IAN-Gの無謀旅日記 ヨーロッパ大周遊
〜ドイツ→オランダ→ベルギー編〜

期間 2009年10月13日〜2009年10月20日
(行ってきた人、文、写真=IAN-G 同行者=いません)

↑ベネルクスでは自転車が市民の重要な足。でもよく見ると、ブレーキついていませんが・・・


10月13日(火)
 朝8時のパリはまだまだ暗い。みな起きたばかりのような顔をしている。メトロはどうやら通勤ラッシュの真っただ中のようだ。そんな混雑した車内に大荷物を持った日本人観光客が入り込み、迷惑顧みずパリ北駅に向かう。3日ぶりの風景だ。しかし、今日の目的地は出口から先ではなく、線路の先。国際列車タリスに乗って目指すはドイツ、ケルン。
 当初はドイツに寄るということは考えていなかったが、ひとつ大事なことを忘れていた。

 ビールだ。

 ビールと言えばドイツ、ドイツと言えばビール、そんな国に行かない手はない。それに、UKのビールばっかり本場で飲んでいてひいきにしているばかりではこのビール大国に対して失礼である。しかも目的地のケルンはミュンヘンと並ぶビールの銘醸地。大した時間いられないのだからこれはいい選択だった。
 話をパリに戻そう。すでにタリスのチケットは予約してあるが、宿はまだという状態。最悪観光案内所頼みでもいいのだができれば事前に予約しておきたい。駅構内は一応WIFIが入っているらしいが有料だし、その購入ページが「存在しません」と来られては手も足も出ない。カフェでサンドイッチを食べながらPCの前で軽く絶望する。
 タリスの乗車までも一苦労。ネットでの予約はチケットレス。予約ページに出てくるバーコードが検札代わりのようでネットにつながらない、プリンターも無い状態では座席もわからない。駅の切符売り場で聞き座席はとりあえずわかった。ただ乗車の際に車掌のおっさんに軽く怒られてしまった。
 
 結局フランスは負けっぱなしのまま去る形となってしまった。
←パリ北駅でタリスとユーロスターが仲良く(?)並ぶ

 しかし、車内に入れば快適そのもの。一等車を予約しておいてよかった。あのクシェットに比べれば天国と地獄のようだ。酒もタダだし、WIFIもあった。これ幸いとここで宿を予約。あとはゆっくりビールを飲みながら、ケルンへの到着を待つのみ・・・ならよかったのだが。
 最初の停車駅ブリュッセルで大勢降りたかと思ったら、次に乗り込んできたのは日本人のツアーの団体!ヨーロッパを行く優雅な高速列車での旅が一瞬にして熱海にでも行く新幹線のような空気に。一緒にされては困る、ととにかくここでなるべく日本人に見えないように努力をする。ビールを頼む時も英語+フランス語を交えてしゃべり、ダブリンで買ったロンリープラネットを開く。こういうとき英語ができてよかった、と思う。
 幸い「日本人ですか?」と声をかけられることもなく電車はケルンに到着した。周りで話されている言葉がすべてドイツ語になった。英語はもちろんフランス語も少し勉強したが、ドイツ語はほとんど予備知識なし。しかし、やっぱりどれも親戚同士ということなのだろう。全く分からないわけでもない。駅前のプラッツ(広場)には駅よりも存在感のある大聖堂があるが、わりと現代的な町である。

