世界のビールを飲みつくす〜アジア編〜

 熱帯のアジアの都市を歩き回ったあとの一番の楽しみはなんと言ってもビール。地元の人たちに混じって屋台で飲んだり、ちょっと気取ってバーで飲んだりと楽しみ方もさまざま。「余計に汗が出る」とか、「脱水症状になりかねない」とか言われてもうまいんだからしょうがない。疲れた体に染み渡るさわやかなアジアのビールたちです。

タイガー(Tiger beer)
 シンガポール発のアジア各国で飲むことができるビール。ほかのアジア圏のビールが水みたいにガブガブいけるタイプが多い中でタイガーだけは比較的しっかりした味わいを持っています(それでも清涼感重視なところは変わりませんけど)。バーに行けばドラフトが飲めますが、夜の屋台で大瓶でグイグイ飲むのがこのビールの醍醐味でしょう。

やっぱりタイガーはバーのカウンターよりも屋台のテーブルのほうが似合いますな。


333 (Bah Bah)
 日本ではこれを「バー・バー・バー」と呼びますが、現地の人は「バー・バー」と、繰り返すのは2回だけ。英語に直すと「Triple”3”」だから2回でいいのだそうです。ベトナムの国民的ビールで味は想像以上に薄いです。日本のビアテイスト飲料ほうがよっぽどしっかりとビールの味をしています。しかし、一日中蒸し暑いサイゴンの夜にはこれくらいの飲みやすさが逆にすがすがしくもあります。冷蔵庫で冷やすのもいいのですが、正統派はやっぱり氷を入れて飲むやり方でしょう。これならさらにグイグイ飲めてしまい、気づくとグデングデンになってしまいますので、帰り道は気をつけましょう。

(追記)対外的には有名なブランドであるこの333ですが町ではあまり見かけません。ではどこで見られるのかというと一番見つけやすいのはホテルのミニバー。街角で飲むビールがあまりに安いので超高級品に感じられます。だってホテルで飲むと一本70000ドン、日本円に換算すると300円もしませんが、同じ値段でビアホイ行ったら7本、つまり7リットル飲めますから。上に書いた「国民的」はチョイと言い過ぎたかも知れません。


サイゴン(Sai gon)
 名前もそのままのサイゴンローカルのビールです。ちなみにハノイには”HANOI”というブランドのビールがあるそうです。ハノイでも"サイゴン"は飲めるそうですがサイゴンでは"ハノイ"は飲めません。曰く「ハノイなんて田舎のビール飲んでたまるか!」ですって。サイゴン市民にもベトナム最大の都市に住む者としての意地と誇りがあるようです。これもジョッキに豪快に氷を入れてから一気に注いでグビグビやるのが一番うまいです。赤と緑の2種類のラベルがありますが、その違いはついぞ分かりませんでした。知っている人がいたら教えてください。

↑赤サイゴンと緑サイゴン。何が違うんでしょうねぇ・・・

(追記)2度目のベトナム旅行でなんとなく赤と緑のサイゴンの違いが分かってきました。どうやら緑の方はライトタイプのようです。実際に飲み比べても大して差はない感じは否めませんが、はっきり違うのが値段。1000ドンほどの違いですが、どこに行っても緑のほうが安いです。大衆的なビアホイやバックパッカーが集まるブイビエン通りではもっぱら緑が飲まれていました。ちなみにこちらが観光客だと分かるやちゃんと「緑!」と指定しないと必ず赤が来るのでご注意を(するほどのものでもないか)。
ビアホイ(Bia Hoi)
 ビール天国ベトナムの真骨頂とも言えるビールといってもいいでしょう。コレはブランドではなく一般名詞です。樽詰めのノンブランドのビールをその場でペットボトルに詰めてそれを氷を浮かべたグラスについで飲むというもの。以前はサイゴン市内にこのビアホイ屋(紛らわしいですがビアホイを出すビアホールのこともビアホイという)がたくさんあったそうですがその数はかなり少なくなっているとのこと。しかし、今でも残っているところは地元客に大人気です。
 何より魅力なのはその安さ。1リットル入りが一本10000ドン(=37円くらい)なのだからコレは足しげく通いたくもなるというもの。非常にライトな味わいですがどうせ氷入れて飲むんだし、それでもしっかり酔えるので十分かと。大汗かいた後に後はローカル感あふれる空間で軽いおつまみを食べながら過ごすというのもこのビアホイをうまくさせている要因かもしれません。
 ちなみに「ペットボトルに入ったビールなんて風情がない」という意見もありそうですが、自分で作ったビールをペットボトルに詰めている人間から言わせて見れば違和感なんてまったくありません。

