに全くそぐわない組み合わせを食べて回復を促す。おかげでようやく鼻炎はおさまったが、同時に日も暮れてしまい宿へ戻る。
 帰り道、木曜の夜に飯屋で仲良くなった夫妻とばったり会う。あのときニース空港からアムステルダムに戻ると言っていたから、まさにとんぼ返りでニースに戻ってきたようだ。ひとくされ今日のレースのことなど立ち話をしてから再び宿への道をてくてくと歩く。スペインの時とはまた違った疲れが体中をめぐる。もちろんすぐにベッドに横になって眠ってしまった。2度目のフランスは、まあ引き分けだったかな。ここまでは。
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