↑ケルンの2大アイコン。ケルン大聖堂とホーエンツォレルン橋

 宿に荷物を置き、いざ街へ。そして空腹にも負けずいきなりビール。

↑シュタンゲに注がれたケルシュビール。「ケルシュ」を名乗れるのはケルンにある20のブリュワリーのみ。

↑ケルン名物ビールを運ぶ専用のトレイ(コレは「クランツ」と言うそうです)。これにビールを多い時には15杯も並べて運んでいます。

 ケルンのビール、ケルシュはドイツのビールには珍しい上面発酵酵母を使用している。つまり愛してやまないエールとは親戚ということになる。苦みというよりも厚みのあるフルーティーな感じが特徴だ。これを200mlの細長いグラス(シュタンゲと言います)で飲むスタイルで、いわゆるジョッキでグイグイと何杯も飲むドイツビールのイメージとは少し違う。とはいえそれをわんこそば感覚でどんどん開けてしまうあたりはやっぱりドイツだ。運んできたおっさんがコースターに飲んだ杯数を書いていき、それで勘定するという仕組みだ。ビールが来た瞬間に金を払う習慣に慣れ過ぎている身にこれは結構新鮮だった。
 しばらく飲み歩いてから晩飯。ここまで朝にサンドイッチしか食べてなかったのでここで一気に食べることに。まずはマッシュルームソテー。とにかく量が多い!たかがマッシュルームで9.9ユーロという時点で気付くべきだった。でもうまい。そしてメインはやっぱりドイツに来たからには、とドイツ名物アイスバイン(豚足)。これも実にうまいのだがやっぱり量が多い。もはやかつてのようには食べられなくなったのか、はたまたドイツの料理の量が多いのか判断付きかねるが、腹一杯で苦しい。そのまま宿に戻ってベッドに横になる。ま、いいか、このまま寝ても。昨日はろくに寝てないから。

10月14日(水)
 今日も引き続きケルンの街を探検する。パン屋で買ったチーズパンをかじりながらまずはライン川沿いをぶらぶら。次いで市内中心部からどんどんと外側へ行く。Uバーンや路面電車など公共交通機関が発達しているから結構郊外まで行っても人の波は途切れることがない。そして街のどこからでも大聖堂のツインタワーはその頭を確認することができる。この光景、確かクアラルンプールでも体感したなぁ。

↑左がケルン、右がクアラルンプール。ほら、一緒だ。

 空は快晴で気持ちいいのだが、いかんせん寒すぎる。あまりにも寒いのでカメラの電池が機能停止してしまったほどだ。最初、「ああ、ついにこのカメラも限界が来たか・・・」と絶望しかけたが、電池を取り換えたら無事に動いた。時々電池を取り出してポケットの中で温めながらだましだまし写真を撮っていく。こういうときはところどころで室内に入りながら歩きまわるに限る。大体昼過ぎまで歩いたところで昼飯に。ビールとソーセージとキャベツとイモという実にドイツらしい食事だ。ソーセージもうまいがビールももちろんうまい。「ブラウハウス」という醸造所直営のところだから鮮度においては申し分ない。一気にここで4杯も飲んでしまう。

↑ホーエンツォレルン橋に取り付けられた無数の南京錠。
 コレ、永遠の愛を願うおまじないで、南京錠に名前を書いて写真のように橋につないだらカギはライン川に放り投げるのだそう。


↑ライン川をまたぐパイプライン、何が入っているのやら。ビールだったりして。

 再び外へ出るとやっぱり寒い。それもそのはず、この日の最高気温はたったの9度。同じ日パリも、ロンドンでさえも10℃台後半だというのにそれよりも南にあるケルンがこの寒さとは!ドイツが歴史的に幾度となくフランスに侵攻する理由がなんとなくわかるような気がする。あったかい方に行きたいもんなぁ。つい2日前までコート・ダジュールの太陽をいっぱいに浴びた身にもこれはきつい。店先のテラス席も人はまばら、ビールは自然にエクストラコールドになるがとてもじゃないがそれを飲むような気候ではない。結局今日は一日街歩きに終始した。夕方にいったん宿に戻り明日の電車のチケットを買いに駅まで行く。別に予約しなくても大丈夫そうだったが一応念のためということで。ドイツの切符売り場は一等車専用窓口があり混雑を避けるためにも利用価値が高い。
 これで気分良く晩飯を迎えられるというもの。宿の近く、ライン川沿いに店が集中していて世界中の観光客がメニューとにらめっこしながら真剣に選んでいるが、一番気楽に入れるので夜もブラウハウスにした。ここのビールは何と樽から直接注いでいる。余計な炭酸が入らないからぐいぐい飲めてしまう。そして食事も注文。よせばいいのに昨日に引き続きアイスバインに挑戦。今日は他に何も頼まずこれとの一対一の直接対決だ。昨日は煮たものだったが今日はグリル。外の皮がパリパリ、いやバリバリでテーブルがきしむほどの大格闘。なんとか勝利したものの昨日に引き続き苦しい。実は昼間、向かいの席のおっさんがこれを余裕で食べていたので、普通に腹ががすいてさえいればいけるだろうと思っていたが・・・ドイツ人が大柄なはずである。再び重い体をひきずり宿に戻る。ネットで次の宿を確保してからようやくベッドに横になる。食事には苦戦したもののやっぱりビールのうまいドイツは期待を裏切らなかった。