(左)これぞ正しいビアホイ。つまみはゆでたピーナッツ。
(右)生ビールよろしくグラスに直接注いでくれるところも。コレで一杯6000ドン(22円くらい)やっぱり安い!この店ではビア・トゥーイーと呼ばれていました。


サンミゲル(San Miguel)
 このビールの原産国はフィリピンです。しかし、最初に飲んだのはベトナムの夜の屋台でした。しかも屋台では珍しく樽生のサンミゲルでした。ガス圧はしっかりしているか?ラインはきれいか?サーバーはちゃんと動いているか?などといぶかってしまうのも仕方のないところでしょう。ちゃんとしたバーに行かないと生ビールなんて飲めないベトナムで思いも寄らないところで飲めたそれは味云々よりも雰囲気で飲ませてくれた一杯でした。(←味をほめてないぞ!)
 地理的に近いからか香港でもメジャーなビールブランドのひとつでした。ここは元UKだけあってドラフトビールの需要が大きいので、ついでにベトナムをはじめとする近隣諸国にも出回っているのでしょう。


ブルー・ガール(Blue Girl)
 香港の屋台で飲んだピルスナータイプのビール。瓶が透明なので非常にさわやかな印象を受けますが、飲んでみるとアジアのビール特有のサッパリとした味わいではなく、苦味とコクの詰まった正統派のビールでした。
 このビールはもともとドイツのブランドなのだそうで、中国沿岸が半ば列強の植民地となっていた二十世紀初頭ににドイツ軍が駐留していた青島に持ち込まれたもので、それが台湾や香港にも広まり、現在はドイツの醸造所の監修の下香港で生産されているものだということです。国際色豊かな香港らしい歴史を持ったビールですね。
←なんといってもこの瓶のデザインが秀逸!もちろん味も言うことなし!


アンカー(Anchor)
マレーシア唯一の国産ブランドビール。マレーシアはイスラム教が国教なので基本的に飲酒はNG。信教の自由はあるので酒は出回っていますが、基本的にはそのほとんどが輸入物かカスバのようにマレーシアで生産している海外ブランド。そんな中このアンカーだけが純国産でがんばっています。しかし、味は凡庸だし、屋台ではほとんど置いてないです(大抵タイガーとカスバ)
 
↑アンカーが写っている写真を見つけてきましたよ。マラッカにて撮影しました。まあ、どちらかといえばカレーの方がメインですけどね・・・


ロイヤルスタウト(Royal Stout)
 東南アジアで確固たる地位を確立しているカールスバーグの黒ビールブランド。と言っても、カールスバーグ・マレーシアの商品なので飲めるのはマレーシアのみ。そのためかとにかく甘い。コーヒーや紅茶も甘かったけれど、まさかビールまで甘いとは・・・飯やつまみと一緒に飲むと言うよりは、これ単体でジックリと飲むほうがいい感じもします。
 またこのビールの特異なところは原料に「朝鮮人参」が入っていること。ラベルにも”Carrot"ではなく”Ginseng”と書いているのだから間違いないでしょう。疲労回復にも役立つそうです。

↑ギネスのグラスで飲むロイヤルスタウト。そして、またしても手前のドライワンタンミーがメインです。


シンハ(Singha)
 蒸し暑くビールがうまいタイの中でも有名なブランド。だからなのか値段はちと高め。ハイネケンなどの輸入ビールと大体同じくらいといったところでしょうか。タイつながりで今をときめくF1のレッドブル・レーシング(レッドブルの発祥はタイ)のスポンサーでもあり対外的にも知名度は抜群。ノーズに描かれたロゴはよく大写しになっています。味は熱帯のビールにしてはなかなかの飲み応え、ただし色はご覧のとおり薄めですがね。
 日本にも輸入されていて気軽にタイ気分を満喫できます。
←タイのビール3種、写真はいずれもカオサン通りのバーで撮ったものです。

レオ(Leo)
 同じライオンでも対外的に有名なシンハとは対照的にタイローカルなビールがこのレオ。色はシンハよりも濃く、ややこってりとした味わいが特徴でシンハよりも安いのがうれしいところ。バーだけでなく外まで席が出ている飯屋でもあったので頼む機会も多く、ファンになってしまうことも多いかも。もちろん頼みやすさという点でもたった二文字なので抜群です。
←「レオ」なのにラベルに描かれているのはヒョウ。これであっているのかな?
チャーン(Chang)
 ライオンの次は象。タイのビールは動物にあふれています。日本でもちらほら見かけることのあるビールですが、バンコク市内ではシンハよりも、レオよりも安く非常に手軽に飲むことが出来ます。味はライトですが、逆にこれを利用して暑いさなかにベトナムよろしく氷入りで飲むとなかなかいけるのですよ。ある意味バンコクで飲んだビールの中でも最も東南アジアらしいビールともいえますな。

