世界中で食べてきたものたち
〜世界の片隅で肉を喰らう〜

 健全な青年男子として外国で食べたいものといえば巨大な肉の塊。オージービーフの国、オーストラリアから海外経験がスタートしたこともあってすっかりその魅力に取り憑かれています。日本ではなかなかまねできない豪快な肉料理ばかりです。


ステーキ

 肉料理の代表格で、生カキと並んでオーストラリアに来たときの楽しみがなんといってもステーキ。日本で食べるのとは比べ物にならないほどの桁違いのボリュームと安さで一日最低一回は食べてしまいます。内容はどこに行っても

「バカみたいに大きな肉+暴力的な量のイモ+おそらくレタス一個分はあるだろうサラダ」

でソースが赤ワインソース、ペッパーソース、マッシュルームソースの中から大抵選ぶことができます。パブ飯のステーキは基本的にモモ肉、尻肉といった脂の少ない部位なので脂身の多い肉が苦手な身にはうれしいところです。



↑このステーキを必死に食い進んでいくのが実に爽快なんですね〜


タルタルステーキ
 うまく説明しづらいのでまず写真から。

 まあ両脇のイモとサラダはいつものことなので説明不要でしょう。あ、でもイモがUKの「チップス」ではなくオシャレに「フレンチフライ」なので少し細身です。重要なのは真ん中。ええ、生肉です。ひき肉ではなく細かく切り刻んで四角く成型したものです。その真ん中には卵黄。肉の周りには薬味として刻んだ玉ねぎ、ピクルス、ケーパーが添えられています。これを少しずつお好みで混ぜるか、豪快に全部一気に混ぜ合わせるかして食べて行きます。洋風のユッケともいえますね。
 ヨーロッパでは珍しい生肉料理なので、これを食べたときにギャルソンのオッサンから「これは生肉だけど本当にいいのか?」と2〜3回確認されました。その前に生カキ1ダース食べたせいかもしれませんが・・・

 ちなみに生肉に抵抗のある人向けに表面を軽く焼いたタルタルステーキもあります。東京の某レストランで食べてみましたが、ちょっとした「牛のたたき」感覚で生とはまた違った感じのおいしさでした。

 誰ですか?今「生焼けハンバーグ」とかいった人!


実は個人的には羊も大好きだったりします。シドニーで暮らしていたときはよく1パック$2くらいのラム・ロインをスーパーで買っては焼いて食べていたくらいですから。というわけで日本を出るととにかく羊肉もよく食べます。オーストラリアやヨーロッパ
はもちろん、中華料理でも、東南アジアでも、イスラム社会でも羊肉は重要な食材なのでどこに行ってもありつけるわけです。


ローストラム
 イギリス料理の代表格。ラムチョップを塊で焼いて切り分けたものですが、意外にも食べたのは香港で。いい感じにピンク色の肉が魅力的です。ローストラムにつきものといえばミントソース。鮮やかな緑色のそれはラムのクセのある匂いと脂っこさを見事に消してくれて食欲を増進してくれます。
←この鮮やかさ、UKではまず見られないでしょう。さすがは香港。


グリル
 塊とはいかないまでもカットしたものを直火で焼いたものならばパブの定番としてよく見ることができます。単純なステーキに比べると工夫を凝らしたものが多く、店ごとに楽しむことができます。

↑クスクスだったり温野菜だったり、付けあわせがイモ一辺倒でないのがラム料理のいいところ。(左はブリスベンで、右はヨークで)


(左)たまにはこんな感じでファーストフード感覚で食べるラムチョップもいいかと。(ロンドンで)
(右)インゲン多すぎ!こんなフランス料理も、もちろんアリです。(パリで)


ラムシチュー
 ジャガイモ、たまねぎと一緒に煮込んだもの。羊肉の臭みをとるためにローズマリーが入っています。アイルランドではアイリッシュシチューと言いローズマリーの代わりにパセリが入ってきます。作るのも簡単で羊肉さえ手に入ればあとは野菜と一緒に煮るだけ。スープストックを取る必要もありません。作るのも非常に楽です。


↑フレッシュのローズマリーで香りさわやか。
手前にあるのはビーツ。(ランカスターで)
ドネルケバブ
 羊肉はイスラム社会でも重要なのでアジアでも頻繁に食べることができます。その中でヨーロッパやオーストラリアでも人気なのがケバブ。ファーストフード感覚なのが受けるのでしょう。細かく削ぎ切りにするのですがその量は一皿で満足いくほど。それに加えて安いのが魅力です。最近は日本でも見られるようになりましたね。


↑この下のパンのようなものだけでも相当腹が膨れますが、
恐れしいことにこれにイモがセットでついてきました(マンチェスターで)