10月15日(木)
 今朝のケルンの最低気温は・・・来たよ、0度。東側のベルリンやドルトムントは雪が降り始めたらしい。9月のうちはまだまだ暖かかったヨーロッパもいよいよ本格的に冬支度に入ってきたようだ。そんなだからというわけではないが、寒さにはやっぱり酒。宿にミニバーがあったので朝からでもうまいケルシュを味わえる。旅立ちの前に一杯ひっかけてからケルン中央駅へ向かう。ヨーロッパの交通の要衝でもあるここは電車もひっきりなしに行き来している。そしてそのすべての列車が日本並みの定時で運行され、ホームも一時間以上先まで決まっている。さすがはドイツ。
 いわゆる「エキナカ」も充実しているので、ここで朝飯。ソーセージにケチャップとカレー粉をまぶした「カレーヴルスト」を食べる。それだけでは足りなかったので別の店でゆでただけのソーセージを一本。マスタードだけで食べるのだがこういうのが実はうまい!
 そうして10時48分発アムステルダム行きの列車に乗りこむ。ドイツが誇る高速列車ICEは質実剛健のドイツらしさが満載のつくりである。一等車はヨーロッパではおなじみの1-2配列のシートで感覚も大柄なドイツ人に合わせたのか日本人にはかなり広い。これで約3時間半。ひたすらに北上をしていく。車窓からの光景はドイツ国内では田園地帯というよりはむしろ森の中という感じだ。これがひとたびオランダに入ると一気に畑が増えていく。そしてそこにさらに運河が頻繁に見えてくるとほどなくしてアムステルダム中央駅に到着した。
 駅から出るとその雰囲気はヨーロッパの都市というよりむしろアジアのそれに近い感じがする。駅前の広場は観光客と地元の人でごった返していた(観光案内所の職員が街頭でいろいろアドバイスをしてくれる。)。駅から続くメインストリートはまさに観光客のための通り。私設の観光案内所や派手なカフェが立ち並び、そうかと思うといきなり遊園地(とはいっても本当に道の真ん中にあって横には路面電車が入っている。)があって観覧車と絶叫マシン、それにUFOキャッチャーの大群がストリートを形成している。「コーヒーショップ」と「飾り窓」に代表されるアムステルダムだが、一言でいえば「何でもアリ」の街というわけだ。
←アムステルダムに着くなりすぐに遊園地と遭遇。自由すぎです。

 宿に着くとこちらから名乗る前に向こうから見事に言い当てられた。そんなに日本人が珍しいのか?フォンデルパークのすぐ脇にあり静かな場所だ。部屋もすっきりとまとめられていて、申し訳程度だがプライベートのテラスもある。
 荷物を置き市内中心部に向かう。歩くと結構な距離だが、トラムが町を縦横に結んでいるので交通の便は満点。ただ、相当頻発しているのだろう。停留所で3両ほど順番待ちをしている光景も一度となく見られた。香港だけのお家芸かと思っていたらそうでもないらしい。今日のところは街に慣れるために極力歩く、地図も見ずに歩く。古い建物、路面電車、運河といい絵が撮れそうな要素が満載の街だ。道すがらオランダ名物のブラウンカフェにももちろん入ってみる。タバコのやにで店全体が茶色くなっているからブラウンカフェというわけだが、簡単に言ってしまえばUKのパブそのものと言ってしまっても大丈夫だろう。UKに行ったらブラウン通り越してブラックになっているところや数え切れないほどの人に触られて塗装がはげてホワイトになっているところだってある。ビールはやっぱりオランダが誇るハイネケン一辺倒かと思いきや、アムステル、グロールシュあたりと競合している。ベルギービールも多く、意外なところではギネスもほとんどのところで置いてある。