↑氷入りビールはベトナムの専売特許ではなかったのですね。暑いときは特に最高です。
台湾ビール(Taiwan Beer)

台湾では主流は缶ビール。写真はいずれも夜市徘徊の途中でコンビニで買ったものです。

 細かい説明の必要がないくらい名前のとおりの台湾を代表するビール。クラシックでありながらどことなくポップなデザインの缶はコンビニでも存在感抜群です。南国台湾にぴったりの清涼感と麦のコクがしっかりと感じられる味わいで、やっぱり台湾に来たからにはコレじゃなきゃ、と思わずうなってしまう不思議なビールです。近さの割りに不思議と日本には輸入されていないんですよね。やっぱり台湾で飲んではじめて美味い、ということでしょうか。
 通常版(左)と金牌(右)がありますが。値段は一緒なのでそのときの気分で選んでOK。台北市内のブリュワリーに隣接しているバーではドラフトも飲めます。

バー・ビール(Bar BEER)
 写真を見れば一目瞭然。缶の下にはおなじみの「KIRIN」の文字とマーク。日本のキリンが台湾限定で販売しているビールです。海外でしか飲めない日本のメーカーのビールはこのページでもはじめてですね。もちろんコンビに行けば一番絞りやラガーも手に入りますが、せっかく台湾に来たからには試してみない手はありません。苦味とコクが売りのキリンビールにあってこれは南国らしい清涼感重視の味わいです。ということは夜市を回りながら水感覚でゴクゴクいけるビールということですね。一口餃子や胡椒餅など肉系の屋台飯とぜひ一緒に。あ、臭豆腐やオイスターオムレツとも言うまでもなく相性抜群ですよ。

↑まるで泡があふれているかのような缶のデザイン。発泡酒とか第3のビールとかいいから、日本でも販売しないかなぁ。

OB
韓国のビールは基本的にラガー一辺倒。韓国のビール会社は日本統治時代に日本資本によって設立されているのでビールのスタイルは日本が影響を受けたドイツのビールがベースになっています。その中で最も由緒あるブランドなのがこのOB。元は麒麟麦酒の出資で作られた東洋麦酒”Oriental Brewery”に起源があるのだそうです。かつては大株主の斗山が所有するプロ野球チームの冠ブランドににもなっていましたが(OBベアーズ。現在は斗山ベアーズ)、現在は世界最大のビール会社アンハイザーブッシュ・インペブの傘下企業なのだそうです。
 味はドイツスタイルの本格的なラガーで苦味が利いているのが特徴。屋台ではあまり見ることはなく、レストランやコンビニで遭遇することのほうが多いです。一方で韓国の大衆ビアホール「ホプ」ではこのOBが人気のようで、ドラフトで飲めます。しかも瓶ビール(たいてい中瓶位のサイズ)の相場が3000〜4000ウォンのソウルで、ホプの生ビールは中ジョッキ相当(=中瓶と同程度)のサイズで2500ウォンと安さが魅力。しかも道路にまで席を広げているホプも多く、こういうところならば樽の回転が早く常に新鮮な生ビールが飲めます。

↑オーストラリアの「VB」とともに、アルファベット2文字で通じる手軽さがこのビールの最大の強みですな。
カス(CASS)
 OBのもうひとつのメジャーブランド。ゴールドのデザインでクラシックなOBに対してこのカスはシルバーを基調としたとんがったデザインをしています。このデザインのおかげで、ほかのビールより「よく冷えている」ように見えてしまい、コンビニでビール選ぶときにもついつい手がこれに伸びてしまいます。
 味もイメージどおりのドライテイストが特徴で、ポジャンマチャ(路上飲み屋)のようなほぼ野外だったり、市場内の簡易食堂のようなエアコンの期待できない場所に実にマッチします。そう、このビールは屋台御用達のビールなのです。今まで入ったことのあるポジャンマチャ、簡易食堂ではほぼこのビールが出てきました。複数人でちゃんとした飯屋に行くことのない一人旅ではこのカスに遭遇する確率の方が高いですね。

↑市場のビールの定番は”cass”。ポスターも寒色系でスッキリ、さわやかが強調されています。


世界のビールを飲みつくす [オーストラリア編] [UK&アイルランド編] [ヨーロッパ編]


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