サテ
 マレー料理の代表格。串に刺して焼いたものにはとにかく惹き付けられますが、その中でも一番好きなのがラム。サテには羊のほかに鶏と牛がありますが、鶏はあっさり目だし、牛は固く筋っぽくなってしまうのです。甘辛のソースとも相性がよく10本くらいは余裕でいけてしまいます。

↑サテにはなんといってもビール。イスラム国家マレーシアでムスリムじゃなくて良かったと思える瞬間です。


マトンカレー
 アジア系のメニューをもうひとつ。インド、タイ、マレー系の店で大人気なのがカレー。マトンカレーはその中でもあまり辛くなくスパイスが効いているから臭みも気にならないので気軽に楽しめるのです。経験上ビーフカレーはその店で一番辛いことが多かったので・・・こういったところではご飯ももちろん細長いインディカ米。日本のカレーライスとはまた違ったカレーが楽しめます。

←ビリヤニにかけられたマトンカレー。ついつい酒が欲しくなる味です。

カンガルー
 国のエンブレムにも描かれるほどオーストラリアを代表する動物なのですが、国内ではいわゆる「害獣」扱いされているのがカンガルー。少し田舎に出ると本当に野生のカンガルーをよく見る。そしてそんなに多くいるのならば、というわけなのだろうか、スーパーに行けばカンガルーの肉が当たり前のように売っている。それもそれほど高くない(オーストラリアでは豚>鶏>牛>羊の順で高いがカンガルーは牛と羊の間くらい)ので、シドニーで貧乏暮らしをしていた時には大変重宝したものです。
 臭みが少しあるので、ニンニクや生姜で少し香りづけしてからレアで焼くと実にうまい。その一方であまり火を通しすぎると筋っぽく固くなるので煮込み料理などにはお勧めできません。
ケアンズのレストランで食べたカンガルーにはブルーベリーソースがかかっていた。これもまた臭みを目立たせない絶品のソースでした。

↑ようやく撮れたカンガルー肉。キヌアとスイートチリソースの組み合わせ。ジビエの一種だからかやっぱり甘いソースが合うようで。


カエル
 フランス料理と中華料理はわりと当たり前のようにカエルを使うので日本でも食べたことはありますが、アジアへ行くとさらに日常的にカエルがメニューに並んでいます。そのまま「蛙」と書くと日本人ならずとも引いてしまうからか「田鶏」、「田雉」という風に「田んぼの鶏肉」という言い回しをします。蛙の足がいっぱい入った土鍋粥が東南アジアで大人気で、これならいきなりでも抵抗なく食べられる(はず)です。
 ベトナムでは屋台の軒先に帰るが連なって吊るされていました。注文したら「皮は剥ぐか?」と言われました。ということはベトナムでは皮も剥がずにそのまま調理をするということなのか?さすがにほぼ皮付きで丸焼きのカエルを食べる勇気はなかったので剥いでもらいました。
←オバチャンの視線の先にあるのが吊るされたカエル。

↑フランス料理のカエルはこんな感じ。小骨が多いのがちょいと難点。


ウサギ
 フランス料理には”ジビエ”という狩猟で得た動物を使った料理がありますが、ウサギはその中のメジャーなもののひとつ。メニューではフランス語の「ラパン(Lipin)」と書かれています。これが名物になっていたのがベルギー、ブリュッセル。何しろ市内のカフェ、ブラッスリーのほとんどで看板メニューがムール貝とラパンでした。フランスでは赤ワイン煮で出されることが多いのですが、ワインのないベルギーではビール煮。それにチェリーとフランボワーズの甘酸っぱいソースがかかってきました。


 うちは家から歩いて数分もしないところに桜鍋(馬肉の鍋のこと)の店があるので、小さいときから「馬は普通に食べるもの」と思っていたのですが、大人になってみたら実際はだいぶ違いましたねぇ。草食ゆえ癖がない肉なので食べたらうまいのですが、移動手段として、農耕の担い手として、エンターテインメントの主役として活躍の場が多い馬を食べるなんてとんでもない!のが世界の常識、かと思っていたら、ブリュッセルで見つけてしまいました。馬肉のステーキです。聞くとフランス語圏は馬肉食の習慣があって、特にベルギーではそれが顕著だということ。「牛」のところで出てきた”タルタルステーキ”も元は馬肉を使ったものなのだそうで。メニューには書かれていないだけで結構な馬肉料理がベルギーにはあったのかもしれませんね。