↑ブラウンカフェ内部を激写!道に迷っている最中に適当に入ったところなのでもう一回行けと言われもまあ無理ですね。

 3時間ほど軽く道に迷いつつみっちり歩いてから晩飯にする。コレ!という「オランダ料理」というのもあんまりないし、カフェで食事ができるということならば、こんなところまでUKと一緒だ。というわけで適当に入ったカフェでパブ飯の定番、ステーキを食べる。そこからは久し振りにパブ、いや違ったブラウンカフェをはしご。日没も徐々にではあるが早くなって来ていて夜になると本当に寒い。持ってきた服を総動員して厚着しているが、またH&Mの世話になるかもしれないな。

10月16日(金)
 ここのところ日没よりも日の出の方がどんどん遅くなってきた。明るくなるのは7時半過ぎ。以前正月にロンドンに行った時は8時半くらいにならないと明るくならなかったものだ。夏時間もそろそろ終わりだし、気温の下がり具合も顕著で、冬支度は順調に進んでいるようだ。
 そんな寒さにも負けず朝からマーケットに繰り出す。野菜、肉、魚、乳製品などのデイリーフード、衣類に電化製品などなど、ここに来れば何でもそろう。午前10時くらいに着いたが店の半分はまだ準備中。どうも日本と市場というものの概念が違うようだ。海外の観光客が朝早くから築地に行きたがるわけだ。
 しかし、収穫もあった。オランダの数少ない名物料理、ハーリングを見事にゲット。まあ、なんてことはない。塩漬けニシンのことだ。これに刻んだ玉ねぎをまぶしてパクっと行くわけだ。これがまたうまいのなんの!基本的に刺身は大好きなので生で食べるというのにも抵抗はない。むしろ、こんなヨーロッパのの片隅で生魚に出会えて実に幸せだ。後々市内を練り歩いているとこのハーリング、屋台でそこかしこで売られている。小腹がすいた時にも気軽に食べられるのはうれしい限りだ。
 マーケットを後にして次に向かったのはオランダが世界に誇るビール、ハイネケンの秘密に迫れる「ハイネケン・エクスペリエンス」この手の擬似的ビール工場見学はダブリンでもシンガポールでも行ってみたが、そこはさすがワールドワイドなブリュワリー。いたるところにハイテクを駆使していて飽きるところがない。特に醸造過程を紹介するところでは自分がビールになった気分で振動や水しぶきが体感できる。CMやポスターのライブラリーも充実しているし、チャンピオンズリーグの名場面をオンデマンドで見られるなどビール好きだけでなくサッカーファンにうれしい展示もあった。最後はもちろん新鮮なハイネケンを堪能。入場料で2杯飲むことができる。最初は普通で2杯目はエクストラコールド。外に出る時にはすっかりいい気分だった。

↑普段あんまり飲まないハイネケンもこうして製造の過程を見ていくと愛着が湧いてくるから不思議なものです。

 昼飯をはさんで今度はゴッホ美術館へ行く。アムステルダムに来るまでゴッホがオランダ人というのも忘れていた。しかし、そのコレクションはそうそうたるもの。「ひまわり」も展示室の真ん中で威光を放っている。人の数が多いのだがそれを押し分けて見るだけの価値はある。日本の作品にも影響を受けたらしく、浮世絵の模写なんてのもあった。絵はともかく、描かれている漢字まで極力似せている。頑張ったんだなぁ。作品だけでなく筆まめなゴッホが家族や友人に宛てた手紙も多数展示されていた。結局全部見終えるまで3時間近くかかってしまった。時計の針はもう7時近い。ブラウンカフェでビールを飲もうとカウンターに行ったら地元のおっさんに話しかけられる。アジア人がよっぽど珍しいらしい。確かにブラウンカフェで自分以外のアジア人をまだ見たことがない(あまりブラウンではないバーでおそらく現地在住であろう人を2〜3人ほど見ただけ)。さらにいきなり直接カウンターで頼むとは、なんて勇気のあるやつだ、とも思ったようだ。そういう頼み方しか知らないだけなんですけど…それにしてもオランダ人の英語は実にきれいだ。酔っぱらったおっさんだったが実に聞き取りやすい。むしろこっちのオージーイングリッシュなのかクイーンズイングリッシュなのかよく分からない英語の方が向こうには聞きづらいらしい。
 そして夜になった。せっかくのTGIFだ。レッドライトディストリクトに足を運んだ。日本でいうところの赤線地帯だ。買う買わないはともかく、アムステルダムに来たからには行かねばならない場所だろう。すっかり日の暮れた運河沿いの道が赤い照明で照らされて、あたりにはたばことはまた違う煙の臭いが立ち込める。そして大きな窓の家々に、この寒いのに薄着のオネーチャンがセクシーポーズで立っている。「何でもアリ」の国オランダを良くあらわしている空間だ。
←赤く照らされた運河の上を優雅に泳ぐ白鳥。シュールです!

とはいえ21世紀に入ってからというもの完全に観光地と化したらしく、カップルや家族連れ、若い女性同士に、中国人の団体ツアーまでここを歩きまわっている。表通りは健全なバーとそこそこ健全な感じの風俗店で占められていて、メインだったはずのオネーチャンたちは脇道へ追いやられている。向こうも向こうでそういう冷やかしの人たちにも非常に愛想がいい。しかし、男一人歩きが通ると向こうも真剣だ。結構執拗に誘ってくる。まあ、そこらへんの経過はすっ飛ばして、ひとくされ歩きまわってから晩飯。今日一日いっぱい動いたので大きめのリブアイステーキを一気に平らげる。久しぶりにTGIFを楽しんでから宿に戻った。

0月17日(土)
 昨日は結構遅くまで起きていたから今日は珍しく夜明けより後に目が覚めた。でも、別段急ぐことはない。だって今日は取り立ててどこかに行こうとは考えていないのだ。周辺の都市にも行ってみようかと思ったが、昨日ブラウンカフェで話しかけてきたオッサンに「こんな感じのカフェが多くてビールがうまいところ」と聞いたら「それじゃあここしかないな」と言われてしまった。幾分地元びいきのところはあるだろうが、オランダで地ビールなんて聞いたこともないし。おとなしくアムステルダムにいることにしよう。
 しかし、せっかくの週末だし、天気もいいし外に出ない手はない。まずは朝っぱらから昨日行ったところよりもっと郊外にあるマーケットに行くことにした。トラムに揺られて移動中、突然の天気雨にも遭遇したが降りるころにはやみ、朝日が反射してより明るい。ここも食料品も衣類も電化製品も売っているマーケットで、道幅も広いから歩くにはとても都合がいい。青空の下で食べるニシンが今日もうまい!

 勢いに乗ってマーケットのはしご。次はガラクタだらけのフリーマーケット。こちらは運河沿いに店が立ち並び気持ちがいい。少し周辺を歩けばニューマーケット地区に出てカフェが立ち並ぶ。ビールで休憩、を挟みつつ店を冷やかす。市内の中心部に近いところにあるが観光地じみたところはあんまりない。そんなに観光客が来ないのだろうか?
 じっくり歩きまわっていたがまだ日没までは遠い。もう市内にいてもしょうがないし、トラムの導くまま郊外に行ってみることにする。運河がお濠のように何重にもなっている街だから橋を渡るごとに景色がどんどん変わっていく。観光客向けの案内がなくなる。高層住宅が立ち並ぶようになる。運河の幅も広くなり緑色の割合がどんどん増えていく。そして都会の喧騒がうそのように静かな空間が広がっている。時折通るトラムの鐘と、跳ね橋が上がる時の警音器の音がよく響く。ここにはあの何でもアリの都市の面影は全くない。地元の人たちだって騒いでばかりいるわけではないのだ。