 フランス料理でもジビエの一種としてメジャーなのが平和の象徴、鳩。よく覚えてはいないのですが、おそらく日本でフレンチレストランで食べた気がします。旅行先で食べたのは香港で。食べ方はシンプルにローストしたもの。同じジビエの鳥系でウズラはよく食べますがそれよりも食べる部分が多くお得感はありますね。野味あふれる味わいで歯ごたえも充分。モモ、ムネ、手羽先まできれいに食べつくせます。写真のように頭も付いてきましたがこれも骨ごとしゃぶってしまいました。余すことなく食べられるってとてもすばらしいですね。

↑一羽丸まる食べつくせます。頭も見事にディスプレイされています。モロねぇ。(香港)


 アジア編に書いてありますので^こちらからどうぞ


ヤギ
 サイゴン名物は色々あれど、その中でもローカル色が強いのがヤギ肉。ベンタイン市場から徒歩で10分ほどのところにヤギ肉屋が並んでいる一角があり、夜となると大勢の人でにぎわっています。食べ方は鍋と焼肉が人気がありますが、今回は焼肉をチョイス。鍋もうまそうですが一人だと食べきれないときついし、何より寂しいですから。
 肉は肩肉(De Noung)と乳肉(Vu Noung)の2種類。大中小とサイズがあって、健全な日本人青年男性一人(サンプル:自分)なら小で2種類頼んでも普通に食べられる量でした。一種類なら中を頼んでもきちんと食べ切れます。いや、むしろ足りないかも。この一皿に口直しというわけでしょうか、サラダがついてきます。一緒に盛られているオクラが焼くとこれまたうまいのです。

(左)こちらが乳肉。見た目からモツ好きの心を掴んで離しません。もちろん食べたら虜になること間違いなし。
(右)こちらは肩肉。薄切りではありますが、それがさっと焼いて食べられる証。こちらも腐乳をつけて召し上がれ。


 肝心の肉の感想ですが、まずは肩肉の方から。ヤギ肉というと「臭い」という印象が強いはずなのに、これはまったく臭みが無し。しっかり焼くのもいいですが、少し半焼きくらいで食べるのがおいしいと思います。肉質は硬くなく、その一方で皮の部分は歯ごたえがしっかりとしていて一枚の肉で何度ものおいしさをかみ締めることが出来るのです。
 一方の乳肉はというと、これはもうモツ好きなら間違いなく気に入る逸品。味は淡白ですが、コリコリした食感がとにかく病み付きになります。タレとして腐乳がついてきますが、これをつけなくても噛み応えと塩味だけでいけるし、つけたらつけたで濃厚な味がついてきてさらにおいしい。つまるところ何をしてもおいしい、というわけです。このうまい肉を自分のペースで、自分の好きな焼き加減で、好きな量を食べることの出来るヤギ肉屋はまさに肉好きにとっては天国と言っていいところなのです。

↑一人しみじみマイペースで肉を焼く。周りは大勢のグループばかりですが、一人焼肉ももちろんOK。

ガチョウ
 香港の庶民の味のひとつがロースト。ただ肉を炙るシンプルさとは裏腹に奥の深い料理で、その中でもガチョウのローストは香港のアイコンといっていいくらい代表的な食べ物です。ロースト自体はいままでも大牌當などで見つけて食べてきましたが、3度目の訪問でロースト専門店のローストポークを食べたら実にうまかったので万を持してガチョウに挑んだわけです。しかもいきなりミシュラン一つ星に輝く中環の「一楽焼鵞」でご対面となれば期待は膨らむというもの。
 テッカテカに輝くガチョウをまずはそのまま一口。皮はパリパリで肉もうまみたっぷり、でも脂が苦手な自分にとっては少し脂がきつい。しかし、これを一緒にご飯をかきこむと、あら不思議、この脂のおかげでご飯が何杯でもいけてしまえるのです。麺と一緒に食べてもスープに浸すと肉から余分な脂が落ちて食べやすくなり、麺には脂が絡みコクが出るという抜群の相性です。一気呵成に平らげて思ったことは、「ガチョウのローストは酒のつまみではなく飯のおかず」ということでした。酒のつまみにはローストポークのほうが断然いいですよ。

↑1/4身のガチョウのロースト。足の部分は肉付きがよく、腰の部分は皮がパリパリ。どこをとってもうまいのです。

↑酒のつまみにはローストポーク。脂身は苦手ですがこれだけはなぜかいけるのですよ。

その他
 ほかに食べたことのある肉といったらワニ、エミュー、水牛といったところ。ちなみに食べたのはオーストラリアのケアンズ。ここでは観光地らしくこの手の珍しい肉が食べられる店が多く、お土産屋でもワニやカンガルーなどの干し肉が売っていました。



これからも旅先で食べたまだ見ぬ肉に出会ったら随時アップしていきますのでお楽しみに!

世界中で食べてきたものたち
 
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