↑市内を少し出ると空も広々、運河も広々。片開き式の跳ね橋も頻繁に上がっていました。

 そんなぶらり郊外の旅を3路線ほどやっつけたところでいい感じに日が暮れてきた。ここからは再び何でもアリの都市にどっぷり浸かる。晩飯を食べてから乗り込んだのは、カジノ。ニース、モナコでも行くチャンスはあったのだが、TシャツGパン雪駄履きがドレスコードに引っかかったので入れなかったのだ。そんなに熱くないここならちゃんと靴も履いているし、襟付きのシャツも来ている。
 まあ、ここぞというときの勝負弱さは折り紙つきなのでギャンブルなんてやっても負けるだけなのだが、これも一つの社会科見学ということで。入口で身分証明書を出し、入場料5ユーロを払っていざ戦いの場へ。スロットマシンは数え切れないほどあるし、ルーレットとブラックジャック台もどこも満卓状態。カジノの魔力というのは恐ろしいものがある。手持ちの少ない金で適当なスロットマシンに座る。最初のわけのわからないところでビギナーズラックが来たが、そのあとはドンドン機械に飲み込まれていく。パチンコやパチスロにはまる人の気持ちがわかるような気がする。もちろんカジノ内にATMもあるのでさらに危険だ。幸いINGのATMはうちの時代遅れのキャッシュカードは受け付けてくれなかったので頭が正常なうちにカジノから出る。すごい所だったなぁ。さ、明日も早いことだし宿に帰ることにする。ちょっと飲み足りない感じはするが。
←カジノ内は撮影禁止なので外側から。2度目は、あるかなぁ?

 日本の常識とは大きくかけ離れた街アムステルダムでの日々は刺激的に、そしてあっという間に過ぎて行った。そう、コーヒーショップから流れてくる「あの」煙のように。

10月18日(日)
 ここまで周りを見渡して旅行者というとほとんどがスーツケースをひきずっている人たちばっかりだったがアムステルダムではバックパッカーをたくさん見かけた。そして、日曜朝の中央駅に向かうトラムの中はそんなバックパッカー達でごった返していた。駅に着いてからまずはチケットを手配。窓口の数が多く、日本の銀行よろしく整理券で案内してくれるので行列を作る必要がない。ブリュッセル行き片道で40ユーロ。タリスも走っているが大した距離ではないし、急ぐ旅でもないので普通列車にした。ただ、次の列車が来るまで一時間近くある。駅の中や周辺をぶらぶらして時間をつぶす。ようやく出発の時間になってホームに向かうとやっぱりここも旅行者で一杯。しかも荷物置き場なんて気の利いたものがないのでみんな2席使って荷物を置いている。なんか非効率だがこれが一番ましなのだ。アムステルダムを離れるとすぐに郊外の住宅地に。魅力的な現代建築が大草原の真ん中に多数建っていてなかなか面白い。それらのほとんどが大企業のオフィスだ。確かにアムステルダムでスーツ姿の人は見ることがなかったがこういうことらしい。頻繁に停車してはそのたびにどんどん車内が混んでくる。いったんアントウェルペンで大勢降りてここからブリュッセルまではさらに1時間。やけに薄暗いホームに列車は到着した。ここから今回の宿までは表通りを行くだけなので今回は迷わず到着。荷物を置いてまずは市内中心部のグランドプレイスへ。
←世界遺産、ブリュッセルのグランドプレイスはいつでも人でいっぱい

 市庁舎をはじめとして大きな建物が並ぶ、周辺は観光地らしくカフェやレストランが立ち並ぶ。ならば、というわけで早速ベルギーにて初ビール&昼飯。ベルギー料理というのもフランス料理の流れを組んでいるが基本的には派手なものではないしオランダ文化圏でもあるからいたって単純なものが多い。ひき肉を丸めただけの単純なミートボールを注文する。リンゴを煮詰めた甘辛のソースが中華のそれのようで、日本で食べるそれのようで懐かしい味だった。それからはさらに周辺を歩きまわる。もちろんこの間にブリュッセルで最も有名な小便小僧も発見。これでマーライオンに続き「世界3大がっかり」をこの目で確かめることができた。これで残るはコペンハーゲンの人魚姫だけだ

↑でもこれをそろえるためだけにデンマークへ行くというのもどうかと思う・・・


夜になってもグランドプレイス周辺は人の波が途切れない。レストランの集中しているところは客引きがうるさいので少し離れたカフェで晩飯を食べる。今度は牛肉のビール煮。ビール文化圏だから肉を煮るのもワインではなくビールだということ。あれ?どっかで食べたことのある味だな。そこからさらに2軒ほどはしごしてから宿に戻る。

10月19日(月)
 ブリュッセルに着いたはいいがいったい何があるのだろうとガイドブックをパラパラとめくってみる。とにかくメインは美術館らしい。結構な数が市内にあるのだが、そのほとんどが月曜日が休み。これでは取り立ててどこかに行くこともない。いつものように街をぶらぶらすることにする。まずは王宮がある街の西側から。トラムが新旧入り乱れて忙しく走り回っている。丘の上に位置するので緩やかな上り坂を延々と歩く。ところどころ崖のようになっているところもあり、そこからはダウンタウンが一望できる。こういうところが日常的にある街というのはうらやましい。立派な宮殿と庭園を横切りつつそのままダウンタウンの方まで下る。ちょうど北駅の辺りに来たからブリュッセルの中心部を南北に横断したというわけだ。ここら辺はインド、イスラム系のコミュニティになっているらしくヨーロッパの雰囲気がまるでない。しかし、道一本離れ線路沿いの道に出ると。なんとここにも「飾り窓」が。そういえば列車の中からやけに窓の多い建物が並んでいるのが見えていたよなぁ。アムステルダムのように極端に観光地化していないまさに場末の雰囲気が通り全体を覆っている。みな仕事熱心なのか真昼間だというのに結構な人数が立っていて、結構な割合で仕事中だったりする。恐るべし、ブリュッセル。まだ明るいし、ここは軽く見るだけにしてそそくさと市内に戻る。
 昼飯は自家製ビールを出しているカフェで大量のムール貝を食らう。オランダ、ベルギーはムール貝の名産地らしくどこに行っても食べることができる。もちろんワインはないからセロリやパセリを一緒に入れて蒸している。貝は小さいが身はかなり大きい。これはうれしい。自家製のビールの方はブロンド、アンバー、トリプル、ダークと4種類。熟成がしっかりされているから飲みにくさは微塵も感じられない。そういえば家で熟成中のマイルドはどうなっていることやら・・・

↑建物をキャンバスに。美術館に行かなくてもブリュッセルにはアートがたくさん。

 ここまで十分に歩き倒したのでそこからの移動はトラムをメインに使う。ちっとも見かけないと思っていたら市内中心部ではトラムは地下を走っていた。渋滞知らずでいいのだが、車窓からの風景がないのがちと残念。これでさらに細かく街歩きを続行。いい味のカフェ、街角アートがあふれていて全く飽きることがない。そのまま日没まで歩き続けカフェで晩飯を食べてから宿へ戻る。近くにバーがたくさんあったのはうれしい限りだ。もう少し飲み直してから眠りについた。

↑エスニックコミュニティに行くともはやヨーロッパの面影なし。ベルギーの明日はどっちだ!

10月20日(火)
 この旅もついにひと月。終りがハッキリと見えてきてしまった。そしてそれを思いっきり実感させてくれたのが次の列車の切符。ついにユーロースターでロンドン、セントパンクラスへと向かうこととなった。今週末には東京行の飛行機に乗っているということになる。それにしてもヨーロッパの鉄道旅行にはICのクレジットカードないと本当に困る。実はネット予約でもチケットは買えたのだが、プリンターがないからEチケットはダメ。これはタリスで学習済みだ。ということで駅でチケットを受け取るサービスにしたら本人認証のためにICクレジットカードが必要なのだと。全く不便極まりないな。というわけで駅の窓口で直接購入した。
 で、今日は少し遠出をしてみる。本来ならルクセンブルグにでも行こうと思ったがブリュッセルからだと3時間もかかる。さすがにこれだと日帰りは無理か。少し路線図を眺めた結果アムステルダムからここに来るまでにも通ったアントウェルペンに行くことに決定。早速チケットを買いホームにいていた列車に乗り込む。セントラルの地下区間をぬけ、北駅の飾り窓を見下ろし(しかも朝の9時からもう出勤していた!)線路を進む。ブリュッセルという地名が駅名から消えるととたんに畑や森が広がり始め、各駅停車の旅は実にゆったりと進んでいく。途中の駅も実にのどかなもの。どの駅前の通りにもカフェが一軒鎮座しているところはまるでUKのようだ。

↑オランダとフランスが交錯する街、アントウェルペン。その都市の規模はさすがブリュッセルを差し置いてオリンピックを開催しただけのことはある。

 列車に揺られて1時間半でアントウェルペンに到着した。中央駅を出てみると、ブリュッセルなんかよりも大都会だった。さすがは元オリンピック開催地。早速街中を歩き始める。ブリュッセルではフランス語とオランダ語の併記だったがアントウェルペンはほぼオランダ語のみ。アムステルダムよろしく街中をトラムが縦横に結んでいるが魅力的な建物が並ぶ中心部においてはそんなの乗っていてはもったいない。広場も多く、銅像も多い。ここら辺はベルギーらしい、と言うのだろうか。カフェも多いし何より観光客もブリュッセルに負けないくらい多い。ガイドブックとカメラを抱えた人たちをかなり頻繁に見た。適当なカフェで昼飯を食べてから午後も街歩き。ちょっと頑張って中心部より外にも足を運ぶ。中華街があったり、常連しかいない感じのカフェもたくさんあった。UKよりもカウンターを占拠している率が高くちょっと入りづらいな。そんなこんなであっという間に夕方になってしまったので帰りの電車にビール片手に飛び乗る。疲れた体にビールが染みるしみる。
←香港?いやいや、ここはアントウェルペンのチャイナタウンですよ。

 晩飯は大陸最後の夜だし、豪勢にレストランでで食うか、とグランプレイス近くのレストラン密集地帯に行く。客引きがうるさいので入り口付近の店で即決。お決まりの生カキと、どうやらベルギー名物らしいラパン、つまりウサギを頼んだ。カキが少し小ぶりなのはまあ許容範囲だろう。おいしく食べてビールもワインも楽しんで、さあ、勘定だとクレジットカードを出す。明日からはまたポンドだからそんなにユーロを持っていてもしょうがないし。しかしこれが何回やっても読み取ってくれない。今朝ユーロスターのチケットを買うためにその5倍くらいの額払っているし、もちろん磁気カードもOKのターミナルのはずだ。店先にJCBのマークもあったのでいざというときの予備用のJCB(こちらはちゃんとICだ)を出したら「それは使えない」だと、そういえば隣のおっさんも外に書いてあったから何の疑いもなくアメックスを出して断られ、現金で払っていたな。銭勘定の問題で疑われるとこれはいい気分ではない。仕方なく貴重品満載のかばんを残し一番近くのATMに直行。しかもここでなぜか暗証番号を入力したとたんいきなり500ユーロ引き出してきてくれて怒りは倍増。戻ってきて勘定たたきつけて店を出てきた。一応「何で”JCB使えます”のシール貼っておいて使えないんだよ!」と言ったらその場でおもむろにはがそうとしているし。言い争うだけ無駄か。
 ケアンズの空港の税関で30分足止めされた時も、ダブリンのホテルで夕方部屋に帰ったらフロア全体が工事中だった時も、ニースで間違って市内からはるか離れた所に宿をとってしまった時もさすがにここまで腹が立ったことはなかった。クレジットカードを過信ぜず、観光地の銭勘定には気をつけろということか。釣銭5ユーロは置いて行った。授業料だ。これなら飾り窓でだまされた方がよほどマシだったな。結局ヨーロッパ大陸での日々はなんだか釈然としないまま終わりを迎えた。とりあえずフランス語圏だけはあまり近寄らない方がいい、という結論だけは出たようだけど。

 ま、あとは勝手知ったるロンドンで残りの日々を満喫するとしますか。
←ユーロスターに身を委ね、目指すはロンドン